シリアルに生きたい   作:ゴーイングマイペース

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 筆の置きどころが見つからず気づいたら文章のボリュームが普段の倍ほどに。長ければいいってもんじゃないんだから、こういうことには気を付けていたつもりだったんですけどね……


28時間目 : 私にいい考えがある! (最後まで思惑通りに進むだろうとは言ってない)

「はあ? ミニステル・マギに? 俺が? お前の?」

 

「うん、そう。どうかなコタロー君?」

 

 ネギがカモの薔薇の香りがしそうな誤解を慌てて解き、そして俺がカモを衝動的に追い出そうとするもネギがカモを擁護するなどといったことをしていたら流石に遅い時間になったので明日菜を女子寮に帰すべく近くまで送って帰ってきた。と諸々を経て現在。

 改めてコタへと魔法使いの従者(ミニステル・マギ)になってくれるよう頼んだネギだったが、どうやらコタは乗り気ではないようで特に悩むことも無く一瞬で断ってしまった。

 

「…あのなあ、ネギ。たしかに俺とお前はダチや。でもライバルでもあるんやってこと、忘れてるんとちゃうかお前。」

 

「うっ。だけど、多分そう遠くない内に間違いなくエヴァンジェリンさんとまた戦うことになるだろうし、そうなるとやっぱりパートナーがいないとどうしても不利なんだよ。それに、コタロー君なら普段から君が前衛、僕が後衛であのダンジョンに潜ってる分、エヴァンジェリンさんと戦う時だって問題無く息を合わせられるだろうし……」

 

「それもや。俺にはわざわざ女を殴る趣味ないっていつも言うてるやんか。その俺がなんでアイツ等と戦うのにわざわざ手を貸してやらなあかんのや」

 

 どうやらコタは、緊急事態であった昨夜と、自分から女に拳を振るうことは違うことである、と言いたいらしい。まあコイツは他に手が無い時にすら何もしないほど頭が固いヤツではないが、それでも今回のことはわざわざ自分の主義を曲げるほどのこととは捉えられないらしい。

 

「で、でもこの前はアレだったとしても、それでもエヴァンジェリンさんは吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)なんだよ!? 流石に今度はあんな風に油断してくれたりしないだろうし、そうなったら今度こそ僕エヴァンジェリンさんに一滴残らず血を飲み干されて殺されちゃうよ!」

 

「…むーん。……兄ちゃん、実際あのエヴァンジェリンってどんなモンなんや。封印されてるいうのは聞いとるけど、それでも本気で来られたらどうや? 今のネギで太刀打ちできるんか?」

 

「ん? そうだな、スペック的には満月のうえに半年血を集め続けてまで挑んだ昨日の夜が今の最高の力で間違いないだろうけどな。それでもやっぱり600年生きてきて最強の魔法使い、って呼ばれるまでになった経験は舐めてかかれるもんじゃないし、今度1人の時に襲われたらこの前みたいに簡単にはいかないだろうな」

 

「や、やっぱり……」

 

「…ぬーん……」

 

 俺の言葉を聞き、ネギは原作のように登校拒否になるほどガタガタ怯えるほどではないらしいが、それでも未だ見ぬ我が姉の本気に脅威を感じているらしく俯き、コタは流石に殺されそうになっている友達を見捨てるぐらいなら主義を多少曲げるべきか、とおそらく揺らいできているのだろう。

 コタの気持ちはよくわかる。俺だって、確かに姉ちゃんには今まで言葉にできないくらい世話になってきたが、ネギだって今や立派な俺の家族だ。あちらを立てようとすればこちらが立たない。人付き合いをしているならよくあることだ。

 だが、とりあえず時間を与えることはそう難しいことじゃない。

 

「とりあえずだ、ネギは今のままじゃどうすればいいかわからないだろうし、コタも友達か主義かなんてそう簡単にスパンと決めるのは難しいだろう。そこでだ、俺に考えがある」

 

「えっ?」

「考え?」

 

 

 ん? カモ? あいつなら現在進行形でレンたちと【トムとジェリー】してるけど?

 

 

 

 ○ △ □ ☆

 

 

 

「…オイ、なんで女子校エリアにいやがる世界」

 

「うん。まあ言いたいことはよくわかるけど、すぐ出ていくつもりだから睨みつけてくるのやめないちうちゃん」

 

「ちう言うんじゃねえッ!」

 

 ネギに授けた秘策を早速実行すべくネギに付き添って女子校エリアに赴いたところ、俺を見つけるなり半目で睨みつけてきた千雨と遭遇。とりあえず、ネギに先に行ってるよう手を振って指示し、今にも俺に噛みついてきそうな千雨に向き合うことにする。こういう遭遇を避けるべくできるだけ早く来て、その後隙を見計らって人目に付かぬよう出ていくつもりだったのが。

 

「そもそも来るんじゃねーよ……! 言っとくがな、お前がこの前までウチのクラスにいたことだって私は納得なんかしちゃいなかったんだぞ」

 

「俺が来たのをこれ幸いとほぼ毎日愚痴に付き合った記憶があるんだが」

 

 主に今の3-Aのことについてである。ちょうどいいどうせ来ちまったならと、俺に対して普段自分を悩ます実例を指差しては「普通はこうじゃないだろ」と延々と叫び続ける千雨を見て、逆にイキイキしてないかコイツと正直思っていた、というのはとても言えない秘密である。もう正直開き直ってるところがあるよ絶対。

 

「いくらお前だろうが男と同じクラスになった上に、子供先生なんてモンまで来たらストレス溜まんないわけねーだろうが……!」

 

「言いたいことはよくわかるけど、ホントお前損な性分だよな。そのうちハゲるぞ、女なのに」

 

「うるせー! だいたいだな、昨日の放課後だってエヴァンジェリンとやいいんちょと2人でなんかしてたらしいじゃねーか。わざわざ女子校まできて女と密会しといてその次の日もまた来るとかどういうつもりだオイ」

 

「俺だってまさか2日続けてこっち来るとは思ってなかったけど。ていうか、え、もう広まってるのかオイ」

 

 別に隠すつもりも無かったとはいえ、女子校の噂の拡散速度が速すぎて戦慄を禁じ得ない。誰だ下手人は。またか、またあの触覚腐女子か。

 

「その2人と会ってたのは本当だけど、密会云々は過度な誇張ってヤツだろ。だいたいあの2人とはそこまで意識し合わなきゃ会えないなんて程度の付き合いじゃないし」

 

「…ふんッ」

 

 何やらご不満な様子のちうちゃん。もしかして俺の『密会なんかじゃねーし! デッ、デートとかでもねーし!』なんて気持ち悪い反応を望んでいたんだろうか。誰得だよ。

 

「…もういい。で、なんでまたコッチ来たんだよ今日は。まさか今度は1年間ウチのクラスで授業受けろって言われたとか言い出さねーだろうな」

 

「流石に耐えられる気がしないからもし頼まれたとしても全力で断るわそんなもん。そうじゃなくて、なんだ、ネギのヤツの用事の付添いみたいな? ほら、保護者的な感じで」

 

「用事? なんであの先生の用事にわざわざお前が……ああ、そういやあのガキ、お前の家に居候してるんだったか」

 

「そうそう、なんか1人じゃ不安だとか言い出してな。それに俺もその用事に無関係ってわけでもないし」

 

 ていうか俺だって用事でもなきゃわざわざ女子校エリアになんか来たくない。麻帆良特有の緩い空気のおかげであまり問題は発生しないとはいえ、それでも周囲にほぼ女しかいないという環境は、言うまでもない事だろうが俺のような男が出歩くにはあまりよろしくないのである。また変な噂が発生したりしない為にも、速やかに用を済ませて立ち去らねばならない。

 

「…チッ。いいか、その用事済ませたらさっさと出てけよ。んで今日の放課後付き合ってもらうからな!」

 

「ハイハイ、言われなくてもわかってるって。あと、放課後も了解。いつものとこでなー。

 ……あいつ、あの調子でこの後大丈夫なのかね」

 

 そうして微妙に燻りを残した表情で先に行ってしまう千雨。アイツ、朝からあの調子で今日1日あのカオス状態がデフォルトなクラスで落ち着いて授業を受けることができるのだろうか。

 どうしよう、ほぼ間違いなくそのストレスをぶつけまくられるだろう放課後が正直ちょっと面倒になってきたんだけど。

 

「いやー、普段でもあの調子でハゲそうなくらいストレス溜めてるみたいだし、無理じゃないかなー?

 で、なに? エヴァちん委員長と続いて、今日は千雨ちゃんも毒牙にかけるのかな、色男さん?」

 

「わかってるなら優しくしてやれよお前ら。ていうか盗み聞きしたことをせめて隠そうとしろよパパラッチ女」

 

「えー? どうせ最初っから気づいてたろうし、聞いててよかったってことだったんじゃないのー?」

 

 そう言いながら千雨と入れ替わるように現れたのは、麻帆良のパパラッチこと朝倉和美である。どうやらまだ朝も早いにも関わらず一仕事してきたようで、首にカメラをかけ胸元にはボイスレコーダーが収まっている。

 ていうかお前、悪びれもせずに盗み聞きしてましたって言ってるけどそんなんだからパパラッチなんて呼ばれてるってわかってる?

 

「まぁまぁ。で、何? 昨日は実際のところ、一緒に買い食いしてたっていう委員長はともかく、エヴァちんとはなにしてたの? 茶々丸さんの話だと、エヴァちんがわざわざコッチに呼びつけたってことだったけど」

 

「お前にゃ関係ねーことだよ。ていうかそんな意味のあることしてたわけでもなかったし」

 

 実際最後の脅し付きの要求以外は、予想以上に力を付けていたネギに対していいようにされた姉ちゃんに対してニヤニヤしただけという、面倒そうな噂の拡散という厄介事には釣り合わなさそうな不毛な時間だったわけだし。

 

「えー何それ、まっすます怪しいなぁ。ホントはナニしてたんじゃないのー?」

 

「貴様まで俺をロリコン呼ばわりするのか」

 

「だってさー、世界アンタ、ふーちゃんふみちゃんと世界樹で「待て、どうしてそれをよりによってお前が知ってる」そりゃあの子たち別に隠してないし」

 

 唐突に訪れたパパラッチにロリコン呼ばわりされてもしょうがない証拠を掴まれている、という社会的信用失墜の危機に背中に冷や汗がダラダラ溢れはじめるのが抑えられなくなる。ていうかアイツ等なんで話してるの? え、どこまで広まってんの?(震え声)

 

「あはは、まあ安心しなよ。スクープにもならなそうなもんに興味ないし。…まあ、一部大騒ぎしそうな人らはいるけどね。この前アンタのクラスであの双子のことで大騒ぎしたっていう何某君とか」

 

「ちょっと待て、なんでそんなこと知ってる。俺お前に話した覚えなんてないんだけど」

 

「そりゃ女子中から出戻りした男子がどうなったかなんて面白そうなこと、この私が調べないわけないじゃん♡」

 

 この女、暗に「私にも何かないと記事にしないまでもアンタのクラスに口を滑らせるよ?」と言ってやがる。そうなれば、いくらまた頭のおかしいロリコンが襲い掛かって来ても容易に返り討ちにできるとはいえ、明日から俺もロリコンの称号から逃げられなくなるのは最早確実である。

 

「あーもう、わかった。わかったよ。千雨の次にお前の取材に付き合う、それでいいだろ。

 いい加減ネギを待たせるのも悪いから俺はもう行くぞ」

 

「あっ、待ってよ。私も一緒に行くから! へへっ、ラッキーラッキー♪」

 

 ほぼ苦し紛れの提案はどうやら和美のお気に召したらしく、いい加減にと女子中校舎に向かった俺の後を鼻歌混じりで追いかけてきた。

 おかしいな、まだわざわざ女子中まで来た用事すら済ませてないのに、なんでこんなに気力が削がれてるんだろう……。

 

 

 

 ○ △ □ ☆

 

 

 

「エ、エヴァンジェリンさん! これ、は、果たし状ですっ! 今度の学園都市大停電の日に、改めて僕と決闘をしてくださいッ!!」

 

「……なに? 果たし状だと?」

 

 そして和美とも別れ現在は女子中の昇降口。俺があらかじめ呼び出しておいた姉ちゃんが待っていただろうそこへ到着すると、ちょうどネギが俺が提案した作戦を実行していたところだった。

 おそらく俺が早速何かしらの策を用意して来たのだろうと考えていただろう姉ちゃんは、俺ではなくネギが果たし状などというものを用意してくるというこの状況に驚いているようで、怪訝そうに眉を顰めてネギが差し出してきた果たし状を見やっている。

 と、そこでこの場に現れた俺に気づいたようで、ギロリ、と視線で「お前の入れ知恵だな」と言ってきたので頷いておくことに。

 

「ハッ……ガキが一丁前にこの私と決闘しようというのか? 言っただろうネギ先生、私は悪い魔法使いだと。その私がわざわざ敵の提案に自分から乗っかるような真似をするとでも?」

 

「世界さんが言ってました。『姉ちゃんって長いこと生きてきたっていうのもあってかなりプライド高いんだよ。おまけに油断しきってたとはいえ1度お前に負けてるしな。だから決闘でも申し込めばグダグダ言っても最終的には頷くはずだぞ』って」

 

 ひとまずワルぶっておくことにしたらしい我が姉だったが、それに返したネギの台詞にこちらにグリンと首を向け、次いでズカズカと足音荒く歩み寄ってきた。

 

「…世界、お前は次から次へとこのぼうやに余計なことを吹き込みおって……!」

 

「待て待て待てって姉ちゃん。別にネギだけに入れ込んでるわけじゃない。これは姉ちゃんにもメリットのある話なんだよ」

 

「なに? どういうことだ」

 

「……満月を待つ必要も無く、姉ちゃんがこの麻帆良で全力の戦いができる日が近いうちにある。それが大停電の日なんだ」

 

「なんだと!? どういうことだ世界!」

 

 そう、これが俺の策である。原作のように茶々丸が『登校地獄の他にも、大量の電力を消費してマスターの魔力を抑え込んでいる結界がある』ということに気付くより前に、結界があることと、学園都市大停電時にシステムにハッキングをかければその結界を無効果できるということを教えることにより、ネギに対姉ちゃん戦への万全の準備の時間を、コタにはネギとの仮契約(パクティオー)について考える時間を与える。

 そして姉ちゃんにも万全最強状態で戦えるチャンスがある、と教えることで先の要求も叶えることが出来るというまさに一石三鳥の作戦というわけだ。

 

「まあ詳しくは茶々丸も一緒に後で話すよ。どうだ? これなら文句ないだろ?」

 

「…フンっ。

 ――おい、ぼうや!」

 

「は、はいっ!」

 

「いいだろう、その決闘受けてやる。ただし、今度戦う時は前のように上手くいくとは思わんことだ。……私が生徒だということは忘れ、本気で来るがいい。ネギ・スプリングフィールド」

 

「――はい!」

 

 どうやら期待通りに話は纏まったようで、ネギは笑顔で姉ちゃんに応えてから、イキイキとした足取りで職員室のある方向へと歩いて行った。まだ決闘に勝ったわけでもないのに陽気過ぎるという気がしないでもないが、まあずっと不安気な顔をしているよりは本人にも周りにもいいだろうし問題ないだろう。

 

「さて、じゃあ纏まったところで俺も帰るわ。どうも昨日のことで変な噂が広まってるみたいだし、その調子で今日もまた変な噂たてられてたらたまらんし」

 

「うむ、ご苦労だった。

 ――ああ、ちょっと待て世界」

 

「え? なんだよ姉ちゃん。俺早く行きたいんだけど」

 

 これ以上この場所にいる理由もないと、俺が本来いるべき男子校エリアに向かおうとした俺を呼び止める姉ちゃん。もう用は何もないはずだが、一体どうしたというのか。

 

「いやなに、姉の言いつけをしっかり守ってみせた弟に対する私なりの褒美をやろうと思ってな。――今夜ウチに来い、たっぷりと手合わせをしてやろうじゃないか」

 

「…ゑ? 本気モードで戦える作戦を持ってきたことで100倍メニューは無くなるんじゃないの?」

 

「確かにお前はよくやった。だから100倍メニューは無しだ。だがな……別に修行そのものが無くなる、などと言った覚えはないぞ? なに、そう不安に思うことは無い。せいぜい『闇の魔法(マギア・エレベア)』も込みで闘り合うといった程度だ」

 

「それって全力じゃなくても本気でヤるからなってことだよなぁ!?」

 

 考えていた結果と違う台詞に大声で抗議するも、そんなものはどこ吹く風よとクックックなどと笑いながらドS全開でこちら見やる我が姉。まるでこの前の仕返しだとでもいうようにである。

 こんにゃろう、最初っからこのつもりだったなチクショオオオオオオ!!!!!

 




・仲良く喧嘩しな
 なお元ネタと違いネズミの方がほぼ抵抗できないままネコにイジられまくっている模様。


・イキイキちうちゃん
 原作でもあの環境にいながら最終的にリアルに充実を感じていたと図らずも証明されてたし、ある程度開き直るなりストレスの発散口があるなりしたならイキイキしているようにも見えるんじゃないかな。


・パパラッチ、流石の情報収集能力
 原作では、パパラッチ呼ばわりされていてもある程度の節度はしっかりあるらしい。
 じゃあなんで主人公にはこんなことを? イヤ、それは……ねぇ?
 なお主人公は態度ほどイヤがってはいない模様。


・決闘です!
 色々と前倒しにして逆に時間を作るという主人公渾身の作戦。だが吸血鬼からは逃げられない。



 普段の倍書いてようやく「大停電」という言葉を書けるところまでくると言うこの有様。いったい決闘本番を投稿できるのはいつになるやら……。

 あ、活動報告で簡易ながら投稿予告を始めることにしたので、必要だという方は是非ともご利用いただけると嬉しいです。

 それでは今回はここまで。感想もぜひぜひお願いします。

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