銀魂 真選組の新隊員   作:残月

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姉弟は案外似てないようで似ている

 

 

とある日。少々、朝寝坊した刹那は目を擦りながらフラフラと屯所内を歩いていた。着崩れしたパジャマと寝惚けた顔が妙にマッチして可愛らしさを演出していた。

 

 

「おい、刹那。その格好で屯所内を歩くな」

「あ……土方、おはよう」

 

 

寝惚けた刹那を呼び止めたのは土方だった。土方は着崩れたパジャマを直すと頭を一撫で。

 

 

「ったく……普段はシャンとしてるのに朝だけは弱いな」

「うん……まだ眠い」

 

 

刹那は身嗜みを整えた後にさっさっと歩く土方の後ろをついて歩いていた。

屯所内を歩いていたが土方が立ち止まり、障子を開けた。そこには部屋の真ん中に布団を敷いて、人を小馬鹿にした様なアイマスクをつけて眠っている沖田がいた。沖田は何かをブツブツ言っている。寝言でも言っているのかと思った刹那と土方は部屋に入って耳を澄ませた。

 

 

「……土方の死体が4016体……土方のバカの死体が4017体……土方のアンチキショーの死体が4018体……」

「眠れない時に数えるのは羊じゃないの?」

 

 

ブツブツと羊の代わりに危なげな物を数える沖田を、刹那は土方を見上げながら指差した。土方は黙ったまま刀を鞘から引き抜く。

 

 

「土方のクソったれの……」

「羊を数えろォォォォォォォ!」

 

 

土方の怒号で目を覚ました沖田が、体を少し起こす。刹那は土方が刀を抜いた段階で後ろに下がっていた。

 

 

「あり……もう朝か……全然眠れなかったぜチキショー」

「眠れるわけねーだろ!んなグロテスクなモン数えて!刹那は絶対に真似をするなよ!」

 

 

眠たげに頭を掻く沖田に土方のツッコミが入る。ここで刹那に注意する辺り、土方も子育てがある程度身に付いてきていた。

 

 

「すいやせん、わざわざ起こしに来てくれたんですかィ4019号、刹那」

「誰が4019号だ!」

 

 

沖田は気だるげに起き上がるとアイマスクを外す。辺りを見回して刹那を見つけると『よう』と軽く挨拶をして、刹那も声に出さないが静かに頷く。

 

 

「さっさとツラ洗って着替えろ。客だ。刹那、お前も着替えてこい」

「うーい」

「……ん」

 

 

土方は刀を鞘に納めると早々と仕事に出ていった。沖田と共に返事を返すと刹那は着替える為に自室へと戻った。

部屋に戻ってから真撰組の制服に着替えた刹那は髪を縛り上げてポニーテールにすると今日の仕事を聞く為に近藤の下へと向かう。

その道中、客間として使っている部屋を覗く数人の隊士達を見つけて足を止めた。

 

 

「何してるの?」

「わ!?って刹那か……ほら、あれだよ」

 

 

突然、背後から声を掛けられてビビった山崎だが、刹那だとわかってホッとする。そして刹那を部屋の前に座らせると襖の隙間から中を覗かせた。

中では近藤と対面して、一人の女性が座っていた。儚げな雰囲気を纏うこの女性は、とても綺麗な女性という印象を受けた。しかも近藤と話をしながら微笑む姿はとても絵になっていた。

 

 

「……あの人は?」

「あの人は沖田隊長の姉上のミツバさんだよ」

 

 

刹那の疑問に一緒に覗き見をしていた隊士が説明をする。刹那は沖田と部屋の中に居る女性を比べて『似てるかも』と思っていた。

 

 

「しかし、似ても似つかねぇよな。あんなお淑やかで物静かな人が、沖田隊長の姉上様だろ?」

「だからよく言うだろ。兄弟のどっちかがちゃらんぽらんだと、もう片方はしっかりした子になるんだよ。バランスが取れるようになってんの世の中は」

「みんな……言い過……っ!」

 

 

沖田とミツバが似ていない事を話す隊士達に言い過ぎだと言おうとした刹那は突如、床に素早くしゃがんだ。その際にミニスカートだった為、スカートの中からピンクの下着が見えて隊士達はそれに目を奪われ、動きを止めてしまう。そして次の瞬間、隊士達は突如爆発に巻き込まれた。

 

爆発を起こしたのは沖田で、その手にはバズーカが握られていた。沖田は先程の隊士達の会話を聞いており、気配を絶ったまま背後からバズーカを撃ったのだが刹那は直前に察知して、被害を最小限に抑えた。逆に隊士達は刹那の下着に目を奪われた事もあり、そのままバズーカの餌食となっていた。

 

 

「まあ、相変わらず賑やかですね」

「おう、総悟。やっと来たか」

「すいやせん、コイツ片付けたら行きやすんで」

「……駄目」

 

 

先程の爆発を『賑やか』で片付けるミツバもミツバだが近藤は慣れた様子で会話を続ける。隊士達を吹っ飛ばした沖田は、山崎の胸ぐらを掴んで、刀を首筋に突き付ける。それを刹那が止めていた。

 

 

「そーちゃん、ダメよ。お友達に乱暴しちゃ」

「ごめんなさい、ねーちゃん!」

 

 

ミツバに叱られた沖田が、ミツバに土下座していた。

その光景に近藤を除く隊士達全員が目を疑った。ドSの化身の沖田が土下座をするなど、あり得ない光景に他ならなかったからだ。近藤はそれを見て、豪快に笑う。

 

 

「ワハハハハハ!相変わらずミツバ殿には頭が上がらんようだな、総悟」

「お久しぶりでござんす、姉上。遠路遥々、江戸までご足労ご苦労様でした」

「ありがとう、そーちゃん。あら、そちらの娘はどなた?」

 

 

豪快に笑う近藤の隣に座った刹那は普段とは違う沖田に少なからず驚いていた。そしてミツバは近藤の隣に座る刹那を見て驚いた様子だ。

 

 

「ああ、この子は刹那。ちょっと訳有りで俺が保護者になってな。ほら、刹那もミツバ殿に挨拶を」

「………刹那」

「あらあら、まあ。可愛いわ」

 

 

近藤が簡単に刹那の事を紹介すると挨拶を促した。ミツバはペコリと頭を下げる刹那の事を気に入った様だ。

 

 

「総悟、お前今日は休んでいいぞ。せっかく来たんだ。ミツバ殿に江戸の街でも案内してやれ」

「ありがとうございます!行きましょう姉上!」

「あらあら、皆さん。失礼させていただきます」

 

 

沖田は近藤に頭を下げてから、ミツバの手を引く沖田。その表情は普段見る事は出来ないくらいに明るかった。

沖田姉弟が部屋から出ていくのを見送り、隊士達は近藤の方へと振り返る。

 

 

「きょ、局長……なんなんですか……沖田隊長の変わり様は……」

「アイツは幼い頃に両親を亡くして、それからずっとあのミツバ殿が親代わりだったんだ。アイツにとってはお袋みたいなもんなんだよ」

 

 

長い付き合いで沖田姉弟の良き理解者の近藤は刹那の頭を撫でながら沖田姉弟が向かった先を眺めていた。

 

 


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