オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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06.転生

クロムとアインズは冒険者になる為の準備を進めていた。アインズは戦士になると言っていたからクロムはどうしようかと迷っているのだ。魔法が使えないわけではないが、第三階までの魔法しか使えないので、魔法詠唱者(マジックキャスター)は無しだ。となると、感知能力の長けているのでレンジャーでいいやと思い、レンジャー用の武装を用意していると、誰かが扉をノックする。

 

「入っていいぞ」

 

「失礼します」

 

入ってきたのはデミウルゴスだった。

 

「デミウルゴスか。どうした?」

 

「はい、クロム様にお話がありまして」

 

「話?それはアインズに秘密でということか?」

 

「いえ、アインズ様がおっしゃっておられたことです」

 

アインズが?と思いつつもデミウルゴスの話を聞く。

 

「クロム様、アインズ様はどうやらこの世界を征服するおつもりです」

 

「……へぇ」

 

突然のことで驚いたが、アインズはこの世界を征服するつもりだったのかーと納得することにした。

 

「そこでお二方には別々の場所で冒険者になってほしいのです」

 

「別々?二人一緒じゃダメなのか?」

 

「ダメという訳ではないのですが……」

 

「まあ、デミウルゴスなりの考えがあるんだろう。わかった」

 

「私のわがままを受け入れてくれていただきありがとうございます」

 

そう言ってデミウルゴスは深く礼をする。頭をあげた後、デミウルゴスは自分の仕事をするためにクロムの部屋を出ていった。

 

「それにしても世界征服か……まあ、面白そうではあるな。っと、忘れてたけど……これどうすっかなー」

 

クロムは魂を手にして考える。転生が可能なのか試してみたいという欲求があるのだが、クロムの身勝手な行動のせいで何か大変なことになってしまうのではないかという不安もあるのだ。そこでクロムはアインズを呼び出すことにした。

 

 

 

 

 

数分後、準備をし終えたアインズがクロムの部屋にやって来た。アインズは漆黒の鎧を身につけ、バスターソードを二本も背負っていた。

 

「アインズ……何それ?」

 

「《上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)》で作った鎧と剣です。ところで相談とは?」

 

「ああ、それなんだが……この魂が転生できるか試してみたいんだが、何が起きるか分からないんだよな」

 

「そうですね……ユグドラシルでは魂の転生なんてできませんでしたからね」

 

「それに転生に成功したところでこの魂の持ち主が俺達に従うかどうかも分からないしなー」

 

「でもモノは試しです。やってみましょう!」

 

「そっか、ギルド長殿がそう言うなら遠慮なく」

 

クロムはインベントリから転生に必要なアイテムを取り出し、魂に使用してみた。すると、魂はまばゆい光を放ったと思った次の瞬間、クロムとアインズの目の前にあった魂は綺麗サッパリなくなっており、その代わりに人間……いや、アンデッドが立っていた。

 

「おっ!どうやら転職アイテムで転生できるみたいだな!うははは!!」

 

「凄いですね……これ、ナザリックの戦力増強にもなりますね」

 

転生させられたアンデッドは何が何だかわかってないようだった。

 

「お前、名は何というのだ?」

 

アインズがアンデッドに尋ねる。

 

「に、ニグン・グリッド・ルーイン」

 

「あ、あの時の部隊の隊長か!なるほどねぇ~……アインズ、コイツ特殊スキルみたいな能力があるからいい拾いもんしたぞ!!」

 

「ほぅ?それは良いことを聞いた」

 

「な、なぜ私は生きているのだ?私はあの時死んだ筈では……」

 

生き返ったと表現していいか悩むが、アンデットとして現世に蘇ったと考えようとクロムは思った。混乱するニグンにクロムがいくつか質問する。

 

「ニグン…だったか?さて、お前にはいくつか聞きたいことがある。その返答によっては……まあ、どうなるかは言わない」

 

「……」

 

ニグンが唾をのむ。

 

「お前は生き返った。以前に仕えていた主のもとへ戻るか、それとも今後俺達に仕えるか。どちらがいいと思う?」

 

「そ、それは……あなた達です」

 

「ふむふむ……じゃあ、お前が捕虜となったとしよう。お前は情報を相手に喋るか?」

 

「わ、私の身体には三つ以上の質問に答えると自害するという魔法がかかっている」

 

「へぇ……?じゃあそれらをふまえて聞くぞ。お前は今後、俺達に絶対に忠義を誓うか?」

 

ニグンは汗を流す。クロムはニヤニヤしながら返答を待った。ニグンがどういった反応をするのかが楽しみなのだ。国を裏切るか、クロム達に仕えるか。それともクロム達に仕えるフリをして国に情報を持ち帰ろうとする可能性もあるが、ナザリックからは逃れられない。だからこそどんな選択をするのかが楽しみなのだ。ニグンはゆっくりと口を開いた。

 

「あ、貴方達に絶対の忠誠を誓います」

 

声は震えていたが、嘘ではないようだ。

 

「そうか、それでは貴様は今日、この日からアインズ・ウール・ゴウンに仕える僕となった。俺の事はクロム様と呼べ。そして俺の隣に立つ御方こそ、お前達の主でありこの世界の支配者となられるアインズ・ウール・ゴウン様だ。呼ぶときはアインズ様と呼ぶんだぞ?」

 

クロムの口から世界の支配者という言葉が出たときのアインズの反応は面白かった。

 

「わ、わかりました」

 

「それではコイツの指揮権は俺がもらうということでいいかなアインズ」

 

「ああ、もとはと言えば貴方の所有物だったんだからな。ただし、借りることもあるかもしれないからその時は頼むぞ?」

 

アインズはニグンの事を見た。ニグンはヘルムの隙間から見える眼光に脅えていたが、クロムの顔よりはマシなせいか普通に対応していた。

 

「さて、ニグンの事を全階層守護者および全ての僕に通達しなければな……あ、ニグン。お前は俺がいない間第八階層にある『死者の館』の管理を命ずる」

 

「し、死者の館……ですか?」

 

「ああ。その館には多数のレイス系のモンスターが配置されているんだがな……コイツら俺と俺の作成したNPCの言うことしか聞かないからな。そこでお前に管理してもらおうと思ってな。俺が創り出したお前の言うことなら聞くだろう。それとお前には数体の配下を与えよう」

 

「よ、よろしいのですか?私のような新米に配下を……」

 

「お前のスキルを有効活用するためだ。その代わりしっかり管理しておけ」

 

「ハッ!しょ、承知しました!」

 

「それでは準備も終わったことだし、行くとするか」

 

ニグンを部屋に残し、アインズとクロムが部屋を出る。アインズは部屋を出てすぐにアルベドを呼び出し、ニグンについて全員に伝えるように命令をした。

 

「それじゃあ行きますかクロムさん」

 

「あ、そう言えば言い忘れてたけど……俺アインズと別行動することになったから」

 

「えっ!?ちょ、そんな急に!!」

 

「大丈夫大丈夫。ちゃんと準備しておいたから。ほら来た」

 

クロムが指を指した方向を見ると、そこにはナーベラルとシュルツが立っていた。

 

「ナーベラルがアインズと、シュルツは俺と。アインズはエ・ランテルへ、俺はバハルス帝国ってところに行くってことでよろしく!」

 

そう言って俺とシュルツはナザリックを飛び出して行った。後方からアインズが何か言っているのが聞こえるが、敢えて無視してシュルツと一緒に帝国を目指すのだった。




こうしてニグンはアンデットとして復活しました。
さてさて、次の話では一体誰が出てくるんでしょうねー

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