銀魂 真選組の新隊員 作:残月
安兵衛と別れ、刹那と山崎は万屋事に来ていた。
刹那は銀時の怪我の様子を知っていたし、山崎は土方から銀時の内偵を命じられていた為にこれ幸いとしていた。
しかし、万事屋に銀時はいなかった。インターホンを押しても無反応。声を掛けても返事は無し。
「………いない?」
「万事屋の旦那は出掛けてるんじゃないかな?」
刹那はインターホンに指を掛けながら小首を傾げ、山崎は銀時が居ない事に不信感を抱き始めていた。
「なんだい、アンタ等。銀時に用なのかい?」
二人して悩んでいると一階から誰かが上がりながら、声を掛けてきた。
万事屋の下のスナック『お登勢』で働いているお登勢だった。
「水木しげるが描いた様な妖怪って事はアナタがお登勢?」
「おい、何いきなり妖怪呼ばわりしてんだ。テメェを地獄裁判にでも連れてってやろうか?」
初対面のお登勢にケンカを売る様な態度を取ったのは刹那。お登勢はキレ気味にタバコに火を灯した。
「銀時からそう聞いてたから。常に金が無い俺に金をせしめる金の亡者だって」
「溜まった家賃を払わないで我が物顔で借りた部屋に住んでる奴に言われたくねえんだよ! 家賃払えねえんなら追い出すぞあの天然パーマ!」
ろくでもない情報を刹那に教えた銀時にキレたお登勢は空に叫んだ。
「あ、あの……それで万事屋の旦那は?」
「ああ、アイツなら怪我をしたとかで新八の所で療養だってよ」
山崎の質問にフゥーと紫煙を吹く。
「それでアンタは?」
「私は刹那。最近、銀時と知り合った」
「俺は山崎です。刹那が万事屋に用事が有るって言うんで寄ってみたんです」
お登勢の質問に答える刹那と山崎。
「ったく……こんな良い子が銀時と知り合うなんてね。アンタは銀時みたいになるんじゃないよ」
「……ん」
お登勢はタバコを持ってる手とは逆の手で刹那の頭を撫でる。刹那は目を細めてくすぐったそうに、それを受け入れていた。
その光景は祖母と孫である。
「銀時から聞いてた話と違った。お登勢とても優しい。お登勢はお金は全て吸い取る怪物の類だと思ってた」
「私はカネゴンか!」
お登勢は撫でていた手をアイアンクローに切り替えてギリギリと刹那のこめかみを痛めつける。
「痛い痛い痛い!」
「早くも銀時の影響出てるじゃないか!アンタもしっかり見ときな!このぐらいの年頃は悪影響を及ぼす物を覚えやすいんだ!」
「は、はい!」
痛がる刹那を後目にアイアンクローを緩めずにお登勢は山崎を怒鳴った。
怒鳴られた山崎はビシッと敬礼をする勢いで返事をする。
一頻り怒った後に、お登勢は下のスナックに戻って行った。
そして屯所への帰り道で刹那は頭を押さえていた。
「………痛かった」
「確かにありゃ痛そうだったなぁ……」
涙目になっている刹那に山崎は苦笑いで返した。
「……なんで笑ってるの?」
「いや、ちょっとね」
そして静かに笑う山崎を見て、刹那は不思議そうに眺める。
山崎は口には出さなかったが刹那が人好きされる事を笑っていたのだ。
鍛冶屋で出会った安兵衛や先程のお登勢も初対面だったにも関わらず刹那と親しくなっていたのだから。
これも刹那の人徳なのだろうか?
等と思いながらも山崎は刹那を屯所へ送り届けると志村宅へと行った。
土方から受けた『坂田銀時を監視し、攘夷志士との繋がりがあった場合、斬れ』との命令を果たす為に。
次回で紅桜アフターも終わりになります