銀魂 真選組の新隊員   作:残月

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医者として、警察として

 

 

 

真選組の屯所から柳生家の道場へと来た刹那。本日の服装は長袖のシャツにホットパンツにニーソックスと動きやすい服装で髪は三つ編みにしていた。刀は鞄に入れて肩から下げている。

道場の門を叩くと中から柳生の門下が現れる。

 

 

「なんだ嬢ちゃん?」

「此処は柳生家の道場だよ、お嬢ちゃんみたいな娘が来る場所じゃ無いんだかな」

 

 

柳生の門下は刹那を道場への入門希望者と勘違いしている様だ。

 

 

「違う、私は此処に用があってきた」

「お嬢ちゃんみたいな娘が柳生の道場に何の用なんだい?」

 

 

刹那の言葉に小馬鹿にした様な態度の門下に刹那は少しイラッと来て刀に手を掛けようとするが門下の後ろから声が掛かる。

 

 

「おや、お嬢さん。怪我の具合はどうですか?」

「あ………」

 

 

門下の後ろから現れたのは以前、刹那の手を治療した医者だった。

 

 

「この娘は僕の患者なんですよ。通して大丈夫ですよ」

「せ、先生がそう言うなら……」

 

 

青年が柔やかにそう告げると門下は行ってしまう。

 

 

「あ、アナタ……」

「さ、まずは怪我を看ましょうか」

 

 

青年はそう言うと刹那の手を引いて、中に招き入れる。

 

 

「待って、私は……」

「キミの用事も窺いますよ。でも先に手を診せて下さいね」

 

 

青年は刹那を部屋に案内すると手の診察に入る。

 

 

「ふむ、もう治ってきてるね。でもまだ激しい運動や重い物を持つと傷が開いてしまうかもしれないよ」

「気にしない」

 

 

刹那はプイッと顔を逸らす。

 

 

「やれやれ、それでキミは何をしに柳生家に?」

「その『キミ』も止めて。私の名前は刹那」

 

 

何をしに来たかを問う青年に刹那は少し不満げに話す。

 

 

「それは失礼。でも僕は刹那の名前を知らなかったから。じゃあ僕も名乗るよ。僕の名は『柳生十夜』柳生家の者だよ」

「柳生家の?」

 

 

青年、十夜は刹那の左手の包帯をテキパキと変えながら答える。

 

 

「うん、と言っても僕は分家なんだけどね。それに生まれつき身体が弱くてね。とても侍には成れないんだ」

「だから医者?」

 

 

十夜の言葉に疑問を重ねる刹那。十夜はコクリと頷くと包帯を綺麗に巻き終える。

 

 

「うん、それに医者なら柳生家当主も支えてあげられるからね」

「私はその柳生家次期当主に用があってきた」

 

 

刹那の疑問に答えた十夜だが刹那の要件は柳生家次期当主、つまり九兵衛にあったらしい。

 

 

「九兵衛に用事?どんな?」

「………コレ」

 

 

十夜の問いに刹那は1枚の紙を渡す。それを見た十夜は固まった。

 

 

「ああ……この話は聞いてるよ。参ったな……」

「私が柳生家に来た用は二つ。一つはソレ、もう一つはお妙に会いに来た」

 

 

片手で顔を隠し、あちゃーと言う仕草を見せる十夜に刹那は畳み掛ける様に告げる。

 

 

「お妙ちゃんにも……か。複雑な事情みたいだね」

「それ程複雑でもない。ただ聞きたいだけ。好きでも無い相手と結婚する気持ちを」

 

  

お妙の事を知っている風な十夜に刹那は首を横に振って否定する。

 

 

「どうして……そう思ったんだい?」

「周りの人から話を聞いて、そんな気がした。それに……お妙は泣いてたって。どんな事情があるにしても悲しい涙を流して嫁ぐなんて良くないって聞いた。だから聞きたい、悲しい涙を流して結婚する気持ちを」

 

 

十夜の質問に刹那は思っていることを口にする。刹那は直接、お妙の涙を見た訳では無いが近藤から話を聞いた様だ。

 

 

「刹那は人を見ている様だね……」

「何か、知ってるの?」

 

 

何処か納得のした様な表情になった十夜に刹那は疑問を感じた。

 

 

「ああ、僕は九兵衛とは従兄妹に当たるし、お妙ちゃんとも幼馴染みだからね。僕が知ってる成りの事情を話すよ。実はね……」

「せ、せんせー!大変だーっ!」

 

 

十夜が刹那に何かを話そうとした際に先程の門下が走ってきた。

 

 

「どうしたんだい?」

「今、道場破りが来て怪我人が続出してるんだ!先生も来てくれ!」

 

 

門下から話を聞いた十夜は手早く医療道具を掴むと走り出す。その後ろを刹那が付いてきていた。

 

 

「刹那?キミは待っていてくれても」

「手伝う」

 

 

刹那は十夜を手伝うと告げる。

 

 

「刹那、キミは……」

「勘違いしないで。早く話を聞きたいだけ」

 

 

刹那は先程、十夜に渡した紙を素早く畳むと懐にしまう。

そして現場に到着した十夜と刹那は唖然とする。柳生道場の門下が大量に倒れていたのだ。

 

 

「これは酷いね」

「なんか私怨を感じる怪我の仕方」

 

 

十夜は素早く治療に取り掛かり、刹那はそれを手伝う。

そして粗方の怪我人を治療した後に下手人を見つけた。それはよく知った顔だった。

 

 

「皆、何してるの?」

「いっ!?刹那、お前こそこんな所で何を!?」

 

 

刹那が声を掛けると全員が驚いていた。なんと道場破りは近藤、土方、沖田、銀時、新八、神楽だったのだ。

 

 

「私はお妙と柳生家次期当主に用事があったから来た」

「ほう、僕に用事か」

 

 

近藤達の前に立つ、集団の中から眼帯をした少年が前に出る。彼が柳生九兵衛らしい。

 

 

「待つんだ九兵衛」

「兄様、何故ソイツ等と一緒に?」

 

 

刹那の隣に立っていた十夜は九兵衛に待ったを掛けた。

 

 

「僕が彼等と居るのは成り行き。それよりも九兵衛、大変な事をしてくれたね」

「大変な事?それは彼等でしょう、柳生家の道場に道場破りとは」

 

 

十夜の言葉にフッと笑う九兵衛。そんな九兵衛に刹那は先程、十夜に見せた紙を九兵衛に突き出す。

 

 

其処には『未成年者立ち入り禁止の店に入った事並びに警察関係者への暴行罪』と書かれた逮捕状があった。

 

 

「こ、これは……」

「怪我をした真選組の隊士から事情は聞いたし、店の防犯カメラで犯行シーンも録画してある。真選組の隊士がお妙に迷惑掛けたのは事実だけど、その後に九兵衛が土方に刀を向けて隊士達を怪我させたのは完全に犯罪。柳生家次期当主でも逃れられない」

 

 

罪人状を突きつけられ九兵衛は顔が青ざめていた。

 

 

「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!あの娘、ちゃんと仕事してるよ!道場破りしか選択肢を出さなかった他の役人共とは違うよ!」

「うるせぇっ!俺は俺の我を通しただけだってんだろ!」

 

 

銀時の叫びに土方はツッコミを入れる。

刹那はキッチリと警察としての仕事をしていた。


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