麻帆良に轟く俺の評判は良くも悪くも『悪名』である。
別にそのことに後悔があるわけではない。それは俺が今の実力を身に着けるためにしてきた努力のある意味結晶でもあるし、またその努力をしなければ冗談抜きで今日まで生きていられなかったと言えるぐらいには修羅場も経験してきた。
が、やはり『悪名』ではあるので当然俺のことが気に入らない連中も麻帆良には一定数存在する。例えばほぼ毎日通学時に襲撃をかけてくる武道系サークルの連中などがその最たる例と言えるだろう。彼らの言い分としては麻帆良の武道家たちのアイドルとも言える古の扱いが最近ぞんざいすぎるという、そんなもんあのバカンフーに直接言いにいけよ、と言ったものなのだが聞いちゃくれないのでこちらも毎日いちいち地に沈めてやらなきゃならなくなる。
そんなバカ騒ぎが大好きなバカ達が集まるのが麻帆良学園であり、そんな異常極まる魔窟にすら轟いているというだけで俺の評判がどういったものかもまた理解るというものである。
まあこんなしょうもない例までグダグダと挙げていったい何が言いたいのかと言えば、
「なあ、私言ったよな? あんまりド派手に非常識なバカやんなって言ったよなぁオイ?」
「いやぁ、そこはホラ俺にも言い分ってものがですね「ア゛ア゛ン゛?」ハイ僕がおバカさんでしたスイマセン」
その『“麻帆良にすら轟く”悪名』の意味をある意味麻帆良で一番正しく理解できるちうちゃんマジ麻帆良の良心! キャーステキー! ということである。「おい聞いてんのかコラ」ハイキイテマス。
と、現在は夏休み明けの放課後、スタブとかいう妙にパチモン臭い喫茶店で友人、のはずだが素直にいうには会う度攻撃的なことが多い気がする少女、長谷川千雨とティータイムである。といってもそんな字面通りの平和的なものではなく、部活に向かおうとしたところを遭遇したと思ったら強制連行された次第。つまり本日の部活はほぼ確実にサボりだ。明日は高い高いしてやるから許せ風香、史伽。
一応言っておくと、このようなちうちゃんの愚痴大会は俺たちが知り合ってから定期的に開催されている。そしてまず俺のやらかした所業についての文句から始まるのが定番のパターンである。
そのあたり愚痴る相手をどう考えても間違えていると思わないでもないが、そもそも他の住人達だと何が起きても「麻帆良だからね!」と気にしないか、異常を理解できてもわざわざ文句を言ったりしない程には麻帆良に染まった連中ばかりなので言ったところで意味が無い。
俺? 少なくともこの麻帆良では自分からおかしなことをやらかした覚えはない。何か騒動が起きる度にそのレベルを上げていくこの街がおかしいのである。その為いくらかは本気を出して対処しないとこちらの身がもたないのだ。最終兵器扱いを喜んだこと? ねーよ!
ともかく異常でありながらもそれらを異常だと
「あの他所と比べてどう見ても先を行き過ぎな工科大の連中が作った恐竜ロボをデコピン一発で粉微塵に粉砕したり」
「イヤあれはホラ、知り合いの娘さんがピンチだったから……」
助けた後に確認したら弐集院先生の娘さんだった。後日弐集院先生から肉まんを奢ってもらった。
「体育祭の学園全体鬼ごっこの前哨戦とかいってお前に勝負を挑んできた麻帆大航空部のセスナの操縦席にピンポイントで石命中させたり」
「飛行機ぶっ壊したら不味いかと思って……」
その後操縦者だった部長さんはちゃんと助け出し、飛行機も無事着陸させた。たかが鬼ごっこのためにあんなの引っ張りだしてくるとかホントこの学園頭オカシイわ。
「極めつけにはたかが学生の身で学園祭で億なんて額の売り上げを叩き出してみるとか」
「ちょっと趣味のためにお金が必要になって……」
魔界の王女様から借りた『お友達』による上級編の演出が一際好評だった。でもラスボスとしてはっちゃけまくっていたお姉さん自重してください。
「たかが学生の分際で億も使うような趣味ってどんなんだアホ! ていうかどれもこれもおかしいだろ! イヤ対処できるお前も大概おかしいがまだ私の言いたいことが理解できるからいい。が、そもそもそんなおかしい手段で対抗するしかねえ事態を起こすこの学園はなんなんだよ! 違うだろ! フツーの街はロボットが暴走してたりしてないしフツーの学生は街中で飛行機飛ばしたりしないだろ! そんであんなリアルバケモノみたいな仕掛けが蠢くダンジョンをクリアできたりもしないだろ!?」
「うんうんそうだねちうちゃん「ちう言うな!」ええー……」
ていうか来てくれてたんだ。参考までにどこまでクリア出来たのか聞きたいが、それをやると火にガソリンを注ぐことになるのが目に見えてるので流石に自重する。
「あー、千雨。お前の言いたいことは当事者だけにイヤになるほどわかるんだが、一旦落ち着け。注目浴びてる」
「ぐっ」
ウェイトレスのお姉さんが凄みのある笑顔でこちらを見てきているから。すいません静かにしてます。
「……はぁ」
「落ち着いたか?」
「ああ……いつもワリーな。だけどなんだ、この毎回私を襲ってくるどうしようもない空しさは……」
そう言って再び溜息を吐く千雨。同意の言葉をかけてやりたいのは山々だが、その前にどうしても言わなければならないことが1つ。
「そりゃあ相談相手が俺だからじゃないのか」
「テメーが言うんじゃねえッ! 一番常識から外れてる奴が一番常識がどういうものか知ってるとか。ちくしょう、これだから麻帆良ってヤツはッ」
不本意ながら最終兵器扱いされてる俺に愚痴るという選択肢しかない麻帆良一の常識人の不憫さに全俺が泣いた。
「――てなことがあったわけよ」
「あー、長谷川も相変わらずっスねー。アタシ等みたいに色々諦めちゃえば楽になるのに」
「一般人の身で認識阻害が効かなきゃああなるのはしょうがないだろ、何も知らないんだから。ていうかお前同じクラスなんだから気にかけてやりゃいいのに」
「イヤっスよメンドイ。ただでさえ魔法生徒なんてメンドクサイものやらなきゃいけない身なのにこの上面倒事抱えるとか。そりゃ不憫だとは思うけど私ゃ関係ないしー」
「ミソラ……面倒面倒言いスギ……」
諦めろココネ、こいつは多分生まれ変わってもこういうヤツだ。
結局あの後は千雨の愚痴大会が日が暮れるまで続き、アイツがそこそこスッキリした顔をして寮へと帰っていくまで続いた。ちなみに割り勘だった。ちうちゃんマジネット界最高のNo.1アイドル!
そして明けて休日。同年齢の魔法生徒として仲が良い春日美空と、ココネ・ファティマ・ローザ、この2人が見習いシスターをやっている教会の掃除を手伝う約束をしていた俺は、その約束通り教会へと赴きお掃除中である。
ちなみに今は、自分が高い所にある窓を掃除したいと言い出したココネを肩に乗せて拭き掃除をさせている。ココネがイイコ可愛い過ぎて生きるのが辛い。
「そういや今日急に魔法先生や魔法生徒は集まるようにって学園長が言ってたらしいっスけど、世界は何か知ってるっスか?」
「イヤ、俺もそれだけで詳しいことは何も知らない。まあわざわざ集会開こうってんだから何かあるんだろ」
「なんか厄介事じゃなきゃいいんだけどねー。ホンット魔法生徒なんて損するばっかっスよ。もうサボっちゃおうかなー」
「何ノ理由もないのにサボったりするト……シスターシャークティに怒られるヨ……?」
そのココネの言葉にウゲッと女子中学生が上げる悲鳴としてはどうなんだソレという声を上げる美空。いくら仮契約の主とは言え年下の幼女に諭されていてコイツ大丈夫なんだろうか。
と、拭き掃除が終わったようなのでココネを下ろしてやる。ご褒美に良い子良い子と頭を撫でるとエヘヘと嬉しそうに笑うココネ。ココネマジ天使。本物の天使とこうも容易く触れ合えるとは麻帆良の教会はバケモノか。
「っていうかさっきからココネへの接し方が妙に優しくてキモいんスけど」
失礼な。
「いいだろ別に。ただでさえ普段から心労が溜まるんだ、こういう時ぐらい可愛いモンを素直に可愛がって何が悪い」
「うわっ開き直ったよこの変態! 癒しを求めるのは勝手だけどそれをウチのココネに求めるのは正直アレっスよアレ!」
「……しょうがないじゃん、俺の友達はどいつもこいつもイロモノがほとんどだしいいじゃんか。ココネみたいな
「……なんか、ゴメン……」
脳裏に浮かぶは我が姉貴分であるエターナルロリ、隙があれば悪戯をしかけてくる双子ロリ、顔を合わせる度に際物ドリンクを押し付けてくるデコロリ。おかしい、ペットなど可愛いもので癒されるのは科学的に証明されているハズなのに癒しをくれるのは今目の前にいるココネしかいない。どういうことだ。
その後美空と2人揃って麻帆良って何だと遠い目をしているとココネが俺たちの頭を心配そうに撫でてくれた。思わず2人揃ってココネマジ天使と口に出してしまった俺たちは決して間違っていないと思う。
そして告知通りに世界樹前広場に集まった麻帆良所属の裏の関係者たち。知り合いと挨拶を交わし待つこと数刻、学園長がやってきた。って、ん?
「……アレ、世界。あの学園長が連れてきた子、私の見間違いじゃなければ犬耳と尻尾があるように見えるんスけど」
そう、今美空が言った通り学園長が1人の子供を連れてきた。
ギザギザ爆発頭の上には犬耳、学ランを羽織り腰の後ろには尻尾が生えており、意思の強そうな目をしたまだまだヤンチャ盛りそうな男の子だ。
あれ、ちょっと待って待ってあの男の子ってもしかしなくとも
「うむ、集まっておるな。さて、今日皆を集めたのは他でもない。察している者もおるじゃろうが、今日から我らの新たな仲間となる“彼”を紹介する為に集まってもらったのじゃ。ほれ、挨拶しなさい」
「おう、俺の名前は犬上小太郎や。今日から麻帆良で世話んなるさかい、よろしく頼む。なんでもこの街は西洋魔術師の中でも骨のある奴らがたくさんいるとかで楽しみやわ!」
そう言って居並ぶ面々――特に俺――を見てくる小太郎君。
あはは、ワンパクそうだけど結構良い子そうじゃないか――え、ちょ、え、えええええええええええええええええええええええええ!?
・スタブ
何のパチモンとかどっちがとか考えてはいけない。
・ちうちゃん
なんで唯一愚痴を言うことが可能なヤツがあんなんなんだ……ッ!
工科大のおふざけに巻き込まれたのを主人公が助けたのが出会い。
日々麻帆良で起きる騒動を「麻帆良だから仕方ない」では済まさない主人公に出会い一瞬希望を見出すが、その主人公が一番アレだったので結局頭を抱えることに。
が、他に愚痴れる相手もいないために折角見つけた同類(?)を逃がすかと定期的に鬱憤をぶちまけている。しかしその後必ず主人公を見てジレンマに悶えるまでがセット。
・魔界のお姫様姉妹
妹さんとは割と付き合いがあるが、お姉さんとは学祭時に初めて出会う。妹さんについては次回もしくは次々回で。
あと、お姉さんについては原作でラスボス云々言っていたので衝動的にやった。でも後悔はしていない。(キリッ
・認識阻害
まあ数あるネギま二次と同じようなもの考えてくれればおkです。
・謎のシスターコンビ
謎の美少女シスター
ぜーんぶアイツに任せときゃだいたい大丈夫じゃないっスか?
謎の美幼女シスター
とっても強イ……けど、優しイ……
主人公が美幼女シスターと出会ってそうそう懐かれたことから美少女シスターとも仲良くなる。偶に教会を訪れてはお勤めを手伝ったりする仲。
また麻帆良で魔法関係の厄介事があると真っ先に主人公を頼るくらいには深い付き合いをしている。
・ちょっと謎の美少女シスター薄情過ぎませんかね
原作見る限り、決定的にどうしようもなくなるまでに巻き込まれるまで自分は無関係だと明後日の方向を向くのがこの子のデフォ。だけど同時にアスナが殺されそうと見るや飛び出そうとはしたからそこまで小物でもない模様。
しかしちうちゃんの場合そこまで切羽詰ってるようには見えないらしい、というのがこの小説の設定。
まあ、現実の人間社会もだいたいこんなもんだし別に悪いこっちゃないよね(暴言)
・色物ロリのバーゲンセール
日々あらゆるロリに心労を負わされる主人公の明日はどっちだ。
そしてココネマジ天使!
・アレッ? コタ君登場はやすぎねえ?
詳細は次回ッ!
あと1、2話で下拵えが終了しそうです。
しかし、深夜のテンションに任せて書いたので色々とアレな所が目立つ我が小説もようやく形が整ってきた……。原作突入まで書きあがったらタグなんかを整理しよう。(白目)