我が道を行く自由人   作:オカタヌキ

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油断ともう一つの戦い

イッセーと匙が交戦する中、リアスチーム本陣フードコートでは、ギャスパーが分身体の目を通しての情報をリアスに伝えていた。

 

「部長、匙先輩が禁手化してイッセー先輩と交戦中です。禁手は『罪科の黒邪龍王の鎧』。凄まじいまでの呪詛を放っています。」

 

ギャスパーの報告を受けたリアスは顎に手を当て考えるそぶりを見せる。

 

「そうね、この状況からして匙はイッセーに任せるしかなさそうね。

 

「ですね……けど、匙先輩大化けしましたね。これもう存在そのものが強大な呪詛と言っても過言じゃありませんよ?」

 

「はぁ……タツヤもとんでもないのを作ってくれたわね」

 

「ええ、彼は私たちの中でも一番ハードな内容だったらしいので」

 

「「!!!?」」

 

突然聞こえた第三者の声に、リアスとギャスパーは直ぐ様臨戦体制にはいる。

「その声はソーナね!出て来なさい!」

 

リアスは辺りを見回し叫ぶ。しかし、どこにもソーナの姿は見えない。それが一層二人の警戒心を掻き立てる。

 

「『水流拘束(ウォーターロック)』」

 

「ガボッ!?」

 

「っ!!!?ギャスパー!!」

 

突然ギャスパーが水の球体の中に閉じ込められる。分身体を放ちコウモリの姿となった今のギャスパーは本来の力は出せない。さらにコウモリの体では水を掻くことが出来ず、ギャスパーは水の中で悶え苦しむ。

 

「ギャスパー!今助けるわ!」

 

【探索】が使えない現在、ギャスパーは現状を知るための重要なオペレーター。失う訳には行かない。リアスはギャスパーを助けようと走る。

 

「『エアゼロ』」

 

「ガボッ!?ゴボッ!ゴッ…………」

 

すると水の球体にブクブクと大量の気泡が立ち上がる。気泡が収まる直後、ギャスパーは完全に意識を手放した。

 

『リアス・グレモリー様の『僧侶』一名、リタイア。』

 

ギャスパーの姿が消え、 グレイフィアのアナウンスが鳴ると共に水の球はバシャッと弾け、床に水溜まりを作る。

 

「っ!?……水の中の空気を抜いたのね…」

 

「『水流拘束』」

 

「っ!!!?」

 

直後、今度はリアスが水の球体に閉じ込められる。しかし、リアスは直ぐ様消滅の魔力を全身から発して水を消し飛ばす。それは細かく鋭いトゲ状となった消滅の魔力が全身に列なっており、一見イガのように見える。

 

「はぁはぁ……『ルイン・アーマーヘッジホッグ』。同じ手は二度も食わないわ。さあ、出て来なさい!」

 

すると、フードコートに設置されている給水機からゴボゴボと大量の水が溢れ出て来た。それはやがて人の形を成して行き、そしてソーナが現れた。

 

「やれやれ、やはりあなたはそう簡単には落ちませんね、リアス。」

 

「……まさかあなたが単身乗り込んで来るとはね、ソーナ。」

 

リアスは驚きと困惑の混じった顔をする。思慮深い彼女がこのような手に出るとは到底思えなかった。

 

「このような手に出るとは私らしくない。そう言いたそうな顔ですね、リアス。ええ、それこそが狙い。匙たちがあなたの眷属…いえ、仲間の注意を引いている間に私が水になって水道管を通って接近する。一人一人の力が優れたあなた方なら、『王』であるあなたは本陣に控えていると予想していましたよ。」

 

やられた、完全に動きを把握されて逆手にとられた。不意に竜也の言った『決して油断するな』という言葉が頭を過り、リアスは唇を噛み締める。そして、直ぐ様通信機に手をかけるが、刹那高圧で飛ばされた水が頬をかすめ、通信機は破壊される。

「『水流圧線(ウォーターレーザー)』。応援は呼ばせませんよ。異変を感じる人たちもいるでしょうが、すぐに来ることはできないでしょう。みんなが必死に足止めしてくれていますから。」

 

仲間との通信も遮断され、応援も恐らく間に合わない。となると取る手は一つ

 

「ここで決着をつけるしかないようね、ソーナ」

 

リアスは静かに両手を構え、消滅の魔力を発する。

 

「ええ、そうです。あなたはそうするしかない。あなたの消滅の魔力は確かに脅威。ですが『フィールドを破壊してはならない』という規制のせいで、あなたは存分な力を発揮出来ない。対して、私の操る水は衝撃はあれど建造物を破壊するまでもない。」

 

瞬間、フードコート中の給水機や洗面台からから大量の水が溢れだし、ざわざわとリアスの周りを波打つ。

 

「さあ、私の水芸を堪能あれ!『水流舞踏(ウォータープロメネーデ)』!!」

ソーナが腕を振るうと、波打つ水は無数の槍となり、リアスへと一斉に放たれる。

 

(もらった!!)

 

すると、リアス深く息を吸い込み、両手に意識を集中する。イメージするのは、全てを切り裂く鋭い爪。

 

「『クリンゾンネイル』!!!」

 

刹那、リアスの両手は消滅の魔力で覆われる。そしてそれは自身の手よりも一回り大きく鋭い爪の伸びた手を形成するし、リアスはそれを振るい次々と水の槍を切り裂いた。

 

「なっ!!!?」

 

ソーナは思わず声をあげる。完全なウィザードタイプのリアスが近接戦をとったことが想定外だった。

 

「ふふふ、これでお互い様ね、ソーナ。造形魔法に必要なのは柔軟な発想。そして私たちの持ち味は手札の多さよ。これくらいのことはできるわ」

 

リアスはそう言って爪を擦り合わせる。

 

「ごめんなさいソーナ。正直、私はあなたたちのことをどこか見くびっていたわ。タツヤに怒られちゃうわね。……けど、これからはそうは行かないわ。あなたに敬意を評し、全力を持って相手をする!」

 

「……ええ、今こそ決着の時です!!」

 

二人の王が激突する。

 

 


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