銀魂 真選組の新隊員   作:残月

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初めての将軍様

 

 

 

入り口へ客を迎えに行こうとすると、店内に松平とその後ろに、何故か真選組の面々がついてきていた。

そして刹那の姿を確認した近藤と土方は真っ先に刹那に駆け寄る。

 

 

「刹那、何でこんな所に……ってかその格好……」

「……見ないで」

 

 

刹那は近藤と土方を若干睨みつつも胸元を隠して一歩下がる。その間を察してか、お妙が間に入った。

 

 

「近藤さん、土方さん。申し訳無いんですが刹那ちゃんにお店の手伝いをお願いしてるんです」

「あ、いや……しかし……」

 

 

サッと頭を下げたお妙に近藤は言葉を失ってしまう。事情は知らないが、それでも刹那にキャバ嬢をさせるのには抵抗があると思った近藤は否定をしようと思ったがそこで邪魔が入った。

 

 

「オイオイ、刹那。随分とセクシーじゃあないの。オジさん年甲斐もなくドキドキしちゃうじゃあないの」

「ひゃう!」

 

 

いつの間にか刹那の背後に回った松平が刹那の背中を指でススッとなぞった。突然の事に刹那は顔を赤らめて背筋を伸ばしてしまう。

 

 

「んんぅ……それに良い尻だぁ……ってアタタタタタッ!?」

「もう松平様ったら刹那ちゃんにもセクハラですか?」

 

 

ワキワキと指を動かしながら刹那のお尻に手を触れようとした松平だが、お妙がそれを阻止した。しかもお妙はニコニコと笑ってはいるが松平の掴んだ腕を万力の如く締め上げている。その握力に松平は悲鳴を上げる事しか出来なかった。

 

 

「近藤さん、刹那ちゃんは私が見てますし、こんなセクハラ二度とさせませんから、お願いします」

「あ、ああ……わかりました。刹那を頼みます」

 

 

有無を言わせぬオーラを纏ったお妙に近藤は何も言えなくなった。

その間も沖田がさっちゃんと何やらSM談義をしていた様だがそこは割愛。

 

 

「ま、俺達は飲みに来たんじゃねーからよ。刹那は頼むわ」

「……ん」

 

 

土方は松平な魔手から逃れた刹那を庇っていたが刹那をお妙に任せて店の外へ出ようとする。それに続いて他の真選組隊士も店の外へゾロゾロと出ていく

 

 

「オイなんだよ、遠慮すんなって。お前らも飲んでけ」

「いや、そーもいかねぇ」

 

 

お妙の怪力から解放された松平が出ていこうとする近藤達を引き留めようとしたが土方が断った。

出て行く真選組の面々とは対照的に、中へ進んで者が居た。豪華な着物にキリッとしながらも気品溢れる顔立ち。真選組の面々はすれ違い様にその人物に敬礼をしていく。そして最後に店を出ていこうとした沖田がその人物に頭を下げて口を開いた。

 

 

「それじゃー俺達は外の警備をしてますんで、ゆっくり飲んでいってくだせぇ上様」

 

 

その人物は『上様』と呼ばれ、真選組が敬意を払う人物。それ即ち……銀時は嫌な予感がしつつも、お妙達に話しかける

 

 

「な、なあ今、上様って」

「何バカな事、言ってんですか。なんで将軍様がこんなスナックに来ると思うんですか」

 

とお妙

 

「いや、でも」

「領収書なんて大抵が上様ネ」

 

と神楽

 

「いや……」

「上杉さんとかと聞き間違えたんじゃないか?」

 

と九兵衛

 

「でも……」

「ふごふご……」

 

とさっちゃん

 

「刹那……」

「本物かどうかはわからない……でも近藤達は今日、大変な仕事があるって言ってた」

 

 

今、彼処にいるのは本物の将軍なのだろうか。そんな思いと共に銀時達はテーブル席に向かう松平達の方に視線を移した。

 

 

「おーい将ちゃん、こっちこっち!」

「ほ、ほら……将ちゃんとか呼ばれてるからやっぱり違うんですよ」

 

 

松平に『将ちゃん』と呼ばれているからやはり、将軍様ではないと新八が冷や汗を流しながら言う。

将ちゃんの隣にお妙が座り酒を酌しながら、お妙はにこやかに話しかけた。

 

 

「カワイイあだ名ですわ、将ちゃんて。でも本名の方も教えて下さいな」

「征夷大将軍徳川茂茂。将軍だから、将ちゃんでいい」

「ヤダ〜もう、ご冗談がお上手な方ですね。お仕事は何をなさっているんですか?」

「だから征夷大将軍だ」

「もォ〜てんどんですか。ホント面白いお方ですね」

 

 

談笑するお妙を遠目から見ていた銀時と新八が、完全に固まっていた。刹那は同じく遠目で見ているだけだが、その人物が国の最重要人物だという事にピンときていないようである。

 

 

「いやいやいや、まさかでしょ?ほら外のゴリラ達にも聞いてみよう?」

 

 

銀時は先程の会話を聞かなかった事にして外に居る近藤達の下へ向かう。そして店の入り口を少し開けて様子を伺うと近藤と土方の声が聞こえてきた。

 

 

「まさか刹那が居るとはな……将軍様のお出掛けの日に居るとは予想外だった」

「この店に居るなら最初から刹那を警備に混ぜてもよかったんじゃないか?いずれは真選組として刹那も将軍様に会わせなければならなかったんだがファーストコンタクトがバニーガールってどうよ?」

 

 

予想外の出来事に頭を悩ませる近藤とフゥーとタバコの煙を吐く土方。

 

 

「ま、バニーガールでの初対面は兎も角、警護と言う意味では刹那が中に居るのはありがたい。奴が居れば大概の奴は撃退できんだろ」

「しかし刹那も女の子だ。中にはお妙さんも居るし……俺も中の警護に回る!」

「アンタは刹那やお妙さんと酒飲みたいだけだろ。行かせるか!」

 

 

土方が刹那が店の中に居る事は却って警護になると言った土方。それに対して近藤は不安だと店の中に入ろうとして居るが酒を飲みたいだけなのは明らかだ。土方はツッコミを入れつつも近藤を止める。

 

 

その会話を聞いていた銀時達は静かに扉を閉めると頭を抱えた。

 

 

 

「本物だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!本物の征夷大将軍様ですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

「落ち着け新八!落ち着いて……そうだサイン貰おう。このマットでいいかな!?」

「アンタが落ち着け!将軍の前にこんなマットを持っていこうとするな!」

 

 

頭を抱えて絶叫した新八。銀時はパニックのあまりに先程、東城が持っていたヌルヌルのマットを持っていこうとするが新八に止められた。

 

 

「……どうするんだろ」

 

 

本物の将軍だと全く気づく様子がない、お妙達に本物の将軍だと気付いてパニックになる銀時達。

この状態ではマトモなおもてなしは無理なのではと思う刹那は他人事の様にオツマミ用の野菜スティックの人参をポリポリと食べていた。


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