銀魂 真選組の新隊員 作:残月
刹那は鉄子の鍛冶屋に顔を出していた。
安兵衛も来ており、話は刹那の専用刀の事になっていた。
「どんな刀を打つかは決まってるんだ。後は形に仕上げるだけだよ」
「ん、待ってる」
鉄子の話では刹那の刀の構成は決めているらしく、後は打って仕上げるだけとの事だった。
刹那はそれを楽しみに待つと告げると鉄子と安兵衛を見る。
二人の距離は近く、鉄子の煎れたお茶を安兵衛が美味そうに飲んでいた。
「安兵衛と鉄子は結婚するの?」
「ブブッー!?」
「せ、刹那!?急に何を!?」
刹那の発言に安兵衛は茶を吹き、鉄子は顔を赤くして狼狽する。
「二人を見てたら……そんな風に感じた」
「あ、いや……俺達はそんな……まだ……なあ?」
「そ、そうだよ……そんなんじゃ……」
刹那の言葉に顔を赤くしたまま口篭もる二人。刹那はコレを見て時間の問題かな?と思うのだった。
「しかし、刹那からこんな話題とは珍しい。何かあったのか?」
「あ、私も聞きたい」
分かり易い話題転換をする安兵衛に鉄子も載る。
「……………近藤が松平からの紹介でお見合いだって」
「あん、あの局長さんがか?」
刹那の言葉に安兵衛は眉を顰める。それと同時に安兵衛は刹那の気持ちにも感づいた。
「ははぁん、さては局長さんを取られると思ってんのか?」
「違う。近藤はお妙が好きだって言ってたから他の誰かとのお見合いなんて嫌だって言ってたから。それに……」
安兵衛のニヤニヤした顔に一発拳を叩き込もうかと思った刹那だがギリギリ踏みとどまる。そして言葉を区切ると一枚の写真を取り出す。
「これ、近藤のお見合い相手」
「ふぅん、どれど……れっ!?」
刹那から写真を受け取った安兵衛は言葉を失う。そこに写っていたのは、まごう事なきゴリラ。
「え、冗談だよな?」
「何処かの星のお姫様。バブルス王女だって」
安兵衛は恐る恐る刹那に尋ねるがどうやらマジらしい。
「局長さん、コイツと見合うのかよ」
「流石に嫌がってた。今日これから土方達が近藤の命令で、お妙に止めてくれるように頼みに行くって」
安兵衛は既に苦笑い。刹那はお茶をズズッと啜りながら説明を続けた。
「刹那は行かないの?」
「お妙のお店は未成年が入れないから土方に止められた。それに大人の話だから子供は関わるなって」
鉄子の疑問に答えた刹那は少々頬が膨らんでいる。
「なるほどな。つまり、自分だけ置いてけぼりが寂しかったわけだ」
安兵衛はニヤニヤと刹那を見ていた。
「うるさい、アドバーグ・エルドル」
「誰がキタキタ親父だ!つーか1度もキタキタ踊りなんか踊った事ねーよ!」
因みにアドバーグ・エルドルとはキタキタ親父の本名である。
「本当に二人は仲が良いなぁ」
言い争う刹那と安兵衛を見て、鉄子は少し羨ましそうに呟いた。
「しっかし、刹那が恋愛事を気にするなんてなぁ……気になる相手でも出来たか?」
「……………んー」
安兵衛の言葉に刹那は指を頬に当てて考える仕草をする。
真選組→家族として見てるので恋愛には至らない
銀時→どちらかと言えば悪友
新八→アイドルオタク。少し頼り無い
安兵衛→ハゲ
桂→どちらかと言えば捕まえなければならない相手
高杉→桂と以下同様
武市→論外
「禄なのがいない」
「なんで俺のコメント『ハゲ』だけにした?」
悩んで今まで会った男の事を思い出したが刹那の眼鏡には適わなかった様子。安兵衛は自分のコメントに不満を持っていた。
「と言うか、刹那の今まで会った相手が凄いよね」
「幕府と攘夷志士のトップばかりだしな。万事屋の旦那達は兎も角よ」
刹那の出会った男のラインナップがさり気に豪華メンバーな事に改めて驚く安兵衛と鉄子。
「……………」
そんな中、刹那はもう一人出会った男の事を思い出していた。
先日、自分の手の治療をしてくれた医者の事だ。
彼に巻いて貰った包帯は未だに左手に巻いてある。
刹那は目を細めて左手をジッと見つめていた。
「お、その反応は他にも男の知り合いが居るな?しかも気になる男とみた」
「………そんな事無い。少し思い出しただけ」
安兵衛の言葉に刹那はサッと左手を後ろに回すと否定する。
「そんな態度で違うって言われてもなぁ~」
「……違う………ん」
否定する刹那だが治療中に彼が見せた笑みを思い出して、動きが止まる。
「お、脈有りか?」
「…………っ!」
安兵衛の言葉に刹那は無言のまま首をブンブンと勢いよく横に振る。
だがそれは、ある意味肯定の仕草となってしまう。
この後、刹那は安兵衛と鉄子に質問攻めにあった上に夕飯までご馳走になってしまう羽目となった。