銀魂 真選組の新隊員 作:残月
パラシュートで脱出した刹那、桂、銀時の三名は地上へと着地した。
「銀時、お前は行け。此処に居ては要らぬ疑いを掛けられるぞ」
「疑いもクソもお前と一緒に居た段階で既に疑われてんだよ。前に大使館の一件で取り調べしつこかったんだからな」
桂の言葉に銀時はツッコミを入れながらも、その場を後にする。
桂の言う通り、この場に留まれば真選組の追求は免れないからだ。
「良かったのか?俺も銀時も攘夷志士だぞ」
「借りがあるから返しただけ。それに私は白夜叉なんか知らない……今日、此処に居たのは万事屋の坂田銀時」
銀時を見送った桂は視線を移し、話し掛ける。其処には壁を背にして立つ刹那が居た。
「ふ……なるほどな。ならば俺は如何する?」
「捕まえたくても……今は無理」
静かに笑った桂に刹那は苦々しい表情で答えた。
見てみれば足を引きずる様に刹那は立っていたのだ。
「お前……」
「最後に少し捻っただけ……それよりも早く離れた方が良い。さっきまでは近藤だけだったけど他の皆も来たみたいだから」
足を引きずる刹那に桂は手を差し伸べようとしたが刹那はその手を掴まなかった。それどころか桂に逃げろと告げていた。
「これで貸し借り無し」
「いーや、まだ貸しは増えるな」
「ひゃっ!?」
貸し借り無しと背中越しに桂に言った刹那だが桂の言葉と共に急に視界が反転した。
ただしく言えば刹那の体勢が桂によって横抱きにされたのだ。所謂、お姫様抱っこに。
「な、何するの!?下ろして!」
「こら、暴れるな。足を怪我した女子を放っておけるか」
一瞬、間を置いてカァーと顔を赤くした刹那は桂の腕の中で暴れた。
「大丈夫だから……下ろして」
「駄目だ。せめて近藤に引き渡すまでは……」
「なんでテロリストなのに無駄に律儀なの?」
意地でも刹那を下ろそうとしない桂に刹那は溜め息。
そして間の悪い事は続く物である。
「刹那、刹那ぁ!何処だ!?」
近藤の叫びが聞こえてきた。刹那を捜しながら移動をしているらしく、声が近づいてきていた。
しかもパトカーのサイレンも聞こえてくる辺り、真選組も現場に到着したらしい。
「桂、いい加減に下ろして。逃げられなくなる」
「逃げるさ。お前を近藤に渡した後でな」
刹那の再度の通告にも桂は耳を貸さなかった。そして……
「刹那、此処に居る…のか……」
刹那と桂の前に現れた近藤。そして近藤は言葉を失う。
桂にお姫様抱っこをされて顔を赤らめている刹那。
「待っていたぞ。足を怪我している、早く連れて帰るんだな」
「お、おい!?」
桂は有無を言わさずに刹那を近藤に渡す。近藤は反射的に刹那を受け取ったものの戸惑った様子で桂を呼び止めた。
「こ、近藤……かつ……」
「………感謝する」
近藤にお姫様抱っこされている刹那は何とか言い訳をしようとしたが近藤は刹那の言葉を遮る様に桂に言葉を放つ。
桂はその言葉を背に受けて口端を吊り上げた。
「真選組が攘夷志士に礼を言うとはな」
「勘違いすんな。俺は攘夷志士の桂小太郎に礼を言ったんじゃない。迷子のこの子を保護してくれた一般市民に感謝したまでよ」
桂の言葉に近藤は真面目な顔付きで返した。
そして踵を返す。
「次は捕まえるからな……桂」
「ふん、やってみろ」
互いに背を向けたまま交わされる言葉。
そんな二人に刹那はポカンとした表情になっていた。
「あ、あの……」
「お前が此処に居たのも驚いたが、桂が逃げずにいたんだ。きっと桂に助けられたんだろ?今回だけは見逃すさ」
刹那が事の経緯を説明しようとしたが近藤は刹那の髪を撫でる。
近藤は逃げなかった桂に何かを悟った様だ。
互いに天敵だが天敵だからこそ、芽生える物も有る。
「ん、じゃあ次は仲良く喧嘩する」
「いや、トムとジェ○ーじゃないんだから」
真選組と桂の間柄をト○とジェリーと表現した刹那に近藤はツッコミを入れた。
この後、刹那と近藤は真選組に合流。
勝手な行動をしたと土方に怒られはしたが、それは刹那を心配したからこその怒りだった。