銀魂 真選組の新隊員   作:残月

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将軍様ゲームはぶっちゃけ王様ゲーム

 

 

 

銀時、新八は女性陣が将軍に粗相をしでかさない様に緊張していた。刹那は銀時からフォローを入れるのは無理と判断されて、なるべく普段通りに振る舞う様にと言われていた。

それからしばらく酒を飲んだりしながら談笑していたが松平が割り箸を取り出して皆の前に差し出した。

 

 

「酔いも回ってきたし……そんじゃそろそろ、将軍様ゲームを始めるよぃ!」

「……将軍様ゲーム?」

 

 

松平の提案した『将軍様ゲーム』を知らない刹那は小首を傾げた。

①『将軍』と書いたクジを用意する。割り箸等でも可。

②クジを皆で引く

③将軍様を引き当てた人は将軍になり、番号を指定して様々命令を下すことが出来る。

④命令拒否は原則として出来ない。

 

このルール説明を聞いた刹那は『将軍様既にいるんだけど?』と若干意味を理解していなかった。その後、刹那にルールを理解してもらう様に説明した後にゲームは開始された。

 

普段なら率先して楽しむ松平だが今回は進行役を勤めると言い出したので松平抜きでやる事となった。

 

 

「さぁ、皆クジを引……ぶるぁっ!」

 

 

松平がクジを引くよう促すと、お妙、神楽、九兵衛、あやめが一斉にクジに飛びつき、松平を蹴り飛ばした。

客を楽しませるどころか、自分達が一番楽しむ事態となり、場はめちゃくちゃとなってしまった。

 

 

「あ、私……将軍」

 

 

ぶっ飛ばされた松平を真っ先に介抱しに向かった刹那だがその手には『将軍様』と書かれたクジが握られていた。

一斉に視線を向けられてオロオロとする刹那に、お妙が助け船を出した。

 

 

「刹那ちゃん、なんでも良いのよ?例えば……肩揉みとか」

「じゃあ……三番が一番に肩揉み」

 

 

お妙の助け船に刹那が将軍として皆に命令を下した。最初は軽めの命令だから安心した。と思ったのも束の間だった。茂茂は神楽に肩揉みを始めたのだ。

その光景を見た銀時と新八は劇画タッチの表情で『将軍かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』と心の中で叫んだ。

依りにもよって将軍が肩揉みさせられる光景を見る事となった銀時と新八は冷や汗が止まらなかった。

 

 

「弱いアル。もっと力入れろヨ」

「……ああ、すまない」

 

 

茂茂の肩揉みの力が弱い事に神楽は不満を口にして、『将軍にダメ出ししてんじゃねーよ!』と銀時は心の中で叫ぶが神楽には当然伝わらない。

 

これ以上の粗相は不味いと新八はクジを持って、当たりである『将軍様』を引かせようとするが、その前にお妙達は一瞬の内にクジを引いてしまう。あまりにも素早い動きからバトル漫画の様になってしまったが、これはあくまでもゲームである。

新八は自身の策が失敗したと嘆いたがそこにフォローを入れたのは銀時だった。その手には『将軍様』のクジが握られていた。銀時は女性陣よりも早く新八からクジを引いていたのだ。

 

 

「えーとじゃあ……四番引いた人下着姿になってもらえます?」

 

 

銀時が下した命令は被害が出るのは四番のクジを引いた者のみで残りの人は下着姿の人を笑う事が出来る。つまり視覚的に茂茂を楽しませようと言う気なのだろう。しかしそれも不発に終わった。下着姿になったのは茂茂だったのだ。

 

 

「なに、なんで当たり引いちゃうの将軍様?」

「しかもブリーフの日だよ。間が悪いにも程があるよ、もっさりしてるよ」

「将軍家は毎日もっさりブリーフ派だ」

 

 

新八と銀時のヒソヒソ話も聞こえる何気に耳も良い茂茂は律儀にも自身の……と言うか将軍家の秘密を暴露した。

これ以上の展開は打ち首になりかねないと銀時は冷々していたのだがゲームは続く。そんな中、『将軍様』を引いたのは、お妙だった。新八が心配そうにお妙に視線を送るがお妙は任せなさいとウインクを銀時達に向ける。

 

 

「んーと、どうしよっかな。じゃあ私は三番の人がこの場で一番寒そうな人に服を貸してあげる」

 

 

そうキャバ嬢と言う仕事をしてる以上、人の気持ちに少なからず敏感なお妙は冷々している銀時達の気持ちを読んで、茂茂に服を着さそうとしたのだ。感激した新八だがその目論みは即座に潰えた。

茂茂は履いていたブリーフをさっちゃんの頭に被せたのだ。それを見た銀時と新八は『将軍かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』と本日三度の叫びを上げた。

 

 

「なんで律儀に当たりを引き続けてるの将軍様?しかもアッチの方は将軍じゃねーよ、足軽だよ」

「将軍家はアッチの方は代々足軽だ」

 

 

銀時の聞こえない位の呟きにも反応して答えた茂茂。状況は最悪の一途を辿っていた。

 

 

「パチ恵、刹那。裸なのは最早、諦めよう。見た通り失うもんはもう何もねぇ、これ以下はねーんだ、後は上がっていくだけだ」

 

 

今の状況なら、もうこれ以上の悪い事は起きないだろうと指摘した銀時だが、さっちゃんの次の行動で脆くも崩れ落ちた。

 

 

「ちょっと、これ臭いから脱いでいいかしら?」

「下あったよ!」

「ちょっと、涙目になってきてますよ将軍様!?」

「後で近藤達に怒られそう……」

 

 

さっちゃん、銀時、新八、刹那の順でコメントを溢す。喧嘩を売ると言うか、最早ただのイジメになってきていた。そんな中、刹那はこの状況を後程、近藤や土方にどう話せば良いのかと思い始めていた。

しかし、こんな状況でもゲームは続いていた。そして当たりを引いたさっちゃんはガッツポーズの後に目を血走らせて叫ぶ。

 

 

「ついに私の時代が来たわ、私の願いは一つ!銀さんと……」

「せめて番号で言え!」

 

 

ルールを丸ごと無視しようとした、さっちゃんの頭にお妙だったの踵落としを決めた。その見事な踵落としに刹那はパチパチと小さな拍手を送った。

 

 

「わかってるわよ……ゴホン、五番の人は、トランクスを買ってきなさい」

 

 

お妙の過激なツッコミを食らった、さっちゃんだったが咳払いをすると命令を下す。それは裸一貫となった茂茂の為を思っての行動だったが、それは最早前フリでしかない。誰が当たったかを問う前に席を立ったのは、茂茂だった。

『やっぱり将軍かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』

銀時と新八はこの流れは止まらないと思っていたのか本日四度の叫びとなった。周囲が止めようと声を掛けようとしたが茂茂はそのまま店を出てしまう。

 

 

「ヤベェ、エライ事になってきた!つかバカじゃねーの、あの将軍!なんで律儀にゲームのルール守ってんだよ。社会のルール破ってでまでゲームのルール守るなよ!」

「言ってる場合ですか止めないと!」

 

 

銀時と新八は即座に行動を起こして茂茂を引き止めに行くが間に合わず茂茂は外に出てしまう。当然の事ながら外は真選組が警護をしている為に見つかり騒然となる。その隙を縫って茂茂は走り去ってしまい、それに続くように刹那や銀時達も後を追う。

 

 

「貴様等、上様に何をした!?総員に告ぐ、上様を追えぇぇぇっ!」

 

 

事態を見た近藤の叫びのもと、真選組が戦車やパトカーで茂茂の追跡を開始。端から見れば裸の将軍がキャバやパトカーに追われているなど明日の朝刊の一面を飾る様な出来事である。

そんな中、走り続けながら神楽が将軍にくじを引くよう促す。新八はそれどころじゃないだろうとツッコミを入れるが茂茂はクジを引いた。そのクジを茂茂が見つめると『将軍様』と書いてあった。

 

 

「将軍様、我等になんなりとご命令を」

 

 

神楽がニカッと笑い、共に走る銀時達も笑っていた。神楽野手の中には『将軍様』と書かれたクジが数本。その意味を察した茂茂はニヒルに笑うと命令を下した。

 

 

「余の代わりに誰かトランクスを買ってきてくれぬか?この姿ではコンビニには入れん。そして刹那、お主は近藤か松平に事の顛末を話してきてくれ『只の戯れ』だったとな。それ以外は、アレを止めてくれ」

「仰せのままに!」

 

 

茂茂の命令により、九兵衛は茂茂と共に走り、銀時達は進行方向から逆走を始め、ノリノリで真選組に襲いかかる。刹那は茂茂の命令もあるので一目散に近藤の元へと向かった。

 

 

「将軍様のご命令により、今からアンタ等を食い止めまーす!覚悟しろやコラァ!!」

 

 

銀時達は真選組を相手に乱闘をおっぱじめた。不意を突かれたのとキャバ嬢に襲われる等想像もしていなかった真選組は一方的に攻撃され、夜のかぶき町に悲鳴と破壊音が鳴り響いた。

 

 

そして刹那は近藤に今回の事の経緯を話していた。話を聞く内に近藤は青ざめたり驚愕したりと忙しく表情を変えていた。茂茂は『只の戯れ』と言ったが近藤からしてみれば戯れでは済まないレベルの話である。

 

 

「ま……まあ、なんだ。刹那は社会勉強になったか?」

「うん……知らなかっ……くちゅん!」

 

 

近藤が現実逃避しかけた質問に答えようとした刹那だが、可愛いクシャミが出てしまう。いくら夏場とは言っても刹那の今の姿はバニーガールなので少し冷えてしまった様だ。

 

 

「まったく………そんな格好で外に出るからだ」

「………あ」

 

 

近藤は溜め息と共に着ていた上着を脱いで刹那に着させた。先ほどまで近藤が着ていた事もあり今の刹那には、ありがたい暖かさだった。

対して近藤はK.O.寸前だった。善意で刹那に上着を着せたが今の刹那はバニーガールの姿をしていた。それに近藤の上着を着せれば『裸ワイシャツ+ストッキング』の様に見える。しかも刹那では近藤の上着は当然大きい為に裾が余って『萌え袖』状態となっていたのだ。しかも刹那は気付かずに近藤を見上げる様な状態となっている。

このトリプルパンチに近藤は精神的にフラフラになっていたのだ。

 

 

「ん、んんぅ。さて、上様が心配だ。行くぞ刹那」

「……うん」

 

 

差し出された近藤の手を迷いなく繋ぐ刹那。少々不格好ではあるものの、それは親子の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに茂茂の様子を見に来た近藤と刹那だったが、其処で目撃したのは九兵衛によって堀に投げ飛ばされてしまう茂茂の姿だった。話を聞けばトランクスを買った九兵衛だが受けとる際に茂茂の手が九兵衛の手と触れてしまった為に反射的に投げ飛ばしてしまったらしい。


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