銀魂 真選組の新隊員   作:残月

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本当にスミマセン。お待たせしました。


仲間として

 

 

 

刹那はマシンガンを撃っていた乗組員を切った後、ヘリコプターから列車へと再び飛び移った。さりげにテールローターを斬って行ったのでコントロールを失ったヘリコプターは銀時の居た地点へと落下して行ったが刹那はそれどころじゃなかった。

 

 

「伊東!」

「ぐ……ううっ……」

 

 

刹那は伊東に駆け寄り、その身を案じた。伊東は近藤達をその身を挺して守った事でマシンガンの弾を複数箇所に浴びて重傷となっていたのだ。

 

 

「おい、先生!」

「伊東!」

「何をしている……局長、副長……指揮を取るんだ……まだ敵は居る……君達の健在を示せ……隊士達の士気を……高めるんだ……」

 

 

伊東は喋るのも辛い様な状態でありながら近藤と土方に発破を掛ける。その言葉に頷いた近藤と土方は列車の外へと走って行き、刹那は自身の体で伊東が少しでも楽な状態になれる様にと膝を貸していた。

マシンガンの銃弾から庇われた新八、神楽、久兵衛は伊東に歩み寄る。

 

 

「何で……あんな事を……裏切りなんてした貴方が何で、僕らを庇ったりなんかしたんですか」

「……君達は……真選組ではないな。だが、真選組と言葉で言い難い絆で繋がっているようだ。友情とも違う、敵とも違う」

「ただの腐れ縁です」

「刹那の家族だから手助けしたまでネ」

「お妙ちゃんを巡る恋敵だ。が、敵ではない」

 

 

伊東の疑問に新八、神楽、九兵衛が答えた。

 

 

「……ふっくく……そんな形の絆もあるのだな……知らなかった。いや、知ろうとしなかっただけか……人と繋がりたいと願いながら、自ら人との絆を断ち切ってきた。自らのちっぽけな自尊心を守るために、本当に欲しかったものすら見失ってしまった。真選組という漸く見つけた絆でさえ、僕は自ら断ち切ってしまった……」

「……伊東」

 

 

伊東の独白に刹那は伊東の残された手を握る。僅かに力が込められた様には感じたが弱々しい握り返しだった。

 

 

「何故……何故いつだって、気付いた時には遅いんだ。何故、共に戦いたいのに……立ち上がれない。何故、剣を握りたいのに、腕がない。何故、漸く気付いたのに……僕は、死んでいく」

 

 

伊東の言葉に新八、神楽、九兵衛は苦々しい表情になる。なんと声を掛ければ良いのか……慰めの言葉すら今の伊東には酷なものだろう。

 

 

「死にたくない……死ねば一人だ。孤独で……どんな絆でさえ……届かない……この手の温もりですら感じられなくなる……もう……一人は……」

「ソイツを、こちらに渡してもらえるか」

 

 

伊東の懺悔とも後悔ともとれる言葉を聞いていた新八、神楽、九兵衛の背後から、原田が歩み寄ってくる。それに気付いて、伊東の口が止まり原田は伊東の引渡しを要求した。

 

 

「……お願いです。この人はもう……」

「万事屋、それに柳生のお嬢さん……今回はお前等には世話になった。だが、その頼みだけは聞けない。ソイツのために何人が犠牲になったと思っている。裏切り者は俺達で処分しなきゃならねぇ」

 

 

新八の切なる言葉にも原田はピシャリと断ち切った。どちらの言葉が重いのかは明白だ。

 

 

「助けてもらったんです。それにこの人は……近藤さん!?」

「連れて行け」

 

 

新八が伊東の引き渡しを拒み、神楽と九兵衛が咄嗟に庇おうとしたと同時に近藤が命令を下した。近藤は手で新八、神谷、九兵衛を下げさせると原田や残された隊士達が伊東を連行しようとする。刹那は伊東を膝枕をしていたが特に反対する様な動きはなかった。

 

 

「……局長。やはり僕は重罪人の様だ。子供を泣かせ、その背に人の死という重圧を背負わせてしまった。その涙こそが僕の罪の証だ」

 

 

隊士達に連行されながら振り返った伊東。振り返った先には先程まで自身を庇う様に膝枕をしてくれていた少女が涙を流している姿だった。何かに耐える様に自身を震わせながら我慢する姿には痛々しさすら感じられる。

大人達の醜い争いに巻き込んだ挙句、親しい者の死を味合わせた。伊東はここに来て更に自身の罪を自覚してしまったのだ。

 

 

列車の外へと連行された伊東は残された隊士達に囲まれ、土方と相対していた。伊東を薄汚い裏切り者としてではなく仲間として斬る為に。

 

 

「伊東ォォォォォォッ!」

「土方ァァァァァァッ!」

 

 

土方と伊東の姿が交差し……伊東は敗れた。膝から崩れ落ち瞬間、伊東の目には真選組隊士達との絆が見えた。

 

 

「あり……がと……ありがとう……」

 

 

伊東は涙を流しながら仲間達へ感謝の言葉を浮かべた。

伊東が倒れた視線の先で刹那は大粒の涙を流していた。涙と流した血が混じり合い、透明な血の涙を流している様で……銀髪の髪に血で化粧をした様な姿に妖艶な魅力を伊東は刹那に感じてしまった。

 

 

「綺麗だな……刹那ちゃ……ん……」

 

 

不謹慎かも知れないが仲間に囲まれ、最後に笑って逝ける僕は幸せなんだな……伊東は最後にそう思いながら満足そうに瞳を閉じた。

 


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