シリアルに生きたい   作:ゴーイングマイペース

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 サブタイ通りな第4話


 4時間目 : お前ら幼馴染とか文学少女とか大好きやろ? ん? んん?

「おはよーっ、世界」

 

「はよーっす、相変わらず朝から無駄に元気いいなお前」

 

「アンタの方が腑抜けてるだけでしょ。――っふぁ~~あ……あ」

 

「あらま、大口開けてあくびだなんて年頃の女の子がはしたない」

 

「う、うっさいわねー! いいでしょ、まだ5時にもなってないんだからっ! ていうかいいんちょの真似とかやめなさいよ!」

 

 隙を見せたお前が悪いのさー。と、繰り出されたキックを片手で受け流しつつ走る。

 さて現在は早朝、俺は我が幼馴染と共に自動車顔負けのスピードで爆走しつつ新聞配達のバイトの真っ最中である。俺はこのやたらとうるさい女、神楽坂明日菜のような苦学生などではないが、このバイト、鍛錬にはちょうどいい上に金まで手に入るのでこいつがバイトを始めると言った時に便乗したのである。

 

 明日菜との付き合いは実は麻帆良でできた友達の中では一番長い。コイツが転入して来て早々に先ほども話に上がったいいんちょ、雪広あやかとおっぱじめた喧嘩に何故か俺まで巻き込まれて以来の仲だ。これを聞くと我が級友達は血涙を流して羨ましがるが、このゴリラ女と幼馴染であることのどこに羨ましがる要素があるのかと聞きたい。一言目にはパンチ、二言目にはキックで返してくるヤツだぞこの女は。

 

「まったく、すぐにからかってくるんだから。少しは高畑先生みたいに大人になりなさいよね」

 

「じゃあお前もその愛しの高畑先生に釣り合うようにすぐに手を出してくる悪癖を直したらどうだよ」

 

「うっ」

 

 相変わらず高畑先生が弱点のようだ。ありがとう高畑先生(デスメガネ)、あなたのおかげで今日も俺の朝の平和は保たれました。

 とはいえ正直この話題をこいつの前で出すのは心中複雑なものを抑えきれない。イヤ、俺が明日菜(ゴリラ女)に恋愛感情を抱いているとかそんなバカげた話ではなく、こいつが高畑先生に好意を持ち始めた時期から表れてるドギツい失恋の相が一応は幼馴染である身としては見るに堪えかねないというだけである。恋愛相談なんかを受ける度に「諦めろ、試合(お前の初恋)終了だ」と言ってやりたくなるレベルなのだ。いくら俺が最強クラスだと言っても恋愛は専門外です。

 

 ……まあ、一応は最後まで付き合ってやるつもりである。といっても「なんとか成就させてみせる!」と言ったものではなく「安心しろ、骨は拾ってやる」という極めて後ろ向きな決意なのだが。

 

「あ、いいんちょと言えばさ。まーたなんか怒ってたよ。アンタの付き合いが最近悪いって」

 

「こっちもかよ……。俺が好きに使える体はこれ1つしかねーんだぞ、どうしろってんだよ……」

 

「なによこっちもって。アンタ何時の間にそんな軟派男になったのよ」

 

「誤解を招くような言い方をするんじゃねー。俺の人間関係は極めて健全だわ」

 

「どーだか」

 

 ……まあ、会う度に人の姉貴分にイカれたコスプレをさせようとする変態紳士とかもいるけど。なんだよバニー&レオタード&ツインテールって。

 

 おっと、話を戻そう。明日菜と幼馴染ということは必然、その他2名ほどともそういう関係になってくる可能性が存在するわけである、原作的に考えて。というかその片方であるあやかと仲良くなったのはコイツと同じ時だったのだから今更語るまでもない道理と言うヤツだ。

 さてそのあやかだが、アイツは昔から俺の友人関係、特に女性関係に妙に厳しい。といってもこれまた恋愛感情が俺にあるなどという話ではない。美少年を見て鼻血を噴きだす正真正銘のショタコンであるアイツとそんな色気のある話になるはずもなく、ただ単に「この雪広あやか唯一の男性の友人である貴方がそのようにふしだらな殿方であると私の名に傷がつくのです!」ということらしい。

 まあ、だからといって風香を抱っこしてるだけで広域指導員を呼んでくれやがったことを許すつもりはないが。ふぁっきゅー。

 

 「っと、ここで一旦お別れだな」

 

 そんな風に駄弁っている間に配達コースの分岐点に辿り着く。ちなみに俺の配達担当区は明日菜の数倍はある。仮にも鍛錬として走る以上普通の女子中学生(?)と同様の距離だけを走るわけにはいかない、というわけだ。

 

「そうね。さーて、今日もお仕事がんばりますか! 世界、アンタ遅れたりするんじゃないわよ!」

 

「おー、お前もな。まあお前は秘境育ちの野生児みたいなもんだから心配ないか」

 

「誰がゴリラ女ですってーッ!!?」

 

ちょ、飛び蹴りすんなさっさと行けこのおバカ!

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「木乃香、やっぱりアイツは一刻も早く動物園の檻の中に閉じ込めた方がいいぜ」

 

「あははー、まあアスナやもん。しゃあないって」

 

 木乃香さん、それフォローになってないです。

 

 朝から時間が経ち放課後。現在俺は散歩部と兼部している「図書館探検部」の活動に参加するべく最後の幼馴染である近衛木乃香と共に活動場所たる図書館島へと向かっている最中である。

 先に語ったように明日菜を通じて知り合った木乃香とももう随分と長い付き合いだ。昔から占いなどで共に明日菜を弄繰り回してきた盟友である。逆立ち歩きさせながら高畑先生への愛を叫ばせた時は流石に堪えきれず大爆笑したものだ、木乃香は苦笑いしていたが。

 とはいえその後すかさず別の内容をやらせようとするなど、なかなか黒いところもある子である。

 

「んー? なーんか今失礼なこと考えへんかったか、せかい君?」

 

「はっはっは、なにを仰るお姫様。……お、おーいのどかー、ゆえ吉ー、パルー」

 

 女の勘とやらだろうか、こちらが考えていたことをなんとなく察したらしい木乃香の意識を逸らすべく、前方にその姿を発見した部活友達へと声をかける。すると木乃香もそれ以上無理に追求する気はないようでニッコリ()()笑顔を収め、俺同様前方へと顔を向けた。

 ……どうやら後ろ手に見え隠れしていたトンカチが猛威を揮うことは避けられたようだ。なぜかあのトンカチ普通に障壁抜いてくるからいくら俺でも喰らうわけにはいかないのである。いったいどんなトンカチ渡したんだあのジジイ。

 

「こ、こんにちはー世界くん。今年度もよろしくお願いしますー」

 

「こんにちはです世界さん、今年度もよろしくです。あとどうです、このデンジャラスココアコーラ。なかなかイけますよ」

 

「おーす世界君♪ またこれからよろしくねー。 あ、あとまた締切がヤバいのよー。ね、ヘルプお願い!」

 

 上から順に宮崎のどか、綾瀬夕映、早乙女ハルナ。3人とも俺と木乃香同様図書館探検部である。ちなみに幼馴染などということはなく、普通に入部時からの仲だ。と言ってものどかとだけは打ち解けるのにある程度時間を要したが。

 あとパル、ヘルプには入ってやるから名前以上にデンジャラスそうな物体を押し付けてくるこのバカブラックを俺から早く引き剥がせ頼むから!

 

「ゆ、ゆえゆえー、ダメだよー世界くん困ってるよー」

 

「イエーイ、サンキュー♪ ほらゆえ吉、いい子だからそのジュースはしまっちゃおうねー」

 

「むむむ、残念です。美味しいのに……。あとパル、子供扱いするなです」

 

「あんたらいつもよう飽きへんなー」

 

 お前のその特殊すぎて異世界でも受け入れられないような味覚と一緒にしようとするんじゃない。というか図書館島探検で培った無駄に溢れるそのバイタリティをこんな風に使わないでほしい。あと木乃香、ころころ笑ってないで止めてお願い。

 

「夕映、お前いい加減俺にそのよくわからん飲み物勧めてくるのやめろよ……」

 

「あ、あはははは……。ゆえゆえのコレはもう趣味みたいなものだからー。ごめんねー世界くん」

 

「別に貴女が謝る必要はありませんよのどか。それに世界さん、貴方もいい加減これらのジュースの素晴らしさを知るべきです。さ、まずはひとくt「やめんか」むぅ……。ぬ、ハルナ、何をニヤニヤしているですか」

 

「ウヒヒヒヒ♪ なーんでもー♪ ただこうしてこの面子でいるとインスピレーションが湧いてくるなーって♪」

 

「もー、ハルナ。あんまり悪ノリしたらあかんえー? 前もそれでアホ毛引っこ抜かれそうになってたやん」

 

「うっ。だ、だいじょーぶだいじょーぶ。もうあんな悪ふざけしないって」

 

「パル、今度また『のどか&夕映×俺』なんて描いたらホントにその触覚引っこ抜くからな。

……よし。いつものメンツも集まったことだし、気を改めて今年最初の探索に行くとするか。ほら装備取りに行くぞ」

 

「おー♪」

「お、おー……」

「ぃよーし、お宝本見つけちゃうよー!」

「私たちも2年生になったことで探索を許可されるエリアが増えますからね。どのような蔵書が眠っているか楽しみです。……あと新ジュース」

 

 

 

 どうやら俺たちの今年初の図書館探検はおバカのためにトイレの位置を確かめることから始まりそうである。

 




・幼馴染ズ

幼馴染その1
 ほんっとにアイツはもう! バーカバーカ!

幼馴染その2
 か、勘違いしないでくださいまし(ry

幼馴染その3
 も~、あんまり悪ふざけしすぎたらあかんえ?(自分はしないとは言ってない)

 だいたいこんな感じの3人。というかまだちゃんと登場すらしていない金髪お嬢様が一際愉快なことに。どうしてこうなった。


・失恋の相
 そりゃああの過去で相手がアレじゃあドギツいのもやむなしですわ。


・体は1つ
 制限が無ければ増やしていないとは言ってない。


・変態紳士
 い、いったいナニビレオ・イマなんだ……


・鳴滝姉を抱っこ
 どう贔屓目で見ようとしても事案です。本当に(ry


・トンカチ
 作中最強クラスの学園長にすら血をダクダクと流させるシロモノ。絶対何かいわくつきだってアレ。


・図書館探検部

正統派文学少女
 他の同年代の男子と違い、優しく自分の趣味である読書についての話をしっかり聞いてくれることから少しずつ心を開いていき、最終的に本棚から足を滑らせたところを助けられ打ち解ける。
 え? それ以上の感情が芽生えているかどうか? 続きを読んでね!(ゲス顔)

哲学系文学少女
 勉強を見てもらったり文学について討論したり。他の男性のように下心を感じることもあるが、それだけではないと一目置いている。
 ちなみに例のジュース群をしつこく勧め続けているのは主人公に対してのみである。

漫画家系文学少女
 締切突破の救世主兼、ラブ臭を常に漂わせているアイデアの宝庫、というのが主人公に対しての認識。1人だけ安全圏でニヤニヤしてきたが、それがいつまでも続けられるかどうかは作者にもわからない。

 もう1つの部活はこういった感じに。ちなみに、もともとはこの部活だけにする予定だった。が、4人全員なにかしらと兼ね合いをしているので主人公も散歩部と兼部させることに。
 どういったものかというと

  近衛 木乃香:占い研究会
  宮崎 のどか:学園総合図書委員、図書委員
  綾瀬 夕映 :児童文学研究会、哲学研究会
  早乙女ハルナ:漫画研究会

 である。兼部しないと入部できない掟でもあるのだろうか。


 今日はこれだけ。おやすみ!

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