竜也(分身)side
「それでは、第三戦を開始します!!」
最終決戦・第三戦
◆チェスの兵隊【ナイト】▼キメラ▼
◇龍の紡ぐ絆【総司令官】▽雷門竜也▽
さて、久しぶりに俺の戦闘描写だ(分身だけど)。ここは張り切るとしようかねぇ
「タツやん大丈夫なんか?あのタツやん分身なんやろ?」
「アレは竜也のやつが一晩かけて練り上げた魔力を込めて造られた特別製だ。ちょっとやそっとじゃ消えやしねぇ。」
ちなみに、本体に魂と直接結びついてる神器こそ使えないが、元々身体に備わった発電能力や妖術、もちろんARMも使えるぜ?
「だが、それでもダメージを食らい過ぎたり、魔力を使い切ればただの髪の毛に戻っちまう。そう時間はかけられねぇ……問題は向こうだ」
アランは葉巻を付ふかしながら対戦相手のキメラを睨む。6年前のウォーゲームにキメラなどという者はいなかった。つまりこの6年以内にナイトにまで登り詰めたことになる。
「試合 開始ぃ!!!」
先に仕掛けたのはキメラ。魚とも悪魔とも付かない異形の魔獣どもを召喚し一斉に向かってくる。まぁ…
「かんけーないがな!!“並列エレキパンチ”!!!」
拳を突き出しその軌道へ向けて放電する。放たれた電撃は一直線に進み異形どもを纏めて消し炭にし、そのままキメラへと向かう。並大抵の奴らはこれで終了なんだが……
「おろ?」
今回はそうはならなかった。キメラは地面を叩き付け、その衝撃波で電流を分散させた。本体に比べて程度は落ちるとはいえ、それでも一瞬対応が遅れれば同じ運命を辿ったものを……
そんな事を考えている間に、キメラは俺の目前まで一瞬で踏み込んで来た。長い袖から異形の口へと歪んだ右腕が姿を現し、俺に向けられる…
「伸びろ棒」
ボカッ!!
「ッ?!」
『『『ええぇ!?!!』』』
「「「出た、不意討ち」」」
前に如意棒をやつの顔面にぶっ込んだ。いやー、久しぶりにキレイに決まったわ。
と、その衝撃でやつの仮面が吹き飛び、その素顔が明らかになる。
「ッ!?……お前」
「……この程度かい?ライモン・タツヤ」
仮面が外れたことで露になったその顔と声は、女のものたった。しかし、その顔の右半分は痛々しく焼け爛れ、それを覆い隠すように大小様々な無数の目玉が突き出していた。
「ふふふふふふ…あーーーはははははははははッッツ!!!ドラゴントライブの司令官ってのも大したことないねぇ!あの老人と同じだ!」
キメラは狂った笑い声を響かせ、再び異形と化した右腕をこちらに向ける。
「”ゴーストARM”を知ってるかい?」
「知ってるとも。自身の体を媒体に発動し、その性質上術者の体に多くの負担を掛け汚染する。ゆえに、禁断のARM。お前さん、どうやらその使い手らしいな。」
「ああそうとも!『ハウリングデモン』!!!」
異形の口から衝撃波が放たれる。わざわざ喰らってやる必要はないが、後ろには民衆がいる。彼らに防ぐすべはない。
「やれやれ、っと!」
俺は如意棒を振るい、放たれた衝撃波を打ち砕き、四散させる。その突風に呷られ、奴の異形と化した腕が露わとなった。
「なんだあの腕!?」
「キモチ悪い!!」
「人間じゃない……」
思わず漏れた民衆達の言葉に、キメラの顔は狂気を増す。
「…そうさ、私は人間であることを捨てたのさ。あの日から」
そうしてキメラは語りだした。自身の過去を
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
とある教会で新郎と新婦が婚礼の儀を挙げようとしていた。新郎の名はマルコ。彼はかつてチェスの兵隊に身をおいていた。新婦の彼女はそれを知っていが、それでも彼のことを愛していた。
幸せの絶頂だった。だが、それは唐突に崩れ去る
突如教会に男達が大挙として現れた。
『チェスの残党がいたぞ!!』
『つかまえろ!!』
彼らはチェスの残党狩りだった。二人は組み伏せられマルコは拘束される。
『やめて!!マルコを連れて行かないで!!戦争はもう終わったじゃない!!』
『終わっているものか。チェスは皆殺しだ』
必ずもどってくる、彼はそう言った。
彼女は待ち続けた。毎日教会で祈り続けた。彼がもどってくるのを信じて
数日後、彼女の前にマルコを連れて行った者達がもどって来た。
『マルコは?マルコはどこ!?私のマルコ!!』
『
男達の一人が、彼女の目の前にナニカを投げ捨てる。
ソレは、指輪のはまった血塗れの薬指だった。
『いや…いやああああああああああああああああああああ!!!!!!』
それが何を意味するか、彼女はすぐに理解した。理解してしまった。彼女はソレを抱きかかえ泣き叫んだ。
『ヤツはチェスの残党のことを何もしゃべらなかった。次はお前を連れていく』
それから彼女は、毎日地獄のような拷問で嬲られ続けた
数ヶ月後、彼女は隙をついて男達から逃げ出した。しかし、拷問の末、彼女の体はもはや女とは言えない凄惨な状態だった。
幸せの絶頂から絶望の底へ落とされた彼女は、全てを憎んだ。最愛の人を奪った者達に、この世界に復讐することだけを考え生きてきた。
程なくして、彼女はチェスの参謀ペタと出会い、彼に見込まれゴーストARMを受け取った。
それから彼女は修練の門に身を投じ、自身の体を何年も掛けて戦闘用に改造していった。この世の全てへの憎悪を募らせて
自分の名を棄てた
女であることを棄てた
ヒトであることを棄てた
そして彼女は
◆◆◆◆◆◆◆
「そして私はゾディアックに登り詰めたのさ」
キメラはそう言って舌に着けたナイトのピアスを見せる。彼女の話に辺りは騒然とする。
「そんな…そんな事って…!!」
「……なんか、かわいそうっスね」
「一部の連中だろう。チェスへの憎しみから魔女狩り的なことをしていたのは聞いてる。あいつもまた、戦争の被害者だ」
「同情はいらないんだよ、クロスガード!」
「しねぇよ。お前の愛する者を奪われた苦しみも、憎しみも、俺には到底想像出来ない。もし同じ事が俺にも起きたなら、俺も間違いなく狂うだろうよ。……でもな、」
俺は奴が話している間に練り上げた魔力を纏い、如意棒を構える。
「だからこそ、お前が俺の大切なモノに絶望を振り掛けるなら、俺はお前を全力で排除する。お前がどんな過去を背負っていようが関係ない。俺ぁ不毛な憎しみの連鎖に組み込まれるのは御免なんだ」
「上等さ!あんたのその大切なモノとやらも、醜くしてコレクションの一つにしてやるよ。かのギドとかいうポーン兵のようにね」
ギドの名が出た瞬間、俺の前にイアンが遮るように現れる
「おい、」
「下がれ魔源。ようやくはっきりしたぜ。キメラ……殺してやる!」
ゴンッ!!
会場に鈍い音が響く。俺が如意棒でイアンの頭をひっぱたいたのだ。
「下がるのはてめぇだ。ありゃ今は俺の獲物だ。筋の通らねえ真似すんじゃねぇ。この戦いが終わったら、後はお前の好きにすればいい」
「………わかったよ」
イアンは渋々頷くと、リングの外へ出て行った。
「さあさあ大丈夫ですね!?第三戦再開します!!」
「『オーガハンド』!!!」
再開早々、異形に歪んだ巨大な腕がこちらに向かってくる。俺は自分の髪の毛を数本引き抜き息を吹き掛ける。
「妖術、“分身の術”!!!」
別名、”身外身の術“。舞い散った髪の毛はうねうねと形を変えてたくさんの俺になる。今ので何人か分身が持ってかれたが、元である俺は無傷だ。
「うわっ!?増えた!?」
「ちぃっ!おのれ小賢しい!!」
キメラは巨大な腕を振るい分身を一掃する。が、それは想定内。俺は振るわれる腕を掻い潜り奴の懐へ飛び込む。
「おらぁ!!」
「ぐっ!!『ゴーストテイル』!!!」
俺は如意棒を突き出すが、奴はとっさに後ろへ飛ぶことで威力を受け流し、すぐさまブレード状の尾を伸ばし、俺の脇腹を殴打した。ちっ、初めてダメージらしい一撃を貰っちまった。
「けほっ、今ので決まると思ったが……」
「同じ手になんどものるか。そろそろ決めてやる。最強のゴーストARMでね!!」
次の瞬間、キメラから相当の魔力が放出され、肉塊がみるみるその体を被ってゆく。やがてそれは巨大な異形の怪物を形作った。本来頭があるであろう場所には本体であるキメラが埋まっている。
「ゴーストARM『キマイラ』!!!これでお前をズタズタにしてやる!!」
キマイラはドリル状の爪を回転させこちらに降り下ろす。
「そうだな、これで詰みだ。
お前の負けでな」
「なにを言っ………!!!?」
次の瞬間、俺は電撃で形作った大包丁を振るい、キマイラの体を切り刻んだ。
「稲妻包丁 “渦雷微塵切り”」
粉々に切り刻まれ尚且つ高圧電流で焼かれたキマイラの体は本体のキメラを残し一辺も残らず灰塵となり消え失せた。最強の体を失ったキメラは、そのまま地面に叩き付けられる。
「あっが…!ば、かな……」
キメラは血を吐き仰向けのまま動かない。電流で麻痺している上に背骨を打ったんだ。もはやまともに動けまい。
「ぐ、ぎぃ!くそぅ…あ゛だしは…!」
「……悲しいねぇ。お前は憎しみのあまり、人としての幸せすら捨てちまったのさ。」
その顔を狂気と憎悪に歪め、なおももがき立とうとするキメラを見て、せめてもの俺の出せた言葉だった。ここで殺すのは容易いが、約束がある。俺の出来るのはここまでだ。
「勝負あり!!勝者‼タツヤ!!!」