銀魂 真選組の新隊員 作:残月
食事を済ませた土方と刹那だったが刹那の顔色は悪かった。
変わらずに土方の後ろを歩いているが足取りは重い。
先ほどの土方スペシャルのダメージが後を引いていた。
なんとか土方スペシャルを食べようとした刹那だが半分も食べられず見かねた定食屋の亭主が他の物を刹那に出そうとしたが胃が受け付けない状態になってしまった為に刹那は食事が出来なかったのだ。
「マヨネーズが嫌いだったとはな」
「違う、土方スペシャルは明らかに許容量オーバーのマヨネー……うぷ」
土方は刹那がマヨネーズが苦手だったのかと勘違いしたが、そんな事は無く単純に土方スペシャルのマヨネーズの量に参っていただけである。しかも思い出した刹那は再度、口元に手を這わせた。
「ちっ……これだからガキは大人の味を知らねぇんだ」
「………これが大人の味なら私は大人になりたくない」
土方の言葉に反論する刹那。これが大人の味なら確かにお断りだろう。
「ったく……ん?」
土方はある物を見つける。
「おい、刹那。そこのベンチに座って待ってろ」
「………ん」
土方は刹那に指示を出し、刹那は頷くとベンチに座る。
刹那はベンチに座ると疲れが出たのか少し、俯いた状態になっていた。
「ほらよ、気分が悪くてもコイツなら食えるだろ」
「……土方スペシャルはもういらない」
土方の声に頭を上げた刹那だが土方の持っていた物を見てげんなりとした。
「コレは土方スペシャルじゃなくてソフトクリームだ。ったく、アイスも知らなかったのか」
若干悪態を付きながら刹那にソフトクリームを渡す土方。先ほどソフトクリーム屋を見つけた土方は土方スペシャルの詫びとは言わないが子供ならアイスが好きだろうと買ってきたのだ。
しかし見た目で刹那はソレを別の種類の土方スペシャルと勘違いした様だが単にソフトクリームを知らなかっただけの様だ。
「冷たい……それに美味しい」
「ま、そりゃアイスだからな」
ソフトクリームを舌で舐めて美味しさを確かめる刹那に隣に座りタバコを吸い始める土方。
その姿は休日に買い物に来た親子そのものだった。
ソフトクリームを食べ終えた刹那は土方と共に警邏の仕事を続けた。
とは言っても実際は土方が刹那に道や建物を教えているだけの物だが刹那は無表情のまま、それらを覚えていった。
そして時刻は夕方となり日が傾き始めていた。
「今日はこんな所か帰るぞ刹那……刹那?」
土方は刹那に話し掛けるが刹那からの返事は無く、ポフッと土方の背に刹那の顔が埋められる。
土方が振り返れば其処には眠そうに半眼を擦る刹那の姿。
「ったく、手の掛かるガキだ」
土方はそう言うとしゃがみ込み、刹那を背負って立ち上がる。
「……土方?」
「いいから寝てろ、屯所に着いたら叩き起こすからな」
土方の行動に驚いた様子の刹那。土方はいいから寝てろと刹那に促す。
「………ん」
刹那はキョトンとした顔になったが言われた通りに寝る事にした。土方の背に体を預けると直ぐにスースーと寝息を発する。
「ったく……だからガキのお守りなんざ嫌なんだ」
土方は刹那をおんぶしながら夕日を背に真選組屯所までの道を歩いた。
その表情は不器用ながらにも笑みを浮かべていたと言う。