銀魂 真選組の新隊員 作:残月
真選組局長『近藤勲』は混乱していた。とあるテロリスト組織の殲滅任務を帯びて敵地へ向かった。
そしてその組織を壊滅させたは良いが最後にテロリスト共が解き放とうとしていた兵器と叫んだ物が隠されている部屋を開けたら、そこに居たのは鎖に繋がれた少女だった。
「お、おいお嬢ちゃん!大丈夫か!?」
「…………ん」
近藤は少女に駆け寄ると更に絶句した。少女は鎖に繋がれているだけではなく、手枷と足枷まで付けられているのだ。
「ちくしょう、 あいつ等こんな酷い真似を!」
「いや、近藤さん。このガキが奴らの言っていた、兵器なんじゃねーか?」
近藤はこの少女を閉じ込めていたテロリスト達に怒りを感じた様だが真選組副長の『土方十四郎』はそうは思わなかった様だ。
「万事屋の所のガキも戦闘民族の夜兎らしいじゃねーか。コイツも同じなんじゃ無いか?だから鎖に繋がれてたと思うんだが」
「流石、土方さん。真偽はどうであれ鎖に繋がれたガキ見て出る言葉がそれとは非道でさぁ」
「ドSのテメェには言われたかねぇ!」
自身の推測を近藤に告げるが共に来ていた『沖田総悟』に非道扱いをされていた。
「トシ、この娘の素性が何であれ助けてやらねばならん。さ、行くぞ嬢ちゃん」
近藤は少女を繋いでいた鎖を刀で切り落とす。少女はそれに伴いフラリと倒れそうになるが近藤はそれを支えた。そして少女を横抱きにするとそのまま部屋を出ていく。
「はぁー、とことんお人好しでさぁ」
「言うな。アレが近藤さんらしさなんだからよ」
沖田と土方は底抜けなお人好しの近藤に溜息を落とすが馴れているのか近藤の後を追い部屋を出た。
そこで土方や沖田、そして少女を抱き抱えていた近藤も其処で気付いた。
抱き抱えられている少女の長い髪の色が銀髪である事に。
◆◇真選組屯所◇◆
真選組屯所に帰った近藤達は少女の手枷と足枷を外すと先ずは汚い状態だったので風呂に行けと命じると少女についての話をしていた。
「あの娘……どう思う?」
「近藤さん、ストーカーからロリコンに転職ですかい?」
真面目な顔付きになった近藤だが沖田からは別の意味での答えが返ってきた。
「いや、そうじゃなくて!あの娘……テロリスト組織の兵器と言われてたみたいだが俺にはそうは思えなくてな。俺に抱き抱えられてる時も大人しかったし」
「分からねぇのは俺も同じだ。仮にも兵器ってんなら殺気の一つもあっても良いはずだがあのガキからは何も感じなかった」
「見た目は14~15歳のガキですがね」
近藤の意見に賛同する様に土方も意見を出す。沖田も同様の意見の様だ。
「ま、兎に角……あの娘が風呂から出たら事情聴取だな」
近藤がそう言った時だった。
「わぁー駄目だよ!そんな格好で外に出ちゃ!?」
廊下の方から真選組監察の『山崎退』の声が聞こえてきた。しかも声の様子から慌ててる様だ。
「うるせーな山崎。何を騒いでやがる」
「ふ、副長。連れてきた娘が……って待って!」
土方は何をしているか聞こうとしたと同時に近藤達が居た部屋に先ほどの少女が戻ってきた。
裸で
「おおぅい!なんで裸!?山崎、何をしたんだテメェ!」
「違いますよ副長!この娘が裸で出て来たんです!」
山崎の胸ぐらを掴み怒鳴る土方に焦りながらも説明をする山崎。
「お、お嬢ちゃん!おじさん達の前で裸は駄目だよ!」
「近藤さん、そう言いながらもアンタの視線は目の前の裸に集中してますぜ」
慌ててる近藤だが何故か沖田は平然としていた。
「テメェもテメェだ。なんで裸なんだ!?」
「…………服、無かった」
土方の問いに答える少女。単に服が無かったから裸で来たようである。
「だからって裸で出てくるな!」
「落ち着けトシ。確かにまたあのボロボロの着物を着せるのも酷だ。そして着替えを用意してなかった俺達にも責がある」
少女に怒鳴る土方だが近藤は土方を窘めると自身達も迂闊だったと言う。
「と言うわけだから……お嬢ちゃん、このメイド服に着がえて……」
「って、なんでメイド服!?」
「いや、お妙さんにプレゼントしようと思ったんだが『ゴリラに奉仕するメイドなんかいねーよ』って殴られてから持ち帰ったままだったんだ」
どうやら他の人物に渡す物を渡せずに終わって持ち帰った服らしい。
「だからってこんなもん着る奴がいる訳……」
「どうやって着るの?」
「って居たよ!?」
土方は否定する気だったが少女は既に服を着る気だった。
「土方さん、兎に角服を着せねー事には話も進みませんぜ。それとも土方さんは寒さに震えるガキを裸のままにさせる趣味ですかい」
「人の趣味を勝手に改竄するな!」
沖田と土方が言い争いをしている中、近藤と山崎は少女にメイド服を着させていた。
平静を装っているが二人共、顔は赤い。
「これで良し。可愛いじゃないか」
「似合ってますね」
メイド服を着させられた少女は喜ぶ訳でも無く嫌がる素振りも見せなかった。
「ああ、そうだ。お嬢ちゃん名前は?まだ聞いてなかったな」
「……………名前?」
近藤の問いに少女は小首を傾げた。
「そう、お嬢ちゃんの名前」
「…………無い」
「え?」
「私に……名前なんてない」
その言葉に近藤は疎か言い争いをしていた土方や沖田でさえ動きを止めてしまった。
「な、名前が無いってそんな……」
「なるほどな奴等はコイツを兵器や道具として扱ってたから名前なんざ付けなかったんだろうよ」
山崎がショックを受ける最中土方が推測を口にする。
「だとすりゃさっき裸で出て来たのも道具として扱われてたから羞恥心も無かったって事ですかい?道具に恥じらいなんざいらないから」
「ちくしょう……なんてこった……」
沖田が先ほどの少女の行動に納得をし、近藤はそれにショックを受けていた。
「……………?」
対する少女は何故、近藤達が悲しんでいるのか分からずに居た。
自分は道具で何もしなくてと良いのにと。
「よし、決めた!この娘は真選組で預かる!」
「何言ってんだ近藤さん!」
意を決したように立ち上がる近藤に土方が待ったを掛けた。
「こんな可哀想な娘は放っておけん!むしろ俺が育てる!」
「後半の方が本音だろうアンタ!」
ギャーギャーと騒ぐ近藤と土方。
呆れた様子の沖田と山崎。
そんな中、少女は光の灯らない虚ろな瞳で相変わらずその光景を見ていた。