銀魂 真選組の新隊員   作:残月

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交わした約束

「おまっ……なんで此処に!?」

「屯所に戻ってから土方が居ないのを聞いた。病院には行かないだろうから仕事となれば此処しかないと思ったから……」

 

 

突然現れた刹那に驚く土方を尻目に、刹那は止水を構えながら答えた。

 

 

「そうじゃねぇ!お前に何かあったら……」

「土方は……不器用。一人できたのは沖田の為。何も言わなかったのは近藤の為。ミツバを突き放したのは……ミツバの幸せの為」

 

 

土方の問いに刹那は襲い掛かる攘夷浪士達を斬り払いながら淡々と答えた。

 

 

「私は真選組に拾われてから皆をズッと見てた。だからわかる」

「そうじゃない!俺は……」

 

 

土方が何かを言いかけた、その時だった。山崎から事情を聞いた真選組が、ようやく加勢に来て、攘夷浪士達と斬り合いを始めたのだ。

特に先頭を走る近藤は『刹那に何しやがんだテメーっ!』と親バカ全快で攘夷浪士に斬りかかっていた。

 

 

「私は一人じゃない……土方も一人じゃない」

「お前……」

 

 

刹那も不器用ながら土方にたどたどしく言葉を繋いだ。

土方は回りを巻き込まない様にと周囲を突き放したが、刹那はそんな土方の意思を見た上で山崎や近藤に話を付けてから此処へと来ていたのだから。

 

 

「……蔵場が逃げる」

「ちっ……あの野郎!」

 

 

刹那で指を示した先には、形勢不利と見て車で逃げようとする蔵場が居た。それを見た刹那と土方は同時に走り出した。

刹那は乗ってきたバイクを立たせて走らせると土方は即座に刹那の後ろに座り刀を構えた。

 

 

「刹那……蔵場の車に接触したらお前は離れろ。後は俺が奴を仕留める」

「………ん」

 

 

土方の指示に刹那は頷くと、バイクを加速させて蔵場の乗る車と並走した。その直後、土方は車の屋根に飛び乗り足元に刀を突き刺した。

蛇行する車の先にはコンテナがあり、刹那は危険を感じてバイクを道から逸らせる。

道から逸れたバイクを急いで元の道に戻そうとすると同時に、倉庫街に爆音が鳴り響いた。音が鳴ったのは先程、土方が蔵場の車を追い詰めた方角。

そちらへ振り返ると、蔵場が乗っていた車が真っ二つに斬られていて、そこには土方の他にも、沖田と銀時がいた。

 

 

「沖田……銀時……」

「……おら、オメーにも土産だ」

 

 

ミツバに寄り添って来ないだろうと思っていた人物達が土方を助けに来た事に驚いていた刹那に、銀時はポンとミツバの好きな激辛煎餅を渡した。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

真選組隊士に事後処理を任せて病院に戻った刹那、近藤、土方、沖田、銀時。

しかしミツバは既に臨終の間際だった。彼女の側には沖田がつき、手当てを受けた土方が激辛煎餅を食べてながら街を見下ろしている。

 

 

「辛ぇ……辛ぇよ、チキショー。辛すぎて涙出てきやがった」

 

 

ボリボリと月を見上げながら煎餅を食べる土方。近藤はそんな土方や沖田の事を心配に思いながらベンチに座っており、その隣で刹那も激辛煎餅を食べながらミツバとの会話を思い出していた。

 

 

『ねぇ……刹那ちゃん、少し……お願いしてもいい?』

『…………?』

『刹那ちゃんは皆と一緒に居てあげて。皆、口には出さないかもしれないけど、刹那ちゃんの事を大事にしてるから……私の代わりなんて思わないで。貴女は貴女としてね』

『ん……約束する』

 

 

刹那はこの時に交わした約束を守ったのだ。その“皆”の中にミツバを入れる為に。ミツバの所へ土方、沖田、近藤を向かわせる為に。

 

 

 

「やっぱり……辛い」

「ああ……辛いな」

 

 

 

ポリっと煎餅を噛る音が鳴ると同時に刹那の瞳から涙が頬を伝って流れ、近藤は刹那の頭を撫で続けた。

 

 


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