始まりと告白
時の流れは早いもので、俺たちは高校生となった。
私立駒王学園、それが俺たちの通う学校。朱乃ちゃんは3年、イッセーと俺は2年生だ。なぜ俺が2年なのかと言うと、中学を卒業した後一年ほど世界をまわり、実質留年という形になったのだ。別に後悔とかはない。いい拾い物もしたし。
話はそれたがこの学校、数年前までは女子高だったらしく、女子生徒に対し男子生徒が圧倒的に少ない。ゆえに、男子の中にはハーレムを狙うバカが一人や二人出てくる。ちょうどここに二人………
「「死ねぇイッセー、竜也ぁぁぁぁ!!!!」」
「うるさい」バギッ!!
「ショポッ!!!?」「ハペェ!!」
殴りかかってきたバカ二人、元浜と松田にダブルラリアットをかます。
「何度も何度も懲りないな、お前ら。」
イッセーがかがんで二人を覗き込む。ちなみにイッセーは変態ではない。長らく修行を続けてきた影響で、性欲は持ち合わせているがあくまで年相応だ。元は悪くないのでそれなりに人気はある。
「うるせーー!!!お前らに俺たちの気持ちがわかってたまるかぁ!!!!」
「自分に正直なだけで女子たちからゴミを見るような目で見られる我々の気持ちが!!!」
「いやいやお前らはオープンすぎるんだよ。」
「まずは自分の身の振り方から変えろ、ちったぁ欲望を抑えろ。」
「「それは無理だ!!!!」」
「じゃあもう無理だ諦めろ。」
そしてまた襲い掛かってきた二人にバックブリッカーからのバックドロップのコンボを決め屋上から吊し上げた。そして放課後の帰り道……
「あっあの!!!兵藤一誠君ですか!?」
イッセーと同年代ぐらいの黒髪の女の子、第一印象はそんな感じだった。
「…まあそうですけど、何か?」
「本当!!!?よかったぁ……あの…好きです!!わっ私と付き合ってください!!!」
突然の告白に戸惑った顔をしたイッセーがこちらを見る。俺は無言でうなずく。
「えっと、その、俺なんかで良ければ…」
「本当!!!?やったぁ!!!!よろしくお願いします!!!」
その後、二人は連絡先を交換しあい今日のところはわかれた。
「……なあアニキ、あの子の気配…」
「ああ、堕天使のものだ。」
堕天使のハーフである朱乃ちゃんやその父であるバラキエルさんと長年関わり、修練の門でシックスセンスを磨いたイッセーは堕天使や悪魔、人外の気配を感じ取れるようになった。ちなみに俺のことは現在アニキと呼んでいる。
「まあ、詳しいことは俺の家で話そう。朱乃ちゃんも呼ぶ。」
「ああ、わかった。」
そしてその後、俺の部屋にイッセー、朱乃ちゃん、黒歌、そしてモニター越しだがヴァーリの姿があった。このモニターは連絡しやすいように俺の部屋に取り付けたものだ。
「なるほど、そんなことが……」
「ああ、十中八九イッセーの神器が狙いだろう。」
『調べてみたが、堕天使を駒王町に派遣したなんて記録はなかった。おそらくそいつの独断だろう。』
「しかし、この町の領主とやらは何やってるにゃ?ただでさえはぐれ悪魔の取りこぼしを私たちが片付けてやってるのににゃあ。」
黒歌が呆れた顔で言う。事実、俺たちはこの町で多くのはぐれ悪魔を取り押さえた。
「まあまあ、彼女もそれなりに頑張っているようですから」
朱乃ちゃんがそれとなくフォローを入れる。原作と違い、朱璃さんは俺とヴァーリが助けたので、彼女はこの町の一応領主、リアス・グレモリーの眷属ではないが、学園での友人関係にはあるようだ。
「まあ、やっこさんらは大公からの依頼がなけりゃ動けないようだし、っと話がそれたが…イッセーお前はとりあえずその…夕麻だったか?その子と一週間ほど付き合ってみろ。」
「「「『ええ!!!?』」」」
「心配するな、俺たちで全力でフォローする。というわけで、イッセー以外集合!」
俺たちはヴァーリのモニターの前に集合する。
『……で?今度は一体何を企んでるんだ?』
「まあ聞け、俺の考えた作成、それはーーー
この一週間でそいつをイッセーに本気で惚れさせる!!!!」
「「『はい?』」」
「いいか?さっきヴァーリが言ったようにこいつはおそらくそいつの独断。成功したとしても恐らくグレゴリで裁かれるだろう。……て言うか裁かれなけりゃアザゼルシバく。まあそんなこと絶対にあり得ないが…っとまた話がそれたが、せっかくのイッセーに彼女ができる機会だ。本当に惚れてるならそれでよし。殺す気なら俺たちでイッセーをアピールしまくって本気で惚れさせてその気を無くさせる。」
『……いつもいつも何でそう斜め上の発想なんだよ……はぁ、わかった、俺も協力するよ。』
「あらあら、私も協力しますわ、せっかくのイッセー君のチャンスですもの♪」
「ニャはは、いっちょやるかニャ♪」
「よし!第して、イッセー死守&ハートゲット作戦開始!!」
「「『了解!!!』」」
「……何が?」
こうして俺たちの作戦は開始した。二人が道を歩いていれば荷物を持った老婆に変身した黒歌をみたイッセーが荷物を運んであげ、
たこ焼き屋に扮した俺が長年の研究で堕天使の好む味付けにしたたこ焼きの匂いに当てられ、案の定彼女は屋台に引き寄せられそこをイッセーがおごり、
ヴァーリが監視に放った使い魔のカラスが彼女の頭上に糞を落とし、それをイッセーが察知し助け、
朱乃ちゃんが雷魔法の応用で雲を雷雲に変え雨を降らし、イッセーに事前に持たせた傘で相合い傘、などとにかくイッセーの良いところをアピールしまくった。
そして日曜日、原作でイッセーが殺された運命の日。俺たちはまた全力でフォローに当たった。
イッセーには常に彼女の手を引いてリードさせ、
ショッピングモールの服売り場で朱乃ちゃんのコーディネートの元服を選んで買ってあげ、
またもや俺の扮したたこ焼き屋でたこ焼きをおごり、
黒歌の放った猫と戯れさせ、
そんなこんなで夕方、イッセーと夕麻と名乗った恐らく堕天使の彼女は、なぜか人の一人もいない公園の噴水に座っていた。
「イッセー君、今日はありがとう、とっても楽しかったよ。」
「うん、俺も楽しかった。」
「………ねえ、イッセー君。私のお願い……聞いてくれる?」
「……うん、いいよ。」
ボソッ 「そろそろだ、準備しておけみんな。」
ボソッ「「了解!」」
俺たちは気配を消し公園の茂みに隠れていた。ちなみにオーフィスとべーやんは家で待機だ。
…………動くとすれば今…
「……私と……私とキスして!!!!」
「……へ?」
思わずずっこけそうになった。見ると二人もそのようだ。……これは成功……でいいのか?
イッセーsaid
てっきりここで仕掛けてくると思ったけど、取り越し苦労だったのか?見ると、夕麻ちゃんは頬を赤く染めこちらを見ている。
『やれイッセー。男を見せろ!』
耳に着けたインカムからアニキの声がする。俺は意を決し彼女の唇にそっと自分の唇を重ねた。そっと目を開けると彼女の瞳から一筋の涙が流れた。ーーーー夕麻ちゃん、君は本当に……
刹那、後ろから向かってきた光の槍を神器を展開し粉砕した。
「……ほう、どうやらすでに神器には目覚めているようだな。」
そこにはスーツを着てハットを被った男が黒い翼を羽ばたかせ空を飛んでいた。
「ドーナシーク、なんで……」
「なに、どうせここで殺す計画にはかわりないでしょう?」
「……おいお前!どういうつもりだ?俺があのまま何もしなかったら俺ごと夕麻ちゃんも貫いていたぞ!!!」
「はて、何のことかな?ふむ、見たことのない形状だが
『相棒、あいつぶっ殺していいか?』
「(我慢してくれ)そうか?何なら試して見るか?」
俺は『赤龍帝の太陽手』から炎を吹き出す。
「ほう、魔法まで使えるのか?ならばここで始末……」
「できると思ったか堕天使?」
「なっガァ!!!?」
するといつの間にか現れたアニキが如意棒でドーナシークと呼ばれた堕天使を叩き落とした。
「グリフィンランス……悪いけどこいつは俺のつれでね、殺らせるわけにはいかないのよ。今日のところは見逃してやる。とっとと消えろ。」
アニキは今度はウェポンARMグリフィンランスを展開して堕天使に突き付ける。
「ぐふぅ……き、貴様は…」
「聞こえなかったか?消えろ!」
「くっ!覚えていろ!!!!」
ドーナシークとかいう堕天使は転送魔法陣で消える。
「お前も今日のところは帰りな。」
アニキは夕麻ちゃんにグリフィンランスを向けて言う。
「え、えっと」
「夕麻ちゃん」
「え?」
「また会おう。」
俺は夕麻ちゃんに笑いかける。
「/////うん!またね、イッセー君。」
そして夕麻ちゃんもまた消えて行った。
「さてと……人のピンチをただ傍観とは感心しませんねぇお嬢さん?」
「……その割りには余裕ね。」
するとそこに朱乃ちゃんと学園の二大お嬢様と言われているリアス・グレモリー先輩が現れた。
「単刀直入に聞くわ……あなたは何者?」
「それについてはまた後程……今日は帰らせてもらう。」
「!?待ちなさい!!!」
先輩の制止を聞かずにアニキは俺を連れて転移魔法で消えた。