銀魂 真選組の新隊員   作:残月

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バーベキューは皆で

 

 

「まったくとんでもない邪魔が入ったものだ」

「奴等よりも早く瑠璃丸を見つけるしかないな」

 

 

真選組の宿営地で褌姿のままの近藤は乱入してきた万事屋への対策を練っていた。土方は万事屋よりも先に瑠璃丸を見つけ出すと指示を出す。

 

 

「最早猶予は無い。一刻も早く瑠璃丸を将軍様にお返しするのだ」

「「了解!」」

 

 

近藤の号令に隊士達は敬礼をしながら返事をする。

晩御飯の用意や明日のカブト狩りの準備に隊士達が慌ただしくしている中、刹那は捕まえたカブトムシを眺め、山崎は刹那のお守りとして側に居た。

 

 

「おい、山崎」

 

 

後ろから声を掛けられ振り返る刹那と山崎。振り向くとそこには此方を見下ろしている土方が居た。

 

 

「今すぐ蚊を用意してこい」

「え、蚊ですか!?そんな無茶な……」

「つべこべ言わず集めて来い。刹那、お前は行かなくていい」

 

 

ブツクサ言いながら茂みの中へと消えていった山崎。後を追おうとした刹那を止めた土方はドカッと腰を下ろすとタバコを吸い始め、刹那は土方の隣にチョコンと座る。

 

 

「土方……蚊、何に使うの?」

「ん、すぐに分かるさ」

 

 

不敵に笑った土方を刹那は頭に?マークを浮かべて小首を傾げる。

 

その後、数十分後に大量の蚊を籠にいれて持ってきた山崎。顔や腕に刺された後があるのを見る限り苦労して集めたようだ。

 

 

「よくやった山崎。これで連中を追い払える」

 

 

そう告げると土方は万事屋の宿営地の近くの茂みに隠れ、集めてきた蚊を銀時達の方へと放していた。

食事中だった銀時達はすぐに仲間割れを始め、唯一の晩御飯は台無しになりギャーギャー騒いでいる銀時達を刹那は哀れんだ目で見た。

更に土方は銀時達を追い込む作戦を考えていた。

 

 

「副長、バーベキューの準備が出来ました!」

「よし。じゃ、作戦開始だ」

 

 

その頃、夕食が無くなった事から早く寝る事にした銀時達は各々寝袋に入り、空腹を紛らわそうとしていた。

 

 

「お腹すいて寝れないんですけど」

「気のせいだ」

「気のせいなんきゃじゃないネ!純然たる事実アル!」

「てめーは一皿たいらげてただろ」

「一杯じゃなくていっぱい食べたかったネ!」

 

 

ゴロゴロと動き回る神楽と前傾姿勢をとる新八。

仲間割れに近い会話をしていると肉を焼いた良い匂いが漂ってきた。それと同時に賑やかな笑い声も聞こえてくる。

 

 

「うめぇ!やっぱキャンプにはバーベキューだよな!」

「カレーなんて家でも食えるしィ!福神漬もってくるのめんどくせーしぃ!」

 

 

隊士達はわざとらしく大声で聞こえる様に話す。

これが作戦その二。楽しそうな所を見せて惨めな思いにさせてしまおうと言う事だ。

 

 

「オイ。マヨネーズはどうした」

「……副長、これは美味しそうに食べてる姿を見せ付ける作戦です。マヨネーズはちょっと……それに副長がマヨネーズと言ったから刹那が離れていきましたよ」

 

 

土方がマヨネーズの言葉を出したと同時に刹那はススッと土方から距離を置く。

真選組のバーベキューの様子を涎を垂らしながら見つめる銀時達。そしてわざとらしく肉をクチャクチャと食べながら銀時達へ近寄る沖田。

 

 

「よォ。旦那方まだいたんですかィ?そんな粗末なテントで寝てたら蚊に刺されますよ。あっ」

 

 

端から見てもわざとらしく銀時達の前に食べていた肉を落とす。

 

 

「いっけね、落としちまった」

「おーい、沖田隊長。そんなのもういいって。こっちにいっぱいあるから戻ってこいよう」

「おーう、じゃっ俺はこれで。あっ、それ別に食べてもいいですぜ」

 

 

隊士達に呼ばれ、踵を返す沖田。銀時達を馬鹿にした態度を取った後に真選組陣地へと戻ってくると悪い笑みを浮かべる沖田。

 

 

「ククッ……見なせぇ、奴らのあの顔。腹減らして森から出てくんのも時間の問題……」

 

 

沖田は真選組陣地に戻ると視線を万事屋へと移した、そして映った光景に目を見張る。

 

 

「やっぱキャンプには酢こんぶだよね」

「え、ダサくない?キャンプでバーベキューって逆にダサくない?」

 

 

なんと銀時達は酢こんぶを火で炙って食べていた。

 

 

「酢こんぶ焼いて食ってるぅぅぅぅぅぅっ!?」

「痛々しい、痛々しいよ!」

 

 

その痛々しい光景に真選組から悲鳴が上がった。

 

 

「追加ネ。奴等のバーベキューでゲロしてきてやるヨ」

「よし、行ってこい神楽。奴等のバーベキューを台無しにしてやれ」

 

 

焼酢こんぶに精神的なダメージを与えたと思った神楽は追い打ちとばかりに立ち上がり、バーベキューにゲロを掛けると意気込む。

銀時もそれに賛同し、神楽を止める所か煽っていた。

そんな時、刹那は銀時達に歩み寄り持っていた、皿を差し出した。

 

 

「これ、私の分で良ければあげる……バーベキュー」

 

 

皿に置かれた6本のバーベキューと刹那の顔を見比べて銀時達はポカンとした表情になる。

銀時達の前にしゃがみ込んで「どうぞ」と皿を前に突き出す。

銀時は反射的に皿を受け取り、真選組陣地に戻る刹那の後ろ姿を見送った。

 

 

「うわぁぁぁん!良い奴アルゥゥゥ!!」

「有難うございます、刹那ちゃぁぁぁぁん!」

「バカッ新八!それを言うんじゃねぇ!真選組のお零れだぞ」 

 

 

神楽は涙を流し、新八は額を地面に付けて感謝を述べ、銀時は文句を言いながらもバーベキューにかぶり付いていた。

 

「自分が恥ずかしいネ、嫌がらせにゲロ吐きに行こうとした自分が情けないネ」

「俺って奴はぁ……俺って奴はぁ……」

 

 

刹那から貰ったバーベキューを口に含むと神楽は涙が流れる目元を拭い、銀時は大人の立場でありながら刹那より子供っぽく嫌がらせをしようとした自分にヘコんでいた。

 

 

「駄目主人公とゲロインに反省させたよ!何、刹那ちゃんって菩薩か何かの生まれ変わり!?」

 

 

ドリル並に根性が捻くれている主人公と声優さんの無駄遣いとされるヒロインを同時に反省させた刹那に新八は驚愕していた。

 

 

「ったく、刹那の奴」

「まあ、いいじゃないですか副長。刹那の優しさですよ」

 

 

刹那の行動に舌打ちをした土方だが本気では無く、仕方ない奴だなと半分呆れの様だ。

山崎もそんな刹那に笑みを溢し、その後ろでは隊士達が上を向いたり、目頭を押さえていた。

 

 

「……そうか、刹那がそんな事を…。こっちも成果無しだ。捕まるのは普通のカブトばかりでな」

「おい、皆。別に局長の言った事でも、嫌な事は嫌と言っていいんだぞ」

 

 

翌日になり、土方から昨日の様子を聞いていた近藤。

昨日と同様に蜂蜜を身体中に塗りたくっている近藤だが、今日は後ろに居る隊士達も同じように蜂蜜を塗りたくっているのを見て土方はツッコミを入れる。

 

 

「いや、でもハニー大作戦なんで」

「いや、だからなんで身体に塗るんだよ」

 

 

何故か全員がノリ気でハニー大作戦を決行している事に土方は再度、ツッコミを入れた。




次回でカブト狩りは終わりになります

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