銀魂 真選組の新隊員   作:残月

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プロローグ

 

少女は親を知らない。

 

物心付く前に組織に居たからだ。

 

少女は温もりを知らない。

 

娘ではなく殺戮マシーンとして育てられたからだ。

 

少女にある日常は人を斬る事。

 

それしか知らないからだ。

 

 

そんな少女は薄暗い部屋で鎖に繋がれていた。

少女が逃げ出さない様に、少女が反抗しない様にと手枷と足枷、首には首輪が付けられ鎖は部屋の片隅に繋がっていた。

 

 

仕事が始まるまで少女は部屋で座って待つ。それだけだった。

少女がする事は二つだけ。人を斬るか、部屋で静に座すだけだった。

 

 

 

そして、その少女に転機が訪れる。

普段は静かな部屋に爆音と人の声が聞こえ始めたのだ。

 

 

 

「御用改めである!」

「テメェ等神妙にしやがれ!」

「し、真選組だぁっ!」

「ヤベぇぞ!」    

 

 

片方は聞き慣れぬ声、片方は聞き慣れた声。

どうやら少女の飼い主は何者かに襲われている様だ。しかし少女は動かない。

 

命令を受けてないからだ。少女はずっとそうしてきた。

命令を守る事を、命令を遂行する事を。

 

 

「アイツを連れてこい!アイツなら真選組でも殺せるはずだ!」

「へ、へい!今すぐに!」 

 

 

聞き慣れた声の方が動き始める。少女を入れている部屋の鍵がガチャガチャと開けられる音がしていた。

 

しかしそれは適わなかった。

 

 

「何をする気かは知らねぇが……させるかぁ!」

「ギャァァァァァッ!?」

 

 

聞き慣れぬ声の主は聞き慣れた声の主を殺した様だ。その悲鳴を聞いた少女はそんな事を思っていた。

 

 

「トシ!大丈夫だったか?」

「問題ねぇよ近藤さん。しかし奴等ここになんか隠してるみたいだな。なんか焦ってたぜ」

 

 

聞き慣れない声が増えた。先ほどから聞こえてきた声の主は『トシ』と呼ばれ、増えた聞き慣れない声は『近藤さん』らしい。

 

 

「この部屋か?」

「ああ、余程のお宝でも隠してるみたいだな」

 

 

二人の男は少女が繋がれている部屋の前に居る様だ。ガチャガチャと鍵が掛かっている扉を開けようとしている。

 

 

「んじゃ開けてみやしょうや」

 

 

間の抜けた声が追加されたと思ったと同時に少女が繋がれている部屋の扉は破壊された。激しい爆音と煙をまき散らしながら。

 

 

「総悟テメェ!」

「土方さんがノロノロしてっから開けてやったんたでしょうアバカムで」

「バズーカ撃っただけだろ!こんな物騒なアバカム初めて見たわ!」

 

 

総悟と呼ばれた人物が扉をバズーカで破壊した様だ。本人はアバカムと言い張っているが。

 

 

「まぁ、落ち着けトシ。何はともあれ扉は開いたんだからな」

 

近藤と呼ばれた男がトシを窘めると開いた扉の中を覗く。

 

中を見た近藤は絶句した。

 

中には鎖に繋がれた少女が虚ろな瞳で此方を見ていたのだから


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