あれから俺たちは更なる修行に明け暮れた。ある時は断崖絶壁の頂上での精神統一。ある時は超巨大ガーディアンに全員で立ち向かい、またある時はだんだん足場が消えていく地獄のタイムアタックなど。
みんなこれまでの修行でかなりの力をつけた。中でも最も成長したのはイッセーだ。神器を展開した状態で複数のARMを使えるだけではなく、直感的に相手の弱点を瞬時に突き、複数の攻撃を見切るなど、アランの言った通りシックスセンスにおいては一番の精度だ。他のみんなも最初にくらべれば、見違えるような強さになった。そしてついに……
「よし!お前ら今までよく頑張った!修練の門での180日間の修行、今をもって終了だ。」
「よっしゃ終わったあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なかなか濃厚な修行の日々だったな。」
「あまり実感湧かないけど…」
「あらあら、終わって見れば呆気ないものですわね。」
「私はもうこりごりにゃん…」
「ハハハ、本当によく頑張ったなお前ら。最初のころに比べれば段違いだ。そんなお前らにご褒美だ。この修練の門で手にしたARMを5つまでもって行ってもいいぞ。」
「うおぉぉ!!!?マジかよオッサン!!!やったぜ!!!」
イッセーだけでなくみんなも嬉しそうだ。やはり約半年も使ってきたものは愛着がわくのだろう。かと言う俺も内心喜んでいる。そして俺たちは持って行くARMを選ぶ。
「よし、全員選んだな。あと、朱乃と黒歌にはこいつだ。」
そう言ってアランは二人にそれぞれARMを手渡す。
「これは?」
「遅くなったがARM集め勝負のボーナスだ。それぞれ強力なガーディアンARMだが、使えばかなりの魔力を消費する。いざという時の切り札にしておきな。」
二人がARMを受けとると俺たちは光に包まれる。そして、再び目を開けるとそこは俺の家のリビングだった。
「朱乃ぉぉぉぉぉぉ!!!!!よく無事に帰って来てくれたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
すると帰って早々、朱乃ちゃんはバラキエルさんに抱きしめられた。
「お、お父様苦しい……ってどうしたんですかお父様!?何だかとてもやつれていますよ!!!?」
見ると、バラキエルさんは目にくまができ頬も若干こけている。まあ3日間不眠不休で魔力を送り続ければ当然か。
「みんなお帰りなさい」
「すごいじゃないか。3日前に比べて魔力の質も量も段違いだ!」
「あらあら、みんな頼もしくなって…」
「ただいま、父さんと母さん。」
「ただいま、」
「ただいま帰りました、お父様、お母様。」
「ただいまです。おじさん、おばさん。」
みんな無事に帰ってこれたことを喜んでいた。そんな中、黒歌は俺の後ろに申し訳なさそうにたたずんでいた。
「あら、竜也ちゃんその子は?」
母さんが黒歌に気がつき俺に尋ねる。
「そっその子はSS級はぐれ悪魔の黒歌じゃないか!?何でこんなところに!!!?」
バラキエルさんが声を荒げて言う。黒歌はさらに縮こまり、俺は黒歌の頭を優しく撫でる。すると黒歌は意を決したのか、前に出る。
「お母さん、お父さん、バラキエルさんもこれから私が言うことを聞いてほしいにゃん。」
黒歌は自身のことを話した。どうしてはぐれになったのか、なぜ我が家にとどまったのか。包み隠さずすべて話した。
「…まさかそんな事情が…」
バラキエルさんは驚愕していた。そして、もういないとはいえ、黒歌たちをおとしめた悪魔に嫌悪しているようだった。すると、黒歌は父さんと母さんの前に出て
「お父さん、お母さん、今まで騙してごめんなさい。こんな私だけど、これからもここにおいてくれませんか?」
…と頭を下げた。すると二人は黒歌を抱きしめ、
「黒歌、お前がただの猫じゃないことは知っていた。今さら何を遠慮する必要がある?お前はもう家の家族なんだから。」
「そうよ黒歌ちゃん、今まで本当に辛かったわね。でももう大丈夫よ。あなたはここにいてもいいの。」
「……ッ!?…お母さん、お父さん……」
うんうん、さすがは俺の両親だ。俺は黒歌の頭に手を置き、
「な?言っただろう?」
と笑いかけた
「…ッ!?うん!!」
黒歌も涙を流しながら笑った。
それから俺の両親の動きは早かった。黒歌をおとしめた悪魔を徹底的に調べ上げ、黒歌のはぐれとなった証拠とも言える数々の悪事の証拠を悪魔の上層部に叩きつけ、黒歌のはぐれ指定を解除させたのだ。まさか魔王直々に謝罪に来るとは思っても見なかったが…その際魔法少女の格好をした魔王様にえらく気に入られてしまった。その後、黒歌の雷門家としての戸籍を瞬く間に作り上げ、黒歌は正式な我が家の一員となった。そして、同居人といえばもう1つ……
「「「「「なんであんたがいるんだよ(ですか)(だにゃ)!!!!!!!」」」」」
そう、なんか知らんが修練の門の中にいたアランもこっちに来ているのだ。
「いや何、俺もこちらの世界に興味が湧いてな、しばらくいさせてもらうぜ?」
と、白飯を掻き込みながらアランは言う。…せめてなんか働けやマダオ!!!
と、まあ色々あったが俺たちの日常はこうして再び過ぎていくのだった。