我が道を行く自由人   作:オカタヌキ

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宣誓!私は、7月までに新章に突入することを誓います!!

「いったな?」

「言ったわね?」

「言ったぞ」

「もしその言葉違ったら……」

『『『フフフ……』』』

……ッッ!!?!?……やってやる、やぁってやるぞぉおおおおお!!!!


お菓子と魔笛

 

「おはようございます‼昨日はよく眠れましたか?」

 

色々な思いの交差した長い夜は開け、ウォーゲーム6thバトルの時がやって来た。メルと龍の紡ぐ絆の連合軍は、城の会場へと終結していた。

 

「あんまり~~」

 

「一睡もしてねぇよ。文句あるか?」

 

「ずーっと女の子と遊んどった」

 

「ヴァーリ、なんか目の下に隈出来てるぞ?寝不足?」

 

「ん、ああ、いや。これは…」

 

「んもう!ヴァーりんったら昨日は離してくれなかったんだものぉ♥」

 

「ヴァーリさんは自分の中に渦巻く激情を抑えることなく、私達を押さえつけて…」

 

「誤解を招く言い方すなぁ!!!」

 

 

(こいつら…… )

 

メルの面々の気の抜けた態度にポズンは内心イラつくも、手に握られた2つのダイスを見せる。

 

「今度から私、ポズン自らダイスを振ります。よろしくお願いします。」

 

「イカサマしたらくびり殺すわよ?」

 

ビクッ‼「や、やだなーー。そんな事しませんよぉ~」アセアセ

 

(しようとしてやがったな……)

 

リアスの鋭い目付きで放たれた脅しにポズンはしどろもどろに答える。

 

「で、では!!」

 

気を取り直して、ポズンが投げたダイスの結果は、5vs5の砂漠ステージ。だが、現れたチェスの兵隊は、フリフリのドレスを着た小太りの女と、トンガリ帽子を被った道化師のような風貌をした男の二人だけだった。

 

「二人しかいねーじゃねぇかコロヤロー!!」

「どういうことだてめえーー!!」

「ギャース!!そ、そんなはずは……!!」

 

ポズンを二人して踏みまくるイッセーとギンタ。

 

「た、大変だみんな!」

 

「「何だよ!!?」」

 

「昨日のやつがまた子供達とあそんどる」

 

ズテッ!!

 

再びスッ転ぶギンタ。今回はイッセーも一緒にズッコケていた。

 

「ごめんよぉー。……さて、これで3人。あとは……そこのキャンディスで、4人目ね。」

 

またもや子供達と遊んでいたチェスの兵隊【ナイト】、アッシュが飄々とした調子で指差した先には、際どいボンテージファッションを着て白塗りの仮面を被った長身の女だった。

 

「もう一人は最後になったら出てくるそうよ。ナナシと縁のある人間らしいわ。」

 

「さて、それではそちらのメンバーを選択して……おや、そちらのリーダーであるタツヤ様はいかがなさいました?」

「兄さんは所用で外れている。兄さんが不在の間は、代理としてギンタがリーダーということになる。」

 

ヴァーリの言葉を聞いてポズンは腕を組み唸る。

 

「ふむ…困りましたねぇ。ウォーゲームの途中にリーダーの不在は想定外の事態です。考えようによっては棄権と見なすことも……」

 

ウォーゲームも後半戦に差し掛かろうというところにリーダーである竜也の不在。そしてひょっとすると棄権もあり得るということに、集まった民衆はざわつく。

 

「お、おいどういうことだよ!?」

「俺が知るか!!」

「タツヤはどこに行ったんだ!?」

 

「ど、どうしよう失格かもって!」

「どうなるっすかぁ!?」

「ぁんのアホンダラぁ…」

「やれやれ、」

 

「ぁんのバカ兄ぃ…こういう展開は予想できただろうが…!」

「竜也のマイペースにも困ったものね」

「けどどうするよ?このままじゃまじで失格だぜ?」

「うふふ♪いざとなったらこのまま全面戦争に……」

「おい、大和撫子」

 

 

「いいんじゃないかな」

 

突如聞こえたその声に、会場はシィンと静まりかえる。民衆の内の一人が城の屋根を指差すと、その先にはファントムの姿があった。

 

「ファントム……!!」

 

「せっかくここまで登りつめたんだ。特別に許可しようじゃないか。もちろん、仮とは言え彼が帰る前にギンタが負ければその時点でゲームオーバーってことになるけど……いいのかな?」

 

「当ったり前だ!!負けるもんか!!」

 

ギンタの自信に溢れる言葉に、メルと龍の紡ぐ絆のメンバーは満足の笑みを浮かべる。それはファントムも同様だった。

 

「ははっ、わかったよ。ここからはもうルークも半端なビショップも出さない。そこにいる二人はね、ビショップの中でも最も強い三人の内の二人なのさ。そしてナイトが三人。全員ラプンツェルなんかより強いからがんばってね♪」

 

ラプンツェルよりも強い。ファントムの言葉にメルと龍の紡ぐ絆のメンバー達に緊張が走る。

 

「ファントム!」

 

すると、キャンディスが突然ファントムの名を呼び仮面を外す。仮面の下の彼女の素顔は、切り傷の入った右目に眼帯をした小綺麗な顔だった。

 

「あ、あたしが勝つとこ見ててね!わ、私、がんばるからね!」

 

「うん。がんばってね、キャンディス。」

 

「キャーーッ!!がんばるっ!がんばる!!」

 

キャンディスの宣言に笑みを浮かべて答えるファントム。それに対しキャンディスは、恋する乙女の表情を浮かべてぴょんぴょんと跳ね体全体で喜びを表す。

 

「………」

 

「…………ッ!!」

その時、朱乃とキャンディスの視線が会い、二人に電流が走った。

 

「……皆さん、彼女とは私がやりますわ」

 

「え、朱乃ちゃんなして?」

 

朱乃の突然の言葉に困惑の表情を浮かべるイッセー。

 

「……感じましたの。シンパシー♥」ニコォ♥

 

『『『あ、はい。どうぞ』』』

 

それはそれはイイ笑顔だった。

 

こうして今回の連合軍からのメンバーは、朱乃に加え張り切るギンタ、指名を受けたナナシ、他を抑えやる気満々のスノウ、そして今まで出ていない中からくじ引きでゼノヴィアとなった。

 

「では、改めまして……『アンダータ』!!!このメンバーを砂漠ステージに!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

火蓋を切られたウォーゲーム6thバトル。第1戦目はチェスの兵隊ビショップのエキモス、メルからはスノウの対決となった。

 

試合開始直前、エキモスは剣型のガーディアン『魔剣ダンダルシア』を出現させる。

 

「魔剣ダンダルシア、世界で一番かわいいのってだあれ?」

『あなたです、マスター』

エキモスの問いかけに対し、ダンダルシアは機械的に答える。

 

「じゃーあー、あそこにいるブサイクと私、どっちがイケテるぅ?」

エキモスは、今度はスノウを指差しダンダルシアに尋ねる。突然のことに、スノウはきょとんとした表情を浮かべる。

『マスターに決まっております。あの女のコはブスです。』

 

カッチーン

 

その時、スノウの中の何かがキレた。

 

「私、一番に出るね?文句ないね?」

 

「「「ど、どうぞ!」」」

 

「あらあら、うふふ♪」グッ 

 

笑顔でキレるスノウに、ギンタ、ナナシ、ゼノヴィアの三人は気圧され、朱乃は笑顔で親指を立てた。

 

こうして始まったスノウとエキモスの対決。先に仕掛けたのはエキモス。繰り出したのは、人の顔ほどもある大きな花だった。

 

「あんたをォ…占ってあげるしぃー」

そう言ってエキモスは花弁をむしり始める。すると、花弁がむしられるごとにスノウの髪の毛がブチブチと抜け始めたのだ。

 

「ブス。美人。ブス。美人。ブス。ブス。あーら、二回言っちゃったし~」

 

「いたっ!いたっ!いたたっ!?」

 

そうして、やがて花弁はなくなり、最後の1枚をむしると、スノウのいた場所が突如爆発したのだ。

 

「あたた…けほっけほっ!」

 

「えーー?私の”花占いでボン!”でも死なないー?意外とタフだしー。ブスだけどォー。」

 

「こ、こいつぅ…さっきから、ブスだの何だのって…温厚な私だって怒るんだぞーー!!」

 

ここからスノウの反撃が始まる。『アイスドアース』の氷の礫を大量にエキモスに放った。しかし、エキモスはそれを(見た目の割に)軽やかな動きで、全て回避してしまった。

ならばこんどはユキちゃんこと『スノーマン』を繰り出すも、エキモスはそれをダンダルシアを使って真っ二つにしてしまった。

 

「あんたってー、顔もブサイクです弱いのねぇー。かわいそーっ。そう思うっしょ、ダンダルシア?」

 

『イエスマスター。その通りです。』

(あっちのコの方が全然カワイイっての……嘘つくのも疲れるなぁ~もう…)

 

エキモスの答えに社交辞令的に答えるダンダルシアだったが、内心エキモスに対して不満たらたらだった。

 

そんな最中、エキモスは新たなARMを繰り出す。

 

「私のもっとスゴイところ見せるしー。出てこい…………

 

 

ズズゥゥゥゥゥン!!!

 

 

 

 

 

 

『おかしの家』ーーーーっ。」

 

「は?」

『『『んなぁにィィィィィィ!!?』』』

 

それを見ていた全員が驚愕の声を上げる。砂漠のど真ん中に、書いて時のごとくお菓子でできた家が降ってきたのだ。そして、エキモスはお菓子の家の壁や柱をひっぺがして、バリバリと食べ始めたのだ。

 

「モグモグ……うまいしぃ~」

 

「た、戦ってる途中に食事?というか何の属性のARMなのあれ?」

 

スノウはそよ予想外すぎる光景を唖然と見つめる。エキモスはそれを無視してお菓子の家をバクバクと食べまくる。

 

「もう!なんかバカにされてる見たいで腹立つ!!」

 

痺れを切らしたスノウがエキモスに突っ込む。それに対してエキモスは……

 

「……食べたらぁ…食べただけェ……ブオオオオオオオ!!!」

 

「キャ!!!わあああああ!?」

 

息を吐き出しただけ。それだけでスノウは吹き飛ばされてしまった。

 

「強くなるしぃー。」

 

これこそが『おかしの家』の効力。パーツのお菓子を食べれば食べるほど、術者の力を肥大化させていくのである。その効力は徐々に現れ始めた。エキモス体がどんどん膨らんでいるのである。

 

「……カルデアで頂いたARMを使う時が、来たようだね。」

 

スノウはポケットをまさぐる。取り出したのは、カルデアで授けられた新たな力……

 

「来てっ『ウンディーネ』!!!」

 

現れたのは、身体に魔法文字の書かれた布を巻き付けた美しき水の精霊。ガーディアンARM『ウンディーネ』であった。

 

「今回私が倒すべきはあちらの方なの?クスクス…美しくない方ね。」

 

ウンディーネはエキモスを見て嘲笑する。それを見てエキモスは怒りだす。

 

「私が美しくないってーーーー!?ダンダルシア!!!どう思うしーーーー!?」

 

『美しいです……あっちの方が』

 

バギィッ!!!

 

遂に本音を言っちゃったダンダルシア。哀れ、彼はエキモスによって粉々に粉砕されてしまった。

「もうあんなガーディアンいらないしぃー。私にはおかしの家があるんだしぃー」

 

エキモスはそう言ってさらにお菓子の家を食べまくる。

 

そこにウンディーネが仕掛ける。巨大な水の渦を地面から吹き出し、お菓子の家を破壊したのだ。

 

「わ、私のおかしの家がぁ………!!許せないしィィィィィィィ!!!」

エキモスは怒り狂いウンディーネに突っ込む。それに対し、ウンディーネは水の膜でエキモスの顔を包み込んだ。どれだけのパワーがあろうとも、息が出来なければ酸素が脳に回らず、意識が朦朧として窒息、やがて死に至る。

 

「あのような者でも人は人。命の選択をさせてあげてはいかがかしら?」

 

ウンディーネの提案にスノウは頷き、エキモスにギブアップをするなら手を叩くようにいう。しかし、エキモスはビショップ三人衆としてのプライドからそれを拒む。やがて、エキモスの顔色が青ざめて行く。

 

「手を叩いて!エキモス!!」

 

いよいよ命が危ういという時、エキモスの顔を覆っていた水が弾ける。ウンディーネが先に水を解いたのだ。息ができるようになったエキモスだが、酸欠でそのまま仰向けに倒れた。

 

「あの方は死ぬまでギブアップをしなかったでしょうね。だからその前に水を解きました。」

 

倒れるエキモスの顔をポズンが覗き見る。どうやら失神しているだけのようだ。

 

「勝者!!!メル、スノウ!!」

 

「スゴイじゃねぇかスノウ!!」

 

「ナイスですわ、スノウちゃん♪」

 

仲間達からの歓声に、スノウは笑顔のピースサインで返した。

◆◆◆◆◆◆◆

 

続く第2戦、勢いに乗るべく出陣したのは、龍の紡ぐ絆【遊泳剣兵】ゼノヴィア。対してチェスからはエキモス同様ビショップ三強の一人であるハメルンであった。

 

「…………ブツブツブツ」

 

「……?何を言っている?」

 

開始直後、何かをぶつぶつと呟くハメルンに、ゼノヴィアは目を細める。ハメルンは彼女の問いかけに答えず、唐突に取り出した笛を吹き鳴らした。

 

「なっ!?」

 

笛の音が耳に入ると同時に、ゼノヴィアの体は虚脱感に囚われる。ゼノヴィアは、自身の体から魔力がハメルンへと流れ出ているのを感じ取った。

 

「『ソウルフルート』。魔力はいただくって言ったのサ。」

 

ハメルンは不気味な笑みをさらに深める。ハメルンが発動したソウルフルートは、音色を聞いた者から魔力を奪うARMである。そしてその効力は、フルートの音が届く範囲全域に及ぶ。

 

「なんてARMだ…!オレたちの距離からでも魔力を吸ってくる!」

 

「離れろゼノちゃん!!」

 

「くっ!!」

(笛を吹いている今のヤツは無防備。だが、この吸引速度……私の魔力量では近づく前に吸い尽くされる!)

 

ゼノヴィアはハメルンの笛の音から逃れるべく距離をとる。

 

(接近戦は不利か……ならば!)

ゼノヴィアは十分に離れたことを確認し、ARMに手を触れる。

 

「くらえ!ナナシ直伝、『サウザンドニードル』!!!」

 

発動したのはナナシも所持するウェポンARM。無数の銀の槍が地面から突き出し津波のようにハメルンに襲いかかる。

 

「……届かない…ヨ」

 

それに対し、ハメルンは翼のARMを発動し、空へ逃れる。さらに、翼を激しく羽ばたかせ砂を巻き上げた。

 

「グッ…!!」(羽ばたいた風で砂嵐を発生させた……目眩まし!?)

 

ゼノヴィアは顔を手で被い砂を防ぐ。まもなくして砂嵐は収まるが、ゼノヴィアはその光景に目を見開く。ハメルンが()()()()()()()いたのだ。どのハメルンも先が大きく広がった不気味な縦笛を持っており、何重層にも重なった笛の音色が辺りに響く。

 

「『チャームホルン』。どれが本物かわかるかイ?」

 

どのハメルンが言ったかは定かではないが、ハメルンはそう言うと一斉に短剣をゼノヴィアに投げつけた。

 

「くっ!『遊泳』!!!」

ゼノヴィアはとっさに『遊泳』の魔法を使い砂の中に逃れる。遊泳を使っている最中は、周りの状態の影響を受けず、どんな場所でも『泳ぐ』ことができる。砂が目や口に入る心配もない。

 

対象を失ったハメルンの短剣は、全て砂地に突き刺さった。

 

「隠れても…無駄…だよ」

 

ハメルンはそう言うと、一斉に翼を羽ばたいた。複数人で引き起こされる風は先程の比ではなく、巨大な竜巻が発生。辺りの砂を巻き込んで渦巻き始めた。

 

「なっなんてヤツだ!?羽ばたいた風ででっかい竜巻を作りやがった!!」

 

「不味いで…あんなんに捕まったら!!」

 

「逃げて、ゼノヴィアさん!!」

 

「くっ…言われずともっ!」

 

スノウの警告を聞くまでもなく、ゼノヴィアは距離を取ろうとする。しかしその時、不気味な笛の音色が辺りに響き、ゼノヴィアは再び虚脱感に襲われる。分身したハメルンの内の一人が、再びソウルフルートを吹き鳴らしたのだ。ゼノヴィアの動きが鈍る。

 

(不味いですわ……あのハメルンという男…接近戦が主体のゼノヴィアさんにとっては最悪の相性!このままでは……)

 

「ぬ、ぬ…ぐ……ぬあああああ!!」

 

そして遂に、竜巻はゼノヴィアの周りの砂を巻き上げ、ゼノヴィアは宙に投げ出される。

 

「くふふ…み~~っけ♪」

 

その時、ゼノヴィアは宙に大量にいるハメルンたちの真下にあるはずの()()()()()()()()()()()ことに気づいた。そして、唯一影が浮かんだ場所の真上にいるのが……

 

「見つけたのは…!こちらだぁ!!」

 

ハメルンが投げた短剣が逃げ場のないゼノヴィアに襲いかかる。体の至るところに短剣が突き刺さる中、ゼノヴィアはARMに手を伸ばす。

 

「ぐっ!?あぁ゛ぁあ゛…ッ!!!サウザンド…ニードル……”一攫千銀“!!!」

 

ゼノヴィアの渾身の力で放たれたサウザンドニードルは、一本に纏まることで巨大な槍と化し、空中にいるハメルンの内の一人の羽を刺し貫いた。

 

「ぶはっ!!」

 

羽を失ったことでハメルンは地に落ち、それと同時に他のハメルン達も消滅する。

 

「はぁ、はぁ…デュランダル!!!」

 

ゼノヴィアは息も絶え絶えながらも、自身の切り札である聖剣デュランダルを異次元より手に納める。以前は召喚ごとに詠唱を必要としたが、竜也より教えられた異次元に武器を保管し瞬間的に装備する魔法、『換装』によって隙を生まないようにした。(これに対し、ゼノヴィアは『聖人に対する不敬になるのでは?』と竜也に尋ねたが、『死んだら不敬もクソもないだろ』と返した。)

 

「…ここまでの苦戦を強いられたのは私の油断が招いたことだ。故に…次の一手で確実に決めてやる!!」

 

ゼノヴィアはそう言うとデュランダルを構える。

 

「ふーん、でもボクにはまだ秘策があるのサ。」

 

ハメルンは再びソウルフルートを吹き鳴らす。それに対し、ゼノヴィアはこれまでの戦いで大体把握したソウルフルートの効力の及ぶ範囲から脱する。

 

「もうその手は喰わん!!」

 

ゼノヴィアはそう言ってハメルンにデュランダルの剣先を向ける。向けられたデュランダルの刀身は淡く光を放っていた。

 

「…ならこれはどう?ハメルン最後にして最強のガーディアン…『ボリノ』!!!」

 

現れたのは、長い腕とその先に生えた3本の鍵爪、コウモリのような大きな耳と目玉、そして手に生えた爪と同等もある牙がはみ出た巨大な口をもつ怪物だった。

 

「今度は、逃げられないヨ?次で決めると言ったネ?だったらボリノを倒して見せてヨ」

 

「ああ、もとよりそのつもりだよ。」

 

ハメルンの挑発に、ゼノヴィアはあっけらかんと答える。不振に思ったハメルンだが、次の瞬間、その不気味な笑い顔は驚愕に変わる。ゼノヴィアの持つデュランダルから目映いばかりの光が放たれていたのだ。

 

「な、なに…それ……ッ!?」

 

「デュランダルを出現させた時から私はデュランダルの光力を練り続けていた。貴様がおしゃべりをしている間もなあ。おかげで十分な力を溜め込むことができた。

まぁ、貴様に気づかれないよう光の力をデュランダルの中に押し込んでいたのだが、いい加減にデュランダルも窮屈だろう。そろそろ解き放つとしようか。」

 

そう言うと、ゼノヴィアはデュランダルを頭上に振りかぶった。

 

「ッ!!?ボリノ!!!」

 

ハメルンはすかさずボリノをけしかける。だが、ゼノヴィアはお構い無しにデュランダルに押し込めていた光力を解き放ち、大きく振り払った。

「まとめて消し飛べ!!“デュランダル!!レディアントォ…パニッシャー”ァァァァァアアアア!!!」

 

押し込められた光の力が一気に解き放たれる。解放された光は巨大な柱と化し、迫るボリノもろともハメルンを叩き潰した。目映い光が爆発し辺りを包み、強烈な衝撃波によって砂が巻き上がる。

 

光が止むと、そこはまるで隕石が衝突したかのような巨大なクレーターが出来上がり、その中に黒焦げになり泡を吹いて倒れ伏すハメルンの姿があった。

 

「本来なら跡形もなく消し炭にしているところだが…特別に加減してやった。

 

悔い改めよ。」

 

そう言ってゼノヴィアはきびすを返し自陣へと歩き出した。

「……!!し、勝負あり!!勝者、ゼノヴィア!!!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「……な、なんてヤツだあの野郎……」

 

城に設置された鏡に映る光景を見て、アランは唖然と呟いた。

 

「すげーぞあの嬢ちゃん!!」

「イカすーーッ!!」

 

「いや……もはやあれ剣じゃねぇだろ」

「あっはははは……」

「なんだろう、あれがゼノヴィアの本来の姿な気がする…」

「ツーかあれって木場ちんのパク…」

「シッ!!!」

 

「でも、これでこちらの二勝よ。これでギンタが負けなければ…」

「喜ぶのはまだ早え。問題は、次からだ……」

 

ゼノヴィアの勝利に思い思いに盛り上がる周りをよそに、アランは残ったチェスの二人を見据えていた。

 




感想なぞ貰えると嬉しいです。次回もお願いします。

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