銀魂 真選組の新隊員 作:残月
柳生家騒動から暫くした後、刹那は鉄子の鍛冶屋に顔を出していた。
安兵衛も来ており、二人は並んで正座をして刹那を出迎える。
「刹那、待ってたよ」
「今日は重大な話がある」
鉄子と安兵衛は真面目な顔つきで刹那に話しかける。空気を察したのか刹那は二人と向かい合う様に座った。
「わかった……式はいつ?」
「ぶふぅ!?」
刹那の言葉に安兵衛は盛大に吹き出した。
「ちょっと刹那、何を!?」
「?……重大な話って言って二人並んでたから」
慌てる鉄子に刹那は小首を傾げる。
「ち、違う……違うから!」
「松平もこの間の一件で見合いがダメになったからたぶん乗り気で……」
「その話は後にしろ!その話も重要な話だが、今日の重要な話はこっちだ!」
顔を赤くする鉄子に刹那は話を捲り立てるが安兵衛が何かを取り出して話を中断した。
「これ……刀?」
「そうだよ。刹那に頼まれてた……魂の刀」
刹那が安兵衛の持ってきた刀を指差すと鉄子が刹那の肩に手を置いて説明する。
「ほら、持ってみな」
「ん」
カチャリと音を立て刹那に刀を手渡す安兵衛。刀を受け取った刹那は刀を引き抜いた。
「………凄い……綺麗。それに手に馴染む感じがする」
刹那の手に納められた刀は銀色に輝いていた。
「その刀にも名を付けたんだ。名は『止水』」
「……止水?」
「明鏡止水とか……犯罪と言う水を止めるって意味で『止水』だ」
刀に付けた名の由来を話す鉄子と安兵衛。
「大事にする……あ、そうだお金」
「おっとお代は結構だ」
財布を取り出そうとする刹那を安兵衛が止めた。
「お金よりもね、刹那に止水を打ってあげる事が出来たのが私達は嬉しかったの。だからお代は受け取れない」
「…………わかった。じゃあ鉄子と安兵衛の結婚式を盛大な形でする事で借りは返す」
「まだ言うかテメェ……」
刹那に微笑む鉄子。刹那は止水の代金は二人の結婚式で返すと言うが話をぶり返した刹那に安兵衛はグリグリと頭を撫でた。
「ともあれ、その刀を有意義に使ってくれや。それが何よりもの代金にならぁ」
「ん、わかった」
「またいつでもおいで」
鉄子と安兵衛に見送られて刹那は鍛冶屋を後にした。小柄な刹那に長刀の止水は大きく、ミスマッチな取り合わせに二人は笑みを溢した。
「良かったな……刹那に止水を渡す事ができてよ」
「うん……兄者との約束もこれで果たせた」
安兵衛は鉄子の肩を抱き、鉄子は安兵衛に抱かれた心地好さに微笑んだ。
「ねぇ……安兵衛さん」
「ん、どうした?」
鉄子は安兵衛を見上げ、安兵衛は鉄子の仕草にドキッとする。
「さっき刹那が結婚式の話を出した時に安兵衛さんは『その話は後にしろ』って言ってたけど……」
「あ、いや……それはだな……」
安兵衛は鉄子の肩から手を離して狼狽する。
「……冗談ですよ」
「お、おう……」
鉄子は少し残念そうな顔をした後に鍛冶屋に先に戻ってしまう。それを見送った後に安兵衛は自信のへたれ具合を呪うのだった。
いざと言うときにへたれる。それが安兵衛。