銀魂 真選組の新隊員 作:残月
刹那は近藤に言いつけられて柳生家に来ていた。先日の騒動以来、刹那は柳生と真選組の橋渡し的な存在となっていたのだ。
「ほう、あの一番隊の隊長に姉上様が居たとは」
「性格は似てなかった。善の沖田と悪の沖田」
「いや、魔人ブウ?」
その話をお茶請けに九兵衛に話した刹那だが説明の仕方が端的で即座にツッコミが入る。
善の沖田(姉)と悪の沖田(弟)と言った所だろうか。
「今は姉弟水入らずで江戸散策か。その姉上様に楽しんで頂けると嬉しいね」
「うん、そうだといい」
十夜はにこやかに告げると刹那もそうであって欲しいと頷いた。
お茶を飲み終えると刹那は席を立つ。近藤から頼まれた事は多く、これからまだ数件行かねばならない所があるのだ。
「刹那、次は安兵衛殿の所だろう?ならば刀磨を頼みたいと伝えておいてくれ」
「……ん」
刹那は九兵衛からの言伝を頼まれ、安兵衛の居る鉄子の鍛冶屋へと向かった。
「久しぶり。鉄子、ダッチ」
「なんで、テメーは毎回ハゲをチョイスして呼びやがるんだ?そして俺は黒人じゃねーからな」
「あはは……いらっしゃい刹那ちゃん」
鉄子の鍛冶屋に来た刹那は安兵衛と挨拶を交わす。安兵衛のツッコミが入るのも最早、一連の流れと化している。
刹那は九兵衛からの言伝を伝えると、先程の柳生家の時と同様に次に向かう場所がある為、鉄子の鍛冶屋を後にした。
次に刹那が向かったのはスナックすまいるだった。刹那が此処に来た目的は、松平や近藤が酒を飲んだ後に時折、支払いをツケにしているので、その度に代金を払いに来ているのだ。
「はい、確かに頂きました。大変ね、刹那ちゃんも。あのゴリラと破壊神の尻拭いだなんて」
「そうでもない。私に出来る仕事は少ないから雑用でも掃除でもなんでもする」
お妙が刹那に同情するが、刹那は首を横に振って否定した。出来る仕事が少ないと刹那は言うが、実はそれこそが間違いであり、刹那は真選組の仕事をほぼ完璧にこなしている。書類仕事が不馴れなだけで、刹那一人で隊士十人分の仕事をしているのだ。今回の雑用も本来は新人などにやらせるのだが、柳生や鉄子と繋がりの深い刹那が最適と近藤が指名したのだ。
最も、ツケを払いに行かせたのは松平の指示であったが。
そして、スナックを後にした刹那は他の雑用仕事も着実に終わらせる。その全てが終わる頃には、辺りは暗くなっていた。
「これで全部終わった。帰ろ」
ペラペラと仕事を纏めた帳簿を確認して、今日の仕事が終わったと一息吐いた刹那が真選組の屯所に帰ろうとしたその時だった。
「刹那!」
「……十夜?」
柳生家御用達の車に乗っていた十夜が叫んで刹那を呼び止めたのだ。
「どうしたの?」
「キミが話してくれた沖田殿の姉上様が倒れたと聞いたんだ。腕利きの医者が必要だと僕が呼ばれたんだけど、刹那はミツバ殿の事は聞いてないのかい!?」
今朝会ったばかりで優しそうだったミツバが倒れたことを聞き、刹那は驚いた。
「私も行く」
「……わかった、乗って。出してください」
刹那が柳生家御用達の車に乗り込むと同時に十夜が指示を出して車を発進させる。
刹那は焦りながらもミツバの無事を祈りつつ、車からの景色を流し見ていた。