我が道を行く自由人   作:オカタヌキ

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貝と氷魔

「あらあら、ノッて来ませんか。つまらないことですわ」

 

ギロムに説得され引き下がるラプンツェルを見て、朱乃は口を尖らせぼやく。

 

「てか朱乃ちゃん、何抜け駆けしてるんだよ」

「そーよそーよ、あのババア私が殺りたかったのにー」

 

「あらあら、早い者勝ちですわ♪最も、お目当ては釣れませんでしたけど……」

 

ブーブーと文句を言うヴァーリとドロシーを尻目に、朱乃は目線をチェスに向ける。出てきたのは、道化師のような頭巾の上から仮面を着け、左手に異様に大きな鍵爪を着けた男だった。

 

「まぁ、いいですわ。とっとと終わらせるとしましょう」

 

朱乃は獲物を見据える猛禽のような微笑…否、冷笑を浮かべゆっくりと歩み出た。

 

 

◆チェスの兵隊【ビショップ】▼アヴルートゥ▼

 

 

◇龍の紡ぐ絆【航空参謀】▽姫島朱乃▽

 

「第三戦‼アケノVSアヴルートゥ!!!試合、開始ぃ!!!」

 

開始と同時に、アヴルートゥは自身の装着した爪を堅持するように掲げた。

 

「ウェポンARM『シェラキー』。この爪は何でも切り裂く。ARMでも…だ。」

 

「あら、そう。キョーミありませんわ」

 

「なっ!?きさ…」

 

「『エレクトリックアイ』」

 

 

カッ!!ドガアアアアアアン!!!

 

 

 

 

瞬殺。まさにその一言だった。朱乃の放った電撃は、一瞬にしてアヴルートゥの身を焼いた。

 

「ば、バカな…何もしてない…」

 

アヴルートゥはそのまま崩れ落ちた。

 

「しっ勝者、アケノ!!!」

 

「あらあら、何でも切り裂く?だったら雷も切ってみなさいな。」

 

朱乃はそう言い残して自分のチームへ戻って行った。

 

「お疲れ朱乃ちゃん、てか瞬殺かよ。」

 

「流石ですね、朱乃先輩」

 

「てんで期待外れでしたわぁ。もう少し歯ごたえがあるかと思いましたのに…」

 

朱乃たちが和気あいあいと話している中、ギンタたちは朱乃のことを唖然と見ていた。

 

「あ、朱乃さんすげぇ……」

 

(あの威力…前にベストリで見たナナシのエレクトリックアイよりももっと上、しかも全く消耗していない!?)

 

(強い……アケノ、彼女は既にナイト級……いや、もしかするとそれ以上か……これが、龍の紡ぐ絆……)

 

「う……ジャンケンか…」

 

アヴルートゥはヨロヨロと立ち上がり自陣へ戻る。

 

「お前みたいなクズはジャンケンする…必要もない。」

 

ガッ!!

 

「すぐ死ね。」

 

ラプンツェルはそう言ってアヴルートゥの首を跳ねた。

 

「………次、いきますっ。アヴルートゥのようにはいきませんからっ。アクアちゃんがんばっちゃうよーー  」

 

そう言って前に出てきたのは、最初にラプンツェルに頬を打たれた少女だった。頭にはホラ貝のような帽子を被り、フリルの付いたドレスには、星や真珠のような装飾がちりばめられ、常に笑顔を浮かべる顔の左頬には星のペイントが入れてある。

 

「なんぢゃあのブリブリは!?あれが戦うのか!?」

バッボの疑問は最もだろう。彼女の外見はとても戦うようには思えない。

 

「…さて、残ったのは俺とギンタとドロシーの三人だが……」

 

ヴァーリは朱乃とギンタの二人を見る。

 

「俺はいいよ、向こうに俺と戦いたがっている奴がいるみたいだから。」

 

そう言うギンタの目線の先には、狂暴な笑みを浮かべるギロムの姿があった。

 

「そうか、ならここは俺が出よう。あのババアはドロシーにゆずるとするかな。」

 

「あーんヴァーリンやさしぃー♥そういうとこ大好きぃー♥」

 

「……ぁのアマぁ……!」

 

ドロシーはヴァーリに抱きつき頬擦りする。その様子を白音はどす黒いオーラを放ちながら見ていた。

 

◇龍の紡ぐ絆【科学参謀】▽雷門ヴァーリ▽

 

◆チェスの兵隊【ビショップ】▽アクア▽

 

「第四戦‼ヴァーリVSアクア!!!開始!!!」

 

 

「レディファーストだ。先手は譲ろう。」

 

ヴァーリは余裕の笑みを浮かべて手招きをする。

 

「まぁ!なんて優しい人なんでしょ!ありがとうございますぅ!それではぁ…お言葉に甘えちゃおっかな~~♥」

 

アクアは(元々だか)笑顔を浮かべて胸元をまさぐり、一つのARMを取り出した。

 

「ガーディアンARM!!!出て来てアッコちゃん!!!」

 

ドズズズズゥゥゥゥゥゥン!!!!

 

《ぐるるるるるる!!!》

 

氷の大地を砕き、現れたのは巨大な真珠貝のガーディアンだった。貝殻の中にはボウと2つの目が浮かび、ガチガチと貝殻を鳴らして威嚇している。

 

「ほぉ、デカいな」

 

「Goーーーっ!!」

 

アクアの号令を受け、アッコちゃんはその巨体に似合わない速さでヴァーリに突進する。

 

「“アイスファランクス”!!!」

 

ヴァーリは冷気によってできた氷の槍を打ち出すが、アッコちゃんの殻には刺さらず砕けてしまった。

 

「なるほど、硬いな」

 

ヴァーリは『白龍皇の月光翼』を展開し、迫り来るアッコちゃんを飛んで回避する。するとアッコちゃんは貝殻を大きく開き、バスケットボールほどもある真珠をマシンガンの如く打ち出した。

 

「アッコちゃんは最高の防御力をもってるの 必殺技”ぺルルアタック“の味はどうですか?カッコイイお兄さん。」

 

ヴァーリはアクアの問い掛けには答えず、大きく息を吸い込み、そして吐き出した。

 

「“ツンドラブレス”!!!」

 

吐いた息は強烈な吹雪となり、冷気を浴びた真珠は皆勢いを無くして凍り付き、全て粉々に砕け散った。

 

「残念、一つも当たらなかったぞ。」

 

ヴァーリは余裕の笑みを浮かべた。

 

「あら。まあ。ふむぅ…それでは作戦を変えましょう!」

 

アクアはそういうと、アッコちゃんを引っ込めた。

 

「やっ!」

 

可愛らしい声を上げて飛び上がると、アクアの靴の裏にスケート靴のブレードが現れた。

 

「ウェポンARMか!?」

 

「そうは見えないけど……よくわからない敵ねぇ」

 

「せーの……すぃーーーーっ!!」

 

アクアは勢いを着けて飛び出し、そのままヴァーリが飛んでいる下を周り始めた。

 

「すぃーーーっ」

 

「すぃーーーっ」

 

「すぃーーーっ」

アクアはそのままぐるぐると周り続け、ヴァーリはそれを上空からただ見ていた。しばらくすると、ヴァーリの下には大きな円の跡が残っていた。

 

「よし!!行きますよぉーーっ!ヴァーリさん!」

 

アクアは滑るのを止め、頭の貝殻を取り外した。

 

「ぷはーーーーっ……」

 

《ブオオオオオオオ!!!》

 

 

アクアは大きく息を吸い込み、貝殻に吹き込むと大きな音が辺りに鳴り響いた。すると、氷の下にユラリと大きな影が見えたかと思うと、氷を破り巨大な怪魚が姿を表した。

 

「ッ!!?(円を描いてたのはこいつの出現場所のマーキングのためか!?)」

 

怪魚はヴァーリを飲み込み、飛沫を上げて海中に姿を消した。

 

「ネイチャーARM『スピカラ』です。これでアクアの海のお友達を呼べるんですよ!」

 

氷の下の海を泳ぐ巨大な魚影、しばらくすると、その周りが赤く染まりだした。

 

「ヴァっ……ヴァーリィィィィィィ!!!」

 

ザパァアアアアン!!!

 

ギンタの叫びに呼応するかのように、再び怪魚が水面から飛び出した。すると、怪魚の頭部から二本の刃が突き出ていおり、そこから血が吹き出していた。

 

「「…………!?」」

 

次の瞬間、怪魚の頭は粉々のみじん切りになり、そこからヴァーリが姿を表した。

 

「呼んだか?ギンタ」

 

ヴァーリはギンタに笑みを向けて地面に降り立つ。頭部を失った怪魚の体は、血飛沫を上げながら氷の大地へ落ちた。

 

「『白龍皇の月光翼』、羽根の一枚一枚が刃のごときこの翼の切れ味は、さっきの奴の爪などとは一線を画す。……それよりあの魚、寒さで身が引き締まってなかなか旨そうだ。あとで刺身にでもするとしよう。」

 

ヴァーリはそんな呑気なことを言いながら翼に付いた血を払っている。アクアは、そんなヴァーリの余裕の態度を見て、彼にとって自分は歯牙にもかけない存在なのだと思い知らされる。脳裏に浮かぶのは、負けた他の面々が首を切られる光景。アクアの顔がみるみる青ざめる。

 

「やだ………首を切られるのは嫌ですぅ!!アッコちゃん!!!」

 

アクアは再び貝のガーディアン、アッコちゃんを呼び出し、その殻の中に飛び込み、アッコちゃんの殻が閉じる。一見、硬い殻に逃げ込んだのかと思われたが、アッコちゃんは徐々に回転を始め、高速回転しながら突進した。

 

「ローリングアッコちゃんアタックですぅ!!!」

 

「なるほど、硬い貝殻に入ることで術者の身を守りながらその硬さを攻撃に転用、さらに発動中は動きが規制されるガーディアンARMの弱点もカバーできるというわけか。

………だが、ここまでだ。」

 

ヴァーリは翼を合わせて折り畳み、そのまま縦回転をしながら突っ込む。

 

「“スパイラルブレード”!!!」

 

ゴガッ!!!

 

 

 

鈍い音が響き、二人?はそれぞれ宙を舞い落下する。

 

相討ち、そう思われた。しかし、煙が晴れると、ヴァーリはムクリと立ち上がり、アッコちゃんはズルリと左右に別れた。

 

「へ……へ……へろへろ~~~~っ……」

 

アッコちゃんから這い出てきたアクアは、ぐるぐると目を回し倒れ伏し、それと同時にアッコちゃんも消滅した。魔力も体力も尽き果てたのである。

 

「勝者!!!ヴァー……!?」

 

ポズンがヴァーリの勝利を宣言しようとすると、ヴァーリはふらふらとふらつき始め、仰向けに倒れてしまった。

 

「お、俺としたことが……勢い余って翼を当てる前に頭をぶつけてしまうと……は………」

 

そう言うヴァーリの額には、大きなたんこぶができていた。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 

全員が唖然とする中、ポズンはコホンと咳払いをし、試合の結果を宣言した。

 

 

「第四戦‼両者ドロー!!」

「はぁー、やれやれ。俺としたことがなんと間抜けな。後で兄さんになんと言われることか……」

 

ヴァーリはぶつぶつと言いながら起き上がり、倒れていたアクアの手を引き起こした。

 

「ヴァーリさん……」

 

「形式はどうあれ結果は結果だ。この試合は両者引き分け……それだけだ。」

 

ヴァーリはそう言い残して自陣へと戻って行った。

 

 

 

「………ありがとう」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「すまん、しくじった。」

 

自陣へ戻ったヴァーリは、仲間たちにさらっと謝罪した。

 

「何がしくじったですか。わざとでしょうに。」

 

「…ヴァーリさんって時々アホなことしますよね。」

 

「もぅー、ヴァーリンったら。あんまり他の女に目移りしちゃ嫌よー」

「さて、なんのことかな?」

 

ヴァーリは3人に言い寄られても惚け、ちらりとアクアの戻っていったチェスの陣営に目を向けた。

 

 

チェスの陣営、そこでアクアはラプンツェルとギロムの2人に挟まれていた。

 

「……どうして、なんでジャンケンなんですか!?アクア…ドローでしたよ!?」

 

「敵に情けをかけられて恥ずかしくないのかいぃーーーっ!?お前は負けたんだよ豚ぁあ!!だから制裁なんだよアクアーーー!!」

 

「……わかりました。ジャンケンに勝てば首斬りは無しですもんね?」

 

アクアはラプンツェルの剣幕に怯んだが、覚悟を決める。

 

「ああ。そうともそうとも。ジャ~~ン、ケ~~ン……」

 

「「ホイ!!」」

 

アクアの出した手はチョキ、そしてラプンツェルの出した手は、パー。

 

「勝った……っ…」

 

その時、一瞬にして近づいたヴァーリが、ギロムの放った氷の槍を破壊した。

 

「なっ!?てめぇ!!」

 

「っ!?ヴァーリさんっ!」

 

「……さっきからいい加減にしろよ貴様ら。二人そろって不快な真似しやがって…」

 

ヴァーリは静かに怒り、ギロムとラプンツェルを睨みつけた。その氷のような視線に、二人はゾクリと背筋が氷った。

 

「……本当ならお前たち姉弟二人ともこの場で細切れにして魚の餌にしてやりたいが、生憎俺は既に試合を終えている。後は2人に任すとしよう。」

 

ヴァーリはきびすを返し自分の陣営に戻ろうとつかつかと歩いて行くが、ふと立ち止まり振り替える。

 

「あぁ、そうだ。戦利品として彼女は貰っていく。」

 

「え、へあっ!?」

 

言うや否や、ヴァーリはアクアを抱き抱え、一瞬にして自陣へ戻って行った。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「……さて、どうだ?具合は」

 

「は、はい。大丈夫です…」

 

4thバトル第五戦、ギンタとギロムの戦いが行われる最中、ヴァーリによってギロムの魔の手から救い出されたアクアは、ヴァーリが竜也から与えられたホーリーARMと白音の仙術によって治療を受けていた。

 

「……ありがとうございます、ヴァーリさん。2回も助けてくれて……」

 

「…自分の行動には最後まで責任を持てと兄さんに教えられた。俺は責任を果たしたに過ぎない。」

ヴァーリは素っ気なく答えるが、照れくさそうに目を背ける。そんな彼をアクアは、頬を桜色に染め、熱に浮かされた目で見つめて、白音はため息をつきまたかとジト目でヴァーリを見ていた。そんな目を誤魔化すように、ヴァーリは目線をギンタとギロムの戦いに向ける。

 

「『アイスドアース』!!!」

 

ギロムは氷の礫をギンタに飛ばす。氷のフィールドにおいて強化された氷のARMは、ヴェストリの時よりもその数と威力を増していた。

 

「バッボ、バージョン②!『バブルランチャー』!!!」

 

それに対しギンタは、バッボの形態を変化させ、泡の弾幕で全ての礫を相殺してみせた。

 

「こ、このガキャ~~ッ!!」

 

ギロムは苛立ちを露にする。最初はギロムの挑発に乗せられ頭に血が登り冷静さを欠いていたギンタであったが、バッボに叱責されたことで冷静さを取り戻し、魔力のこもった攻撃をぶつけていた。

「よぉ」

 

「ッ?!!」

 

冷気の煙が辺りに舞う中、ギンタはギロムの目の前にまで接近し、ギロムの顔面に鉄拳を叩き込んだ。ギロムは吹き飛び、氷山に激突する。

 

「ッッがぁああああ!!!糞がぁぁあああ!!!ビックアイスドアース!!!」

 

ギロムは怒声を上げ氷の瓦礫を吹き飛ばし、さらに巨大な氷塊を飛ばす。ギロムは以前ヴェストリの地底湖でギンタに敗れており、ギンタに対して強い怨みを募らせていた。しかし、その強い怨みはギロムの苛立ちを余計に募らせ、魔力に歪みを生じさせる。

 

「バージョン①!『ハンマーアーム』!!!」

 

ギンタはバッボを腕に装着したハンマーに変化、全ての氷を砕いてみせた。

 

「……ギロム、お前達はなんで仲間も殺せるんだ?」

 

「………はぁ?簡単なことじゃねぇかバァーーーカ!!!仲間だと思ってねぇからだよーーーっ!!あいつらは所詮使い捨ての道具なんだ!道具が壊れたらすてる!使えねぇ道具になんざ用があるか!?」

 

「……やっぱり、そういう答えか……

かわいそうなやつだよ、お前は。」

 

ギンタの答えに、ギロムは奥歯を噛み締める。

 

「かわいそうなのはてめぇさギンタァーーー!!!ネイチャーARM!!!『クレバス』!!!」

 

ギロムがARMを発動すると、ギンタの足元が突然ひび割れ、氷の大地は二つに裂け、文字通り巨大なクレバスが出現した。ギンタはそのまま氷の谷底へと落ちてゆき、轟音を立て氷の谷間は閉じられる。

 

「ひゃはははははは!!!ついにあの憎たらしいギンタをあの世へ…」

 

その時、閉ざされたクレバスが吹き飛び、中から巨大なゼリーのようなものに包まれたギンタが現れた。

 

「なっ…なんだありゃああああ!!!」

 

ギロムの顔が驚愕に染まる。

 

「バッボ バージョン⑤『クッションゼリー』!どんな重てぇ攻撃も、このゼリーは吸収しちまうのだ!」

 

ギンタの創造したバッボの五つ目の能力、それはあらゆる衝撃を吸収する防御形態だった。その弾力によって氷の壁の衝撃は吸収され、その反動でクレバスは砕け散ったのだ。まさに、柔を持って剛を制する力である。

 

「ち…ちくしょう!ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょぉぉぉぉおおおおおおお!!!ガーディアンARM『エゴラ』!!!」

 

「『ガーゴイル』!!!」

 

現れたのは、氷の身体を持つ巨人。対峙するのは、岩石の巨体を持つ悪魔。二体は互いに腕を組み合い、相手を粉砕しようと力を込める。

 

「いいよぉ!!そのままガーゴイルの腕へし折ってやりなぁ!!」

 

(ここは氷原!氷のガーディアン・エゴラは100%以上の力を出せる。負けるはずがねぇ!!)

「この大自然全てがお前の味方だ!!魔力MAX!!!行けエゴラァ!!!」

 

「わかるかみんな」

 

「ええ、ヴァーリン。魔力の通うスピードが半端じゃない!まだ…まだ上がってる!」

 

ヴァーリたちはギンタの想像以上の成長に冷や汗を流す。ガーゴイルは徐々にその力を増して行き、やがて、エゴラの腕の根元にビキビキと亀裂が走り、遂に両腕をもぎ取られ、粉々に粉砕された。

 

「なっ!!!?」

 

ガーゴイルは口に加えたリングを離し、バチバチとエネルギーが充填され、必殺技“ガーゴイルレイ”が放たれた。 リングによって増幅された光線は、エゴラの体をいとも容易く貫通し、エゴラはガラガラと氷の瓦礫となり崩れ落ちた。

 

「なっ!?……はっ!!」

 

気がつくと、ガーゴイルはギロムの目の前にまで迫っていた。

 

「次はお前だ、ギロム!!」

 

「わっ…悪かったってホント!反省してるって!ホントだって!悪かったって……」

 

「ぶっ飛んで反省しやがれ」

 

ガン!!!

 

 

ガーゴイルは腕を凪ぎ払い、それをまともに受けたギロムは空の彼方へと飛んでゆき、やがて見えなくなった。

「第五戦!!勝者、ギンタ!!!」

「ぷはー!スッキリしたーーーっ!」

 

ギンタは大きく息を吐き出し、緊張の糸が解れスッキリとした表情を浮かべる。

 

「よくも…よくもぉ!!よくもカワイイ弟にあんな事してくれたねェェェええええええ!!!ギンタァア!!!」

 

唯一の肉親であり、またストッパーでもあるギロムが倒されたことで、ラプンツェルは顔を怒りと憎悪に染めて怒声を上げる。

「六戦目もてめぇが出てこいギンタァ!!!ギロムの仇を討ってやるよォーーー!!!」

 

「上等だ。お前ら姉弟にはムカついてるからな」

ギンタは再び前に出ようとするが、後ろからヴァーリが肩に手を置き、ドロシーが手を前に出し制止する。

 

「駄目だギンタ。今の戦いでだいぶ精神力を使ったはずだ。」

 

「そうよギンタン。あのババアの相手は私に任せて。」

 

ドロシーはギンタににこりと微笑むと、ラプンツェルを挑発する。

 

「おーーーい!!わかったかババア!!ドロシーちゃんが相手してやるぞ!喜べーーーっ!!」

 

「ッッッ!!!…ババア、ババアって……そんなに私を絶頂させたいのかい……?

相手になってやるよォーーー!!!魔女!!!」

 

「その前に~…フフーン♪」

 

ドロシーは鼻歌を歌いながら指のARMを付け替えた。

 

「ドロシー、負けるなよ。」

 

「っ!うん!ヴァーリン♥」

ヴァーリのエールを受けて、ドロシーは上機嫌でスキップして行った。

 


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