銀魂 真選組の新隊員   作:残月

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カブト狩りと新技

 

「ん、そう言えば総悟はどうした?」

 

今朝から姿を見てない総悟に近藤はキョロキョロと辺りを見渡す。

土方はタバコを加えると小さく溜息を漏らす。

 

 

「アイツはまた単独行動だ。ありゃ、駄目だ。ガキどもからカブト巻き上げたりやり方が無茶苦茶だ」

「瑠璃丸は日の下で見れば黄金色に輝く生きた宝石だ。パッと見は普通の奴と見分けが付かんからな。総悟の様に手当たり次第にやっていかんと見付からんかもしれん」

 

 

ウームと近藤と土方が悩む仕草を見せていた。

 

 

「早く捜す……メタビー」

「いや、瑠璃丸だからね」

 

「銀ちゃん、アレ見てアレ!」

 

 

近藤が刹那にやんわりとツッコんでいると近くで神楽の叫び声が聞こえた。

まさか、と思い近づき見ているとその木には間違いなく瑠璃丸の姿があった。

 

 

「いかん、瑠璃丸が!」

「ま、待て!」

 

 

近藤が慌てて銀時を止めようとするが土方が止める。

 

 

「ここで騒げば奴等が瑠璃丸の価値に気付く。奴等がいなくなった時に今だ」

「……ん」

 

 

土方の言う通り、銀時は瑠璃丸の前を素通りする。銀時達はカブト虫では無く金蠅と思っているのか捕ろうという気は無いようだ。

 

 

「しめた、行ったぞ。アイツらホントバカだ!」

「今だ、早く瑠璃丸を!」

 

 

土方と近藤が木に近づいた瞬間、瑠璃丸は空高く飛び上がったかと思うと神楽の頭の上に乗っかった。

 

 

「うおっ、汚ねっ!お前、頭に金蠅乗ってんぞ!」

「うわっ!」

「ちょちょちょ、動くな。動くなよ!うおらぁぁぁぁぁぁ!」

「いだっ!」

 

 

瑠璃丸だと知らない銀時は素で殺そうと神楽の頭を叩きまくる。

 

 

「待って……ソレは……」

「待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!それ、将軍のペットォォォォォォォォォッ!」

 

 

刹那が声をかけようと足を踏み出したとき、近藤は勢いあまって木の根に足をひっかけ思いっきり神楽の頭にチョップをかました。

 

 

「ぶごぉっ!」

「えぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 

華麗に決まった一撃は神楽にダメージを与え、その衝撃で地面に叩きつけられる瑠璃丸。

 

 

「ギャァァァァ!るり……瑠璃丸がぁぁぁぁぁぁ!?」

「皆、酷いヨ。金蠅だって生きてるんだヨ!この子、私を慕って飛んできてくれたネ。この子こそ定春28号の跡を継ぐ者ネ」

 

 

神楽は瑠璃丸を籠にしまうと、意気揚々に何処かへと走り去っていってしまった。

勿論それを冷静に見届ける訳が無く思わずポロっと言ってしまった。

 

 

「待て!ソレは将軍の……」

「将軍の……何?」

 

 

その時の銀時は獲物を見つけた時の様な獣の目をしていた。

神楽の後を追って歩いている時に大体の経緯を話した。

金に貪欲な銀時は成功報酬の6割を寄越せと言い出す始末。暫くの家賃安定を確信し、銀時は兎も角としても新八までも高らかに笑っていた。

そんな時だった崖の上で沖田と神楽が対峙しているのだ。

 

 

「総悟!?」

「アレ、何やってんの?嫌な予感がするんですけど……」

 

 

土方が崖の下から沖田の名を叫ぶが沖田と神楽は目の前に居る人物から目を逸らさなかった。そして新八はイヤな予感がすると呟く。

 

 

「いざ、尋常に勝負アル!」

 

 

神楽は先程捕まえた瑠璃丸を取り出すとカブト相撲を沖田に嗾けた。ソレに顔を引き攣らせる近藤達。

 

 

「ト、トシィ!」

「まぁ、待て。総悟が勝てば労せず瑠璃丸が手に入る、奴に任せよう。総悟も全て計算ずくで話しに乗ってるんだろう、手荒なマネはしねーよ。そこまでバカな奴じゃねェ」

 

 

すぐに沖田を止めるべきだと近藤が土方を呼ぶが土方は冷静に対処する。

流石に将軍のペット瑠璃丸を傷つけるマネはしないだろうと考え至った様だ。

そんな中、刹那が土方の袖をクイッと引いた。

 

 

「土方……アレ」

「ん……んなっ!?」

 

 

刹那の指さした先には沖田よりもデカい明らかに凶暴そうなカブトムシが居た。

 

 

「凶悪肉食怪虫カブトーンキング、サド丸22号に勝てるかな?」

「「そこまでバカなんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」」

 

 

真選組と万事屋の全員の叫びが重なる。

このままでは瑠璃丸が確実に粉々になってしまう。このままでは真選組は任務失敗となり、万事屋も成功報酬が全てが水に流れてしまう。

 

 

「止めねば!早く2人を止めねば!」

「無理ぃ!こんな崖登れませんよ!」

 

 

近藤と新八が泡を食って崖に駆け寄るが聳え立つ崖は1人では絶対に登る事は出来ない崖。

近藤は振り返り銀時達にも協力を求めた。

 

 

「力を合わせるんだ!侍が協力すれば超えられぬ壁などない!」

「よし、お前が土台になれ!俺が登ってなんとかする!」

「ふざけるな!お前がなれ!」

「言ってる場合じゃねーだろ!今、為すべき事を考えやがれ!大人になれ!俺は絶対土台なんて嫌だ!」

「お前が大人になれぇぇぇっ!」

 

 

近藤の言葉に協力すると思えば相反する土方と銀時はどっちが土台になるか揉めだし始め新八がそれにツッコミを入れる。

 

 

「じゃあ、私が土台になる」

「何言ってんの!?刹那ちゃぁぁぁん!?」

 

 

率先して土台になろうとした刹那の一言に近藤達は凍りつき、新八が叫ぶ。

スカートを気にせず四つん這いのような格好になろうとする刹那を慌てて近藤と銀時が止める。

 

 

「いやいやいや、落ち着け!刹那が土台になる必要なんて無い!つーか昨日から大人顔負けの対応だよ、この娘!?」

「そうだぞ!もういい、俺が土台するから早くお前ら上がるんだ!」

 

 

銀時が刹那を立たせると近藤が土台になろうとする。

 

 

「上がるってオメー!こんなヌルヌルの土台あがれるかぁ!気持ちワリーんだよ!」

「じゃあ次は私が……」

「待て待て待てぇぇぇぇぇぇっ!」

 

 

銀時が抗議したと同時に刹那は近藤の背に手を置き登ろうとし始めた刹那を今度は銀時、新八で止める。

 

 

「だからぁ、刹那ちゃんは乗らなくて良いのっ!女の子が乗るのは男の膝の上だけにしときなさい!」

「アンタ、何言ってんですか!兎に角、刹那ちゃん!そんな行動してるとまた水色の縞々パンツが見えちゃうからもうしないで良いから!」

 

「「テメェこそドサクサに何見てんだよ!」」

 

 

銀時にツッコミを入れた新八。

迂闊にも見えた物を言ってしまった新八は銀時と土方からの拳を受けた新八は地面に埋まった。

 

 

「行けぇぇぇぇっ!サド丸ぅぅ!!」

「「ヤベぇ!?」」

 

 

崖の上から聞こえた沖田の声に瑠璃丸の危機感を感じると土方は近藤の上に乗り、銀時は新八を2番目の土台となった土方の上に投げる。

先程ので一撃で再起不能になってしまった新八だが土台の一部とさせられた。

そして土台を踏み台にした銀時は素早く崖を蹴り上がっていく。

 

 

「カーブートー狩りじゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

銀時が怒声と共にサド丸に蹴りを見舞った様でズズンと巨大な何かが倒れる様な音が聞こえてきた。

 

 

「刹那、お前も行ってこい!」

「……ん」

 

 

土台を止めた土方は崖を背にしてバレーのレシーブの様な体勢を取る。

刹那はコクンと肯くと土方に向かって走り出し、土方の手を足場に飛び上がって崖を超えた。

 

猫の様に崖の上に登った刹那だがその時には全て終わっていた。

銀時が神楽と沖田の説教中に瑠璃丸を踏んでしまったのだ。

そこには見るも無残な瑠璃丸の亡骸が残されていた。

 

 

「……みんなみんな死んじゃったけど友達なんだ……だから連帯責任でお願いします」

 

 

引き攣った顔の銀時の言葉が妙に頭に残った。

 

 

「おい、刹那ぁ!万事屋を叩き斬れ!ソイツの首で将軍様から許しを得る!」

 

 

土方の叫びと共に刀が崖の下から刹那に向かって投げ込まれる。

刹那は刀を拾うと腰元に構える。

 

 

「……ん」

「落ち着こう刹那ちゃん!確かに銀さんが悪かったけど暴力では何も解決しないよ!?」

 

 

刹那がジリジリと間合いを詰めて行く最中、復活した新八は崖の下から叫ぶ。

 

 

「つーか、元はテメェ等の仕事だったろうが!文句があるなら力で語れ……」

「くずりゅうせん」

 

 

銀時が叫ぶがその言葉を遮る様に刹那から九つの閃光が走る。

銀時が冷汗と共に言葉を失いながら自身の服を見れば九つの穴が開いていた。

 

 

「何あの娘!?なんで九頭龍閃、使えるの!?」

「違う、『九頭龍閃』じゃなくて『クズ龍閃』」

 

 

冷汗を流した銀時が九頭龍閃にビビるが刹那は首を横に振る。『九頭龍閃』では無く『クズ龍閃』だと訂正した。

 

 

「なんだそりゃぁぁぁぁ!クズか、クズを始末する技なのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

銀時の叫びが森の中に響き渡った。

この後、銀時は刹那に追い回された挙げ句に最終的に報酬は無しとされた。

カブト狩りが上手く行かなかった上に真選組から報酬も出なかった為に踏んだり蹴ったりのオチとなったが事態の失敗を招く要員が万事屋だった為に自業自得とも言えるが。

 

因みに真選組はと言えば警察庁に趣き、松平の前で近藤が自身に蜂蜜を塗り、兜を被って誤魔化そうとしたが当然通用する訳も無く切腹を命じられた。

切腹はその後、無しになったが当面の給料カットが言い渡されたとか。


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