銀魂 真選組の新隊員 作:残月
今回は刹那パート。
オリキャラも出ます。
「ハァ……ハァ……」
刹那は走っていた。何処かを目指している訳では無い、だけど居なくなりたかった。自分を消したかった。
「私……何も……」
走っていた足を緩め、歩くと自身の体を見る。
体は返り血を浴び、掌は斬られていた。
「……………変わって……無かった」
刹那は歩みを止めて、その場にペタンと座り込んでしまう。震えながらギュッと自身の体を抱き締めた。
その行為は自分を止める為。刹那は自分自身を恐れたのだ。真選組として戦うようになったが、いざ戦うと昔の自分が出て来る。人の命を何とも思わずに刃を振るい続けた昔に。
真選組に身を置いてから本当に楽しい日々だった。感情が無く、口数も少なかった頃に比べれば遥かに話すようになっただろう。
「私は……私は……」
しかし、真選組に籍を置き、手に入れた感情は刹那を苦しめた。感情無く、戦う為だけの存在ならこんなに苦しい思いはしなかっただろう。
別れ際のお通や人質達が刹那に向けた視線。
言葉には出ていなかったが脅える瞳が語っていた。
『化け物』……と。
ジワリと涙が刹那の瞳の端に溜まる。
そんな時だった。
「そんな所で何をしているんですか、お嬢さん」
「っ!?」
背後から声を掛けられ、刹那は飛び上がって距離を取る。いくら泣きそうになったからとは言っても背後を取られたのは初めてだったからだ。
「そんなに警戒しなくても良いですよ。そんな事よりも怪我をしている見たいですね。診せて下さい」
「あ………」
刹那の背後を取ったのは少し長めの黒髪を後ろで一纏めにしている青年だった。眼鏡を掛け、体は細く貧弱と思う程に。
そして青年は有無を言わさずに刹那の手を取ると傷の様子を見る。
「ふむ……刃物を握ったかのような切り口だね」
「っ……痛っ!?」
青年は刹那の診断をすると同時進行で傷の手当てに入る。
突然の痛みに刹那は呻き声を上げるが、その間にも治療は進んでいく。
「体に付着している血はキミのではないようだから大丈夫みたいだね。でも血は拭った方が良いね可愛いんだから」
「な、なにを……」
戸惑う刹那を後目に青年は刹那の顔に付いていた血を拭う。
「よし、綺麗になった。後はその血塗れの服だけど……」
「………なんで?」
次々に刹那の世話を焼く青年に刹那は絞り出したかの様な細い声で呟く。
「なんで私に構うの?私は……私は……」
「僕は医者でね。怪我人や困ってる人は放っておけないんですよ。それにこんな風に泣きそうな子を見て見ぬ振りは出来ない性分なんですよ」
そう言って青年は再び、溜まり始めた刹那の涙を指で拭う。
「医者は体の傷は治せても心の傷は治せない。治せるとしたらキミに近しい人物だろうね」
「私に……近しい人なんて……」
青年の言葉に刹那は顔を俯かせてしまう。
「そんな事、無いですよほら」
すると青年は指を唇に当てて、シーッと刹那を黙らせた。
すると声が聞こえてくる。今はまだ遠いが聞こえてきたのは近藤の声。
「せ……な……何処だ!迎えに……一緒に帰る……」
その声に刹那は瞳を見開く。
「お迎えが来たみたいですね。では、私はこれで」
「待って……名前を……」
刹那が青年の名を聞こうと振り返ると青年の姿はもう無かった。
「刹那!」
「こん……どう……」
そしてそれと同じくして刹那の前に近藤が姿を見せたのだった。
次回もシリアス8割でお送りします。