我が道を行く自由人   作:オカタヌキ

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蝋燭と好敵手

 

ウォーゲーム3NDステージ、火山群フィールド。5対5の戦いとなる。チェスの一人が寝坊し試合が遅れるというアクシデントもあったが、さして問題なく進められることとなった。

 

「さて、そろそろ俺たちも出るとしよう。連中に思い知らせてやれ。俺たちの力をっ!」

 

『『『了解!!!』』』

 

 

 

 

◆◆◆◆□□◆◆◆

 

 

 

一戦目、『龍の紡ぐ絆』教官 アランVSチェスの兵隊【ルーク】 アリババ。アリババは始まって即ガーディアンARM『魔人のランプ』を繰り出した。

 

「教えてやるぜアランさんよぉ、オレをルークだと思ってナメるなよ。

階級(クラス)とそいつの強さが比例してるとは限らねぇ!ARMの使い方次第で金星だって取れる。

そしてこのARMこそ、大金星を取れるARMさ!!出でよ“ランプの精”!!!」

 

アリババがランプを擦ると、ランプから煙が出て、ランプの精が出現する。アリババはアランに自身のARMを自慢気に語るがアランはどこ吹く風。怒ったアリババはランプの精をアランに向かわせる。

 

「あ、あいつ終わったな」

 

「えっ!?」

 

イッセーの紡きに驚くスノウ姫。次の瞬間、ランプの精はアランの拳によって粉々に粉砕された。

 

「何てことはない。あんなもん魔力もまともに通ってない風船みたいなもんだ。アランじゃなくても、『龍の紡ぐ絆』のメンバーならみんなあれくらい出来る。」

 

イッセーの解説に唖然とするスノウ姫。アランはそのままアリババを殴り飛ばし、火山火口に投げ落とした。絶叫を上げ落ちて行くアリババ。こうして一戦目はアランの勝利となった。

 

二戦目、ジャックVS【ルーク】 パノ。1NDのリベンジマッチとなった。前回とは違い、ジャックはパノの攻撃を完全に見切っていた。ジャックは第六感、特に気配察知に長けるイッセーが鍛えている。その成果を遺憾なく発揮していた。しばらくして、ジャックはパノに木の刺を打ち込み、そこから強い幻覚作用をもつ毒キノコ、マラライダケを生やす『マジカルマッシュルーム』を発動した。幻覚作用によって完全に錯乱するパノ。最終的にジャックがギブアップを薦め、パノにはそれが幻覚作用もあってかイケメンに見えたらしく、ジャックに抱きつきギブアップを宣言する。こうして、二戦目はジャックの勝利となった。

 

三戦目、スノウ姫VS【ビショップ】 Mr.フック。氷を扱うスノウ姫には火山地帯は堪えるだろう。徐々に体力を消耗し追い詰められて行く。最後の力を振り絞り、ガーディアンARM『スノーマン』を繰り出すが、Mr.フックの『怒りの碇(アンガーアンカー)』によって粉砕される。魔力を使い果たしたスノウ姫はついにリタイアとなった。

 

「よく頑張ったな姫さん。あとはまかせな」

 

イッセーはスノウ姫を担いで移動させる。

 

「さぁて!ここはバシッと決めねぇとなぁ!誰でも来やがれ!!」

 

「そんじゃカノッチ出てみよう。」

 

出てきたのは白いシルクハットを被りマントを羽織ったてるてる坊主みたいな顔をした男?だった。

 

「それでは、チェスの兵隊【ビショップ】 カノッチ!!『龍の紡ぐ絆』陸戦兵長 イッセー!!

勝負、開始!!!」

 

 

 

「ドーン。」

 

勝負開始と共に、カノッチはイッセーに向けて指を突き出し言う。イッセーは頭に?を浮かべ自分の体をまさぐる。

 

「……なんだ?」

 

「お前さんはこれでカノッチに呪われた。カワイソウなこったぁ」

 

そう言ってカノッチはシルクハットを外す。中からは一本の蝋燭が出てきた。

 

「ダークネスARM『ボディキャンドル』。このロウソクが燃え尽きたときにはさーーー、()()()()()()()()()()()()も消えちまうってんだ」

 

「何?」

 

「今すぐそのARMを壊せイッセー!!そいつの言っていることは本当だ!!」

 

アランの焦った掛け声から、イッセーは敵の言っていることが嘘ではないことを悟った。そして指示通りARMへ向かおうとすると、カノッチはARMを指から外し、それを飲み込んだ。

 

「タネも仕掛けも、消えちまったってこった」

 

カノッチの持つ杖から炎が吹き出す。

 

「かまやしねぇ、腹ぶん殴って吐き出させりゃいいだけの話だ!」

 

そう言ってイッセーは神器を展開しカノッチに一気に接近する。

 

「んなっ!?(オイオイ、やっこさん‼ちょいと速すぎやしねぇかい!?)」

 

「『コロナックル』!!!」

 

「グボォッ!!?」

 

イッセーの鉄拳がカノッチの腹に突き刺さる。

「ゲホッ……本当に吐きそうになっちまって笑えねぇ……」

 

カノッチはそう言うと頭のロウソクに杖を向け炎を吹き出す。すると、イッセーの体がドロリと溶け出した。

 

「作戦変更だね。1秒でも速いトコ、燃え尽きてもらうのも悪くねぇ。」

 

「………残念だが、そうはいかねぇ」

 

『Absorption!!!』

 

「んあ?」

 

『赤龍帝の太陽手』から機械音が鳴る。すると、カノッチの杖の炎がみるみる吸い込まれていった。

 

「ちょっ、ちょいと!お前さんそいつはどういうこったい!?」

 

カノッチは予想外の光景に取り乱す。

 

「どうよ、驚いたかい?俺は炎や熱を吸収して魔力に変換できるのよ!」

 

「んな!?お、お前さんそいつは……」

 

「そうさ。俺に炎系の攻撃は効かねぇ。それにここは火山地帯、其処ら中に炎や熱が溢れてる。俺にとっちゃ、ここは最っ高の狩り場なのさ‼」

 

(冗談じゃねぇぞおい…絶体絶命ってやつかい、こりゃ)

 

イッセーは笑みを浮かべカノッチを見据え、カノッチは自分の状況に冷や汗を垂らす。

 

「おいアンタ、カノッチっつったかい?お前、なんでチェスにいる?

俺はお前が人殺しを楽しむようなやつには思えねぇ。ま、勘だがな」

 

イッセーは構えは解かず、カノッチに訪ねる。

 

「…………人殺しにはキョーミねェ!ただ、カノッチって男は、スリルと刺激が欲しいのさ。ウォーゲームなんて刺激的だ。わるくねェだろ?」

 

そう言って、カノッチは語り出す。その脳裏に移るのは、自分の幼い日々の記憶。燃え上がる炎、人々の怒号と悲鳴。

 

「俺は、物心ついた時には既に戦争の真っ只中だった。そこがカノッチって男の生きる場所だったのさ。

………だから、平和な世界なんざぁ、死んじまうほどつまんねェのさ。」

 

カノッチの言葉に皆が顔を歪める。どう答えたらいいかわからないって顔だ。平和な現代日本に生まれ育った俺達には到底理解出来ない心境だろう。どこかの誰かが言ってたな。“戦争を知らない子供と、平和を知らない子供では価値観が違う”

 

「ギリギリの命をかけた「ゲーム」に興味があるのさ。カノッチが負けて死んでも悪くねェ!お前さんに勝ってスッキリするのも悪くねェってこった!」

「………よぉするにあれか。単なる戦闘狂かよ。あんた。」

 

「そういうイミじゃお前さん側について、チェスの連中と戦ってたのもわるくねェ話だったなぁ。」

 

イッセーはそれを聞いてポカーンとした顔をした後顔を伏せた。そして、徐々に肩を震わせ笑い出した。

 

「…………ククク……カハハハハハ、カァッハハハハハハハハハ!!!いいねぇ!お前見たいなの嫌いじゃないぜ!」

 

イッセーは一通り笑い、カノッチに向けて指を指す。

 

「なぁカノッチ、俺とひとつ賭けをしないかい?」

 

「賭け?いいねぇ、おもしれェ。俺は何を賭けりゃいい?」

 

イッセーの提案に関心を示すカノッチ。

 

「この戦いで俺が勝って、なおかつお前も生きてたら……お前、俺の下に付きな。」

 

『『『はぁ!!?』』』

 

イッセーの勝手な提案に『龍の紡ぐ絆』メンバーが声を上げる。

 

「……いいのかい?んなこと勝手に決めちまってよぉ?」

 

「かまやしねぇさ。こちとら今まあんにゃろうのワガママに散々付き合わされたんだ。これくらいのことは認めて貰わねぇとな」

 

そう言ってイッセーはこちらに目を向けてニヤリと笑みを浮かべる。……はぁ、しょうがねぇ。皆には俺から言っておいてやろう。

 

「で、どうするよ?乗るか?降りるか?」

 

「………はっ!いいぜ、おもしれェ!やってみな!」

 

「やってやるともさ‼」

 

『Boost!!!』

 

再び『赤龍帝の太陽手』から機械音が鳴り、イッセーのオーラが2倍に脹れ上がる。

 

「こいつが俺の『赤龍帝の太陽手』の()()()効果。10秒ごとに俺の力を倍加する。」

 

「んなぁ!?オイオイマジかい!?」

 

「行くぜ!!!」

 

イッセーは足の裏から炎を吹き出し、ロケットの要領で一気に加速しカノッチの真正面に接近する。

 

「『サラマンダーブレイク』!!!」

 

「グガァッッ!!?」

 

イッセーの炎を纏った旋風脚がカノッチに炸裂する。その威力に、カノッチはついに飲み込んだARMを吐き出した。イッセーは直ぐ様それを掴み、握り潰した。

 

「俺の勝ちだ」

 

イッセーがカノッチに向かってニヤリと笑う。

 

「…………ああ、こんなのも、悪くねェ………」

 

カノッチもまたニヒルに笑い、そして意識を失った。

 

「第四戦!!!勝者、イッセー‼」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆□◆◆□

 

 

3RDバトル最終戦、クロスガードのアルヴィスVSチェスの兵隊【ナイト】ロラン。先制攻撃にアルヴィスの放った“13トーテムポール”は、全てロランに見切られた上でかわされ、反対に爆弾石のブロックを操る“ストーンキューブ”の猛攻を受けていた。

 

「あの男、惚けた言動だが侮れんな」

 

「あらあら、同じARMを使う者として興味深いですわぁ♪」

 

「あれが【ナイト】か。あの強さのやつが後12人……こりゃ一旦編成を考え直す必要があるな。」

 

月に映る映像を見て、竜也達は各々の見解を口にする。アルヴィスはロランの放った“溶岩の蛇(マグマスネーク)”に飲み込まれたかと思うと、蛇の口に“13トーテムポール”を放ち溶岩の蛇の頭を吹き飛ばした。

 

「ほう、食われる直前に蛇の口にトーテムポールを捩じ込んだか」

 

「コンマ1秒の判断や。やっぱ強いでアルちゃんは」

 

「でも…」

 

「ああ、ドロシー。ARMを使い過ぎた。もはやアルヴィスの精神力は限界だ。」

 

映像の中では、アルヴィスはアランに同様の理由でギブアップを薦められ、ロランはだめ押しとばかりにアルヴィスの周りに大量のストーンキューブを出現させる。

 

「ぼ、僕はむやみに人殺しはしたくないのです!ギブアップしてください!……さもなくば、あなたは爆死しま……」

 

「…ハイスピード……13トーテムポール……!!!」

 

「ッ!………!!?」

 

最後の最後、満身創痍の状態で放った最高速度の13トーテムポールは、ロランの頬に確かな傷を負わせた。それを確認したアルヴィスは、ギブアップを宣言する。

 

「今の俺はナイト級にそう遠くはない。通用することを理解した。足りないものは一つ、魔力の持久力。直ぐに追い付いてやるぞ……」

 

アルヴィスは驚愕して固まるロランに向け、笑みを浮かべ宣言する。

 

「アルヴィスのやつ、次の試合を考えて割りきったか」

 

「賢明な判断だ。褒美に帰ってきたらみっちりしごいてやろう♪」

 

「それは褒美とは言わんぞ兄さん……と、その前に……」

 

「ああ、どうやら奴さんもおいでなすったみたいだな」

 

いつか触れた胸糞悪い醜悪な魔力を感じ、俺たちは皆城の一角に目を向ける。

「い、()()()やがった……()()()()()()()()ァーーーっ!!!」

 

その場にいた誰かが()()()を指指して叫ぶ。くすんだ白髪、一見優しげにも見える目付きの奥にはどす黒く濁った瞳が鈍く光る。そして最も特徴的なのが、()()()()()()()()()()()()()()

 

「トム‼ヴェストリのトムじゃねーか‼イエーっ!元気かーっ!?」

 

いつの間に戻って来てたのか、ギンタが呑気な声でやつに手を振っている。

 

「おいギンタ、どこでやつと会ったかは知らないが、あいつはヴェストリのトムなんてやつじゃねぇ。

 

……あいつは……あいつこそが…!前回のウォーゲームでダンナを殺した!チェスの兵隊の司令塔、ファントムだッ!!!」

 

緊迫した空気の中、アランの叫びが城に響いた。

 


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