「で、2人の魔力を追ってきてみたわけだけど」
現在、割と予想外なようなそうでもないような光景が眼前で繰り広げられています。
『ちょ、貴様さっきから
『すみませんがエヴァンジェリンさん、勝負の世界というのは決して油断は許されないものなんです! ――そう、決して……!』
『まだ10歳のガキの癖して妙に実感の籠った声で勝負の世界なんてものを語るな! くっ、イギリスの魔法学校はいったいガキに何を教えているんだ……!?』
ごめん姉ちゃん、それたぶん俺のせいだわ。
まあ台詞だけだと何をしているのかいまいち伝わりにくいだろうから説明しておくと、ネギが風の中位精霊を十数体召喚し姉ちゃんに対してチマチマとした攻撃を繰り返させており、それに対処すべく姉ちゃんが魔法薬を取り出して魔法を使おうとすると今度は術者であるネギが片端から『
つまり、良い勝負どころかネギがあの姉ちゃんを相手に善戦しているのだ。というか見た目だけなら完全に姉ちゃん劣勢である。
あっ、あんなところから取り出した触媒まで吹っ飛ばした。敵の挙動を見逃さない目ざとさとか相手の邪魔をするタイミングとかが既に10歳の領域を超えている気がする。
『さあ、これで詰めです!
『く……思っていた以上にやるじゃないか、先生』
そうこうしている内に女子中等部寮の屋上に着地する2人。姉ちゃん追い詰められたー!
などとふざけている間にも状況は進む。約束がどうのサウザンドマスターがどうのといった会話を交わした後にとうとう姉ちゃんの
『貴女は、茶々丸さん……そうか、エヴァンジェリンさんの従者なんですね』
『ふ…その通りだ。さっきまでは姑息な戦法にいいようにやられたが、こうなればそうはいかん。わかっているだろうネギ先生。パートナーのいないお前では私には勝てんぞ』
『……申し訳ありませんがネギ先生。マスターの命令ですので』
さて、これで状況は2対1。さっきまでのように自分の
……ん? コレは…そうか、そういうことか。
『なるほど、確かにこうなっては今度は僕が劣勢ですね……』
『ほう。その歳で妙に小利口な戦い方をするだけはあって今がどういう状況かよくわかっているようじゃないか。そこまで理解しているなら、大人しく私に血を吸われてもらおう。……ふふふ、なかなか手こずらせられたが、ようやくこの時が来たか。お前がこの学園に来てから今日この瞬間を待ちわびていたぞ……』
『……参考までに聞いておきたいんですけど、どうして僕の血を求めるんですか?』
そうネギが問いかけると、姉ちゃんの口から出るのは姉ちゃんをこの麻帆良学園都市に縛り付ける呪いをかけたネギの父親、サウザンドマスタ―への怒りの言葉。そしてその呪いを解くにはサウザンドマスタ―の血縁、つまり息子であるネギの血が大量に必要だという説明であった。
そうしてネギの質問に答えた姉ちゃんは、傍目に見ても抑えきれないほどに興奮しているようだ。そんな姉ちゃんに、さらにネギが語りかけた。
『なるほど、よくわかりました。…しかし、随分余裕なんですね? いくらエヴァンジェリンさんが優勢になったとは言っても、まだ決着もついてないのに、仮にも
『ハッ。たしかにお前は見習い魔法使いにしては知恵が回るようだ。だが言ったはずだぞ、パートナーのいないお前ではどうしたってこの状況を引っくり返すことなどできんとな』
『たしかにそうです。あなたの元にこうして茶々丸さんという味方がやってきたのに対して僕はたった1人。たった1人分の差とは言っても僕の劣勢に変わりはありません。
――でもですね、エヴァンジェリンさん?』
『ん? なんだ、この期に及んでまだ何か言い残したことがあるのか? いいだろう。お前のあの健闘に免じて聞いてやらんでも――』
『――! マスター、危ない!!』
『む!?』
『――うおっ、ロボットやん。まさか腕をそんな風にして避けられるとは思わんかったわ』
追い詰められているというのに未だに落ち着きを崩さないネギに対して、勝者の余裕を早くも見せつけネギに末期の言葉を言わせようとしていた姉ちゃん。しかしそこで突然茶々丸が焦りを滲ませた声と共に腕を文字通り伸ばし、ネギに少しずつ歩み寄りつつあった姉ちゃんを回収した。
そうして先ほどの茶々丸と同じように女子寮の屋根に降り立ったのは、別に意外という事もなくコタであった。
っておいコタ。いくら手加減してたとはいっても、一般人もいる寮の屋根に氣弾をぶっ放してんじゃねえよオイ。
『クッ、お前は……世界のところにジジイが押し付けた狗族のガキか……!』
『当たりや。そういうアンタはこの学園に封じられてるっちゅう吸血鬼やな。兄ちゃんから聞いてるで。
っと、ネギ、おそなって悪かったな』
『ううん、ありがとうコタロー君。――さあ、エヴァンジェリンさん! これでまた数の上では互角ですし、魔法を使う為の触媒である魔法薬も全て僕に吹き飛ばされた今の貴女ではいくら茶々丸さんという従者がいても僕たちには勝てません! 僕も先生として生徒に酷いことはしたくありませんし、大人しく降参してください!』
『……マスター。この状況から私達が目的を遂行できる確率は既に30%をきっています』
『……なるほどな、妙に大人しい様子でダラダラと喋っていたのはこの為か。正直なめていたよ、ネギ先生。
しかし解せんな。その歳でその状況対応能力に油断、容赦の無さとは…最近の魔法学校とやらはそんなことも教えるのか?』
『いえ、これも全て世界さんの教えの賜物です』
『まあ兄ちゃん特製のイカれたダンジョンでいっつも修行しとるからな俺ら。ネギがアンタとどう
『アイツの仕込みかァーッ!!』
『ああ、マスターがこんなに楽しそうに……。流石です世界さん(REC)』
毎度毎度あのバカがァーッ! と吠える我が姉。 おいおいそんなに大声出したら近所迷惑じゃないか(すっとぼけ)
『……どうやらその様子だと大人しく降参してくれる気はないようですね。仕方がありません、これもまた戦いの常です。
『正直女に手を出すのは趣味とちゃうんやけど、おんなじ釜の飯食っとるダチに手出されといてそんなん言ってられへんしな。悪く思うなや』
そしてそして、まさかのネギ&コタが姉ちゃんに大勝利である。ていうか俺わざわざここまで来たけど何もしないまま全部終わったな。……あれ? もしかしてこれ俺が来た意味ない? ヤダー!
『コラーッ! アンタたちーッ!』
と、俺が無駄足を悔いている内にそんな声を響かせて爆走してきたのは明日菜である。今頃来ても、もう全部終わってるんだけどなー(やさぐれ)。
まあ流石にこれ以上事態をややこしくすることもないし、ちょっとタイミングがアレだけど俺が出てってここは穏便に片付けよう。などと考えている内に明日菜が走る勢いそのままに跳躍し、飛び蹴りをかました。
『ウチのクラスメイトに何してんのよ、この変質者どもーッ!!!!!』
『へぶっ!?』
『もごっ!?』
『……は?』
『……こんばんは、神楽坂さん』
……えっ、そっち?
『こんばんは、じゃないでしょ茶々丸さん!? それにエヴァンジェリンちゃんも!
アンタたち! 二人がかりで女の子イジめるような真似して、答えによってはタダじゃ……って、ネギ!? それにコタ!?』
……うん、まあ色々言いたいことはあるけど。
「とりあえず落ち着けバカ」
「いたっ。って何、今度は世界!? え、なに、コレどういうことなのーッ!?」
この場にいる大半の人間が呆然とする中、ただ1人女子中学生の声が春の夜空の闇の中に響いていった。
・原作主人公くん成長し過ぎ……し過ぎてない?
えっ? 原作キャラの魔改造って二次創作のテンプレじゃろ?(すっとぼけ)
・あの、少年達の台詞の端々に色々見えてくる気がするんですけど
2人はマブダチ!
・あともう少しでネギくんたち大勝利だったのに……
登場と同時に一気に状況を変えるなんて、さっすが原作メインヒロインは違うなぁ。え? そういうことじゃない?
さー、オリジナル展開ですよオリジナル展開。これはもう感想どっさどっさ来るんやろなぁ。(チラッチラッ
などと地味にやる気の素を求めつつ今回はここまで。
ん? いったいこの後どういう展開になっていくのかって? 大雑把にしか決めてないよ!