我が道を行く自由人   作:オカタヌキ

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狂気と影

「てめえそこ動くんじゃねぇぞ!!!ぶっ殺…」

 

「待てギンタ!!」

 

ファントムの正体を知り、今にも飛びかかろうとするギンタをイッセーが止める。

 

「はっ離せよイッセー!!俺はあいつを…」

 

「許せねぇのは俺たちもいっしょだ!!!」

今まで聞いたことのないイッセーの声にギンタは固まるが、辺りを見て気づく。イッセーだけではない。竜也が、ヴァーリが、朱乃が、リアスが、『龍の紡ぐ絆』のメンバー全員が、ファントムに向けて怒りと憎悪に染まった目で睨み付けていながら、歯を喰い縛りその場に留まっていることに。ファントムの後ろには、彼に続いて現れた『13星座(ゾディアック)のナイト』の姿がある。今ここで怒りに任せて飛びかかれば、多くの命が失われるとわかっているから……

 

「今はその目に焼き付けろ。あいつが……俺たちの倒さなきゃいけない最大の敵だ!」

 

イッセーの言葉を受け、ギンタはその目をファントムに向けた。

 

「………ねェ、ギンタ。 僕はこの世界が大嫌いだ!臭くて臭くてたまらない。」

 

そこにあったのはドス黒い狂気。10人が見れば全員が揃って「狂っている」と述べるだろう、まるでヘドロやタールのようなどろどろとしていて嫌悪感を抱く悪意。

 

「世界の中心で置くのは常に自分。他者を傷つけ、妬み、嫉み、それでもいつでも自分が一番正しいと思っている。嫉妬、憎悪、背信、不遜、傲慢、欺瞞……それが人間の本質……醜悪だね……臭くて吐き気がする。

 

見せかけだけ。皆 馬鹿ばっかりだ。だから全て殺すことに決めたのさ。」

 

 

 

 

「はっ、下らねぇ。んなもんただの言い訳だろうが。」

 

竜也の発した言葉に、その場は静まりかえる。

 

「…………なに?」

 

「だってそうだろ?お前らはただ自分のことを棚上げして世界に八つ当たりしてるだけだ。それの何処に正当性がある?

世界が汚い?穢れてる?俺に言わしてもらったらお前らの方がよっぽど薄汚れて見えるがね?」

 

 

「お前らのやってることは要するにガキの癇癪と同じだよ。自分の気に入らないことがあれば周りに当たってて喚き散らす。……ほら、何が違う?」

「そうだ!ふざけんな‼てめえのやってる事こそ自己中心的じゃねぇか‼オレはてめえをぶっ飛ばす‼」

 

「……ダンナと同じことを言うんだね。それ故に、哀れだ……」

 

そう言ってファントムはマジックストーンを投げ放り落とす。

「バッボのマジックストーンだ。強くなって、会いにおいで。」

 

「………なるほど、それならこっちも方針が決まった。」

そう言って竜也はマジックストーンを拾い上げギンタに投げ渡し、ファントムに凶悪な笑みを向ける。(その笑みにその場にいた数名が悲鳴を上げたのは聞こえなかった)

 

「お前を()()のはギンタだ。……そして、お前を()()のは、俺だ。」

 

「………成る程、二人とも、楽しませてくれよ」

そう言ってファントムは消えて行った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ウォーゲームは3日おきに1日休みがあります。明日はご自由におくつろぎ下さい。」

 

そう言って審判のポズンは去って行った。

 

「よっしゃナンパや!」

 

「してる場合かアホ、修行だ修行!」

 

「や、やっぱりっすか……」

 

はしゃぐナナシへの竜也のツッコミを聞いてゲンナリと肩を下ろすジャック

 

「ガイラさん、頼むわ」

 

「うむ、ギンタ、ジャック、アルヴィス、ナナシ、ドロシー、そしてイッセー、ヴァーリ、アケノ、クロカ、シロネ、ユウト、フリード、ゼノヴィア、お前達にはこれから一日分修練の門に入って貰う。」

 

「あの……私は?」

 

「言ったはずだぜスノウ、お前は少し休んで貰う。」

 

アランの指摘にスノウはしゅんとした様子で縮こまる。

 

「私たちが選ばれなかった理由は何かしら?」

 

修行メンバーに選ばれなかったリアスが訪ねる。他の選ばれなかった面々も不服そうだ。

 

「このメンバーがウォーゲームに置ける主要メンバーだからだ。俺たちの目的はチェスの壊滅。ウォーゲームが終わったからと言ってチェスの脅威が去る訳ではない。そのためにも兵力を温存する必要がある。特にお前の情報収集能力とアーシアの回復は絶対に失う訳にはいかないんだ。わかってくれ。」

 

竜也の真剣な表情に、リアスや他の選ばれなかったメンバーは無言で頷く。

 

「それも今回は特別メニューだ。もうお前達に余裕はないのだ‼覚悟はよいな?お前達」

 

そう言ってガイラは修練の門を取り出す。

 

「ムリヤリですやん………」

 

「諦めろ」

 

ナナシの嘆きをバッサリ切り捨てる竜也であった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

所変わって修練の門の中、別々に他のメンバーとは飛ばされたヴァーリはガイラの言葉を思い出していた。

 

『お前達は今回、ある意味最も戦いにくい相手と戦うことになる。』

 

「最初は仲間内で戦うことになると思っていたが………」

 

ヴァーリが目を向ける先には、『()()()()()()()』を展開する黒い影。

 

「……まさか、自分の影、とはな……」

()()()()()()()()()()()()と対峙し、ヴァーリは苦笑する。

 

その他の場所でも、メンバーたちは自身の影を相手に苦戦を強いられていた。

 

「ネイチャーARM“シャドーマン”。魔力、身体能力、知能、全てが同じ自分の写し身。魔力が上がればシャドーマンも上がる。それが常にMAXの状態で襲い掛かる。極限までいじめぬいて己の限界を越えな!」

 

門の前で佇み、竜也は笑みを浮かべて言った。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「……おいおい、冗談じゃねぇぞ……」

 

「こいつ…俺だって使った事無いのに……」

 

突然なにかをぶつぶつ呟いたかと思ったら、()()姿()()と変貌した自分の影と対峙して、イッセーとヴァーリはそれぞれの場所で冷や汗を流し呟いた。

 

「VS『覇龍(ジャガーノートドライブ)』ってか……あんのクソ兄貴ぃ……毎度毎度そんなに俺たちを殺したいかああああああああああ!!!」

 

ヴァーリの絶叫が異空間に木霊した。


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