銀魂 真選組の新隊員 作:残月
刹那や真選組、万事屋が柳生家に戦いを挑んだ頃、お妙にも動きがあった。
嫁入りとして花嫁修業をしていたお妙だが其処に柳生家当主『柳生輿矩』の発言から新八達が自分の為に柳生家にケンカを売りに来た事を知った故、花嫁修業から脱走して新八達を捜すべく走り出していた。その際にお妙は輿矩の顔面を足蹴にしてK.O.した。
そして一方で刹那と新八は柳生家の屋敷内を走り回っていた。時折、柳生家の門弟が襲い掛かってきていたが刹那が秒殺で片を付けていた。
「姉上が居ない……何処に居るんだ?」
「これだけの騒ぎになってるからお妙にも話は伝わってる筈。兎に角、走り回るしか無いと思う」
お妙が中々、見付けられない事に心配を露わにする新八だが刹那が静かに諭した。その時だった。
「新ちゃん、刹那ちゃん!?」
「姉上!?」
「あ、居た」
柳生家の廊下からお妙が女中に追い掛けられながら走ってきたのだ。それを見た新八と刹那は即座にお妙に合流した。
「姉上!」
「二人とも……なんで……」
「話は後、来た」
合流すると新八はお妙の手を引いて走り、お妙は何故此処に来たのかと問おうかとしたが刹那に止められる。三人の走る進行上に先程、お妙がK.O.した筈の輿矩が部下を引き連れて現れたのだ。
「逃がさんぞ、お妙ちゃん!小僧共、柳生家にケンカを売りに来るとは覚悟は出来てるんだろうな!」
輿矩は怒りを露わにして叫ぶ。背が小さく、威厳の無さそうな風貌だがこうして怒る姿は柳生家の当主としての貫禄を出していた。しかも輿矩だけではなく、柳生家の門弟もセットで木刀を構えているだけに絶体絶命な状況である。
「新八、お妙。回り道をして」
「え、刹那ちゃん!?」
その状況を見た刹那は木刀を振りかぶると勢い良く、輿矩の一団に投げつけた。凄まじい勢いで飛来する木刀の直撃を受けた先頭の門弟が倒れたと同時に刹那は既に間合いを詰めており、走る勢いをそのままに浴びせ蹴りの良いに飛び上がると両足で踵落としを放った。これにより門弟二人を沈めると素早く立ち上がり先程投げた木刀を拾い上げて一閃し、更に二人を倒してしまった。
「こ、こいつ強いぞ!」
「一瞬で五人も倒しやがった!?」
残った門弟が叫ぶ。それはそうだろう年端もいかぬ少女が瞬く間に柳生家の門弟を五人も倒したのだから。
「新八、お妙を連れて先に行って。片付けたら私も後を追う」
「………刹那ちゃん」
刹那は振り返らずに新八にそう語る。新八には刹那の背が早く行けと急かしている様に見えた。
「行きますよ姉上!」
「あ、ちょっと、新ちゃん!?」
新八は意を決するとお妙の手を握り、柳生家の屋敷の中へと逃げていった。
「逃がすか、追え!」
「「はい!」」
新八とお妙が逃げたことに輿矩は慌てて門弟に後を追う様に叫び、門弟は輿矩の命を受けて屋敷の中へ入っていった。
「残念だったな。キミは此処で終わりだ」
「皿……じゃあアナタが柳生家の当主?」
輿矩は皿をハチマキで頭に巻く。その仕草に刹那は輿矩が先程、九兵衛の言っていた柳生家の当主だと分かった。
「まったく天下の柳生家を滅茶苦茶にしてくれたね。柳生家は将軍家お抱えだよ?」
「その辺りは関係ない。私は私で仕事の為にも来ている」
輿矩は柳生家の格式を自慢するが刹那には意味が無かった。刹那の言葉通り、刹那は真選組として来ているので実際、柳生家かどうかは二の次である。
対して輿矩は道場破りに来ていた者に門下を倒された上に真選組を倒さない事には九兵衛の逮捕状も取り消せないと言う事から柳生家の威信を賭けた闘いにもなっていた。
刹那は会話を打ち切ると木刀を水平に振るい、輿矩の胴を狙うが輿矩は刹那の木刀を自身の木刀で受け止めると鍔迫り合いに持ち込む。更に鍔迫り合いを力業ではね除けると刹那に対して鋭い突きを放つ。
刹那はそれをバク転で回避すると輿矩との距離を取った。
距離を空けた刹那と輿矩だが輿矩は木刀の先を刹那に伸ばす。
「セレブな柳生家は私が守る!」
「セレブ……ウルトラマンに化けて悪い事してた人?」
輿矩の言葉に刹那は小首を傾げた。
「それはセレブじゃなくてザラブだろうが!」
刹那のボケに輿矩は律儀にツッコミを入れた後に刹那に襲い掛かった。