銀魂 真選組の新隊員   作:残月

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物を食べさせるにしても、やり方は選ばなければヤバい。

 

 

 

 

 

ミツバが倒れた次の日、刹那は病院へと向かっていた。正直、今の真選組屯所の空気は居心地が悪いからだ。

屯所内で土方と沖田が直接の争うことは無いものの、不穏な空気を出し、近藤に訳を聞いても誤魔化されていた。

そんな訳で気晴らしも兼ねて刹那はミツバの見舞いに来ていたのだ。

ミツバの病室へ顔を出すと、そこには銀時が居た。手にはコンビニで買い物でもしたのかビニール袋がある。

 

 

「スゴイ、ホントに依頼すれば何でもやってくれるのね」

「万事屋だからな。オラ、食いすぎんなよ。痔に障るぞ」

「貴方、私が痔で昏倒したと思ってるんですか」

 

 

驚くミツバを尻目に銀時はミツバに激辛煎餅を渡す。銀時の言葉にデリカシーの欠片も感じれなかった。しかしミツバは怒るわけでもなくニコニコと笑みを浮かべながら返答する。お妙とは違った意味で大物だと刹那は感じた。

 

 

「オイ、おめーもどうだ?バナナとかもあるぞ。ほら刹那、食いな」

「もご」

 

 

銀時はバナナの皮を剥くと刹那の口にバナナをねじ込んだ。突然の事態に刹那はされるがままになっている。

大人にバナナを口に突っ込まれる少女。文字にすると、これ程ヤバい事が他にあるだろうか。

 

 

「ちょっ、旦那!刹那にそんな事したら俺が局長と副長に殺されます!」

 

 

その時、ミツバのベッドの下から慌てた様子で山崎が這い出てきた。その姿は忍者の様な格好だが頭は未だにアフロのままだった。

 

 

「あれ、山崎さん?何でこんな所に」

「し、しまったァァァァァァッ!」

 

 

ミツバもまさか自身が寝ていたベッドの下から人が出てくるとは思わず、驚いた様子だ。

 

 

「因みに山崎君……今日の刹那の色は?」

「え……あ……」

 

 

ベッドの下に這いつくばっている山崎が見上げれば銀時にバナナを口に咥えさせられている刹那。更に位置的にはスカートの中身さえも見える位置。

 

 

「青のボーダーです……はぶッ!?」

「そうか、良い事を聞け……そげぶッ!?」

「……咲桜拳」

 

 

銀時に聞かれて思わず、見たままを告げた山崎と見るように指示した銀時に刹那は山崎を踏んづけて、その勢いを乗せたまま華麗に銀時にアッパーを放った。

その後、銀時が山崎を連れて部屋から出ていった。恐らくは山崎から事情を聞くのと、刹那に更にボコられる事を恐れての事だろう。

 

 

「何だったのかしら?」

「駄目人間と監察に向かない駄目忍者」

 

 

ミツバの疑問に刹那は本質を捉えた鋭い意見を口にしながらベッドの近くの椅子に腰かけた。

 

 

「お見舞い、ありがとうね刹那ちゃん。それにしても驚いたわ。真選組に女の子が居て、近藤さんの娘だなんて」

「私は……拾われただけ」

 

 

ミツバが微笑みながら刹那に話しかけるが刹那は自分は拾われただけだと返す。するとミツバはベッドから起き上がって刹那を抱き締めた。

 

 

「ミツバ……?」

「本当に……そっくりなのね。近藤さんみたいに優しくて……十四郎さんみたいに素っ気なくて……そーちゃんみたいに意地っ張り……まるで皆の妹か子供だわ。私にも妹が出来たみたい」

 

 

ミツバは優しく……それでいて力強く刹那を抱き締めていた。

 

 

「皆と……仲良くしてあげてね。私は……私はその先を見れないから……」

「……………ん」

 

 

ミツバは愛しそうに刹那の髪を撫でた。サラサラと刹那の銀髪がミツバの手に流される。

対する刹那もミツバの言葉に頷いているが心中は複雑なものとなっていた。

刹那は十夜からミツバの症状を聞いていた。既に……ミツバの命が長くない事も。刹那はミツバを見舞いに行く前に柳生の屋敷に行っており、昨日のミツバの診察の礼をしに行ったのだが、その際、十夜からミツバの体の事を聞かされた。本来なら部外者の刹那に知らせるべきではないのだが、この事は既に縁者に知らされて時間の問題だからと十夜の口から刹那にその事を告げられたのだ。

 

しかも悲劇は続くもので、刹那は土方の仕事を手伝う傍ら、ミツバの婚約者の転海屋、蔵場の事を知ったのだ。

蔵場の裏の顔は、不逞浪士に武器を売りさばく死の商人という事まで裏付けは済んでいる。

更にその取引が明日の晩だと調べが出ている。それは即ちミツバの婚約者を明日、逮捕する。最悪、斬らねばならないと言う事に他ならない。

その事があって刹那は思い悩まされているのだ。実は土方と沖田のピリピリした空気もそれなのではと刹那は直感的に感じているのだが、それを口にする程、刹那は口が上手くない。

 

 

「ねぇ……刹那ちゃん、少し……お願いしてもいい?」

「…………?」

 

 

ミツバの言葉に顔を上げてミツバを見る刹那。その顔は悩みや苦しみの物ではなく……少し困った事を手助けして欲しいと言う優しげな笑みだった。




『咲桜拳』
ストリートファイターシリーズで、『春日野さくら』が使用する『昇龍拳』に相当する技で、大きく前進した後ジャンプアッパーを放つ。本家のように無敵時間や対空迎撃能力はないが、相手に向かって突進し、多段ヒットしてから上昇するため、連続技用として優れる

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