オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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05.ジャック・オー・ランタン

アインズはクロムによって強制的に死者の館へと転移した。死者の館ではシモベ達が飛び回っていた。全てのモンスターがレイス系のモンスターなので壁を通り抜けたりしてくる。

急に出てくるモンスターにビックリしながらも死者の館を歩く。この館は敵性プレイヤーが侵入したことを感知すると、入り口が強制的に閉じられ、鍵を入手しなければここからは出られない設定になっている。ただ、鍵を持っているのは最上階で待つクロムではない。この第八階層には階層守護者であるヴィクティムがいるが、それとは別に裏階層守護者がいる。それがクロムが作ったNPC、ジャック・オー・ランタン。通称ジャックだ。

 

「アインズ、こっちだぞ」

 

クロムは最上階に上がる階段の裏に回り、そこについているレバーを引く。すると、隠し扉が開き、下へ向かって階段が続いている。二人はその階段を下りていく。死者の館は三階建ての建物、しかし、裏階層守護者であるジャックは死者の館の地下にいる。これには理由がある。階層守護者であるヴィクティムは自分が死ぬことで相手を拘束するスキルがある。その際、侵入者と戦える者がいなければどうなる?ヴィクティムの死は無駄であったとしか言いようがない。だからこそジャックには地下にいてもらっている。

ジャックの住む死者の館地下一階は実はヴィクティムのいる場所へとつながっている。ヴィクティムが死んだときにすぐ出られるようなっているのだ。そしてジャックのレベルは100。階層守護者を任せられるレベルなのだ。そして二人は地下一階へと着いた。その部屋は人が住む部屋としてはふさわしくないだろう。どちらかと言えば物置部屋のようにも思える。部屋の真ん中にはカボチャ頭の人形のようなものが椅子に座っていた。

 

「ジャック」

 

クロムがカボチャ頭の人形に話しかけると……人形はまるで糸で操られているかのように動き始めた。そしてクロムのもとまで滑るようにやって来た。

 

「あひゃ、お久しぶりですクロム様。我らジャック・オー・ランタン一同、御身が来ることを待ち望んでおりました」

 

ジャックがジャック・オー・ランタン一同と言ったが、部屋にはまだカボチャ頭の人形が二体待機している。

 

「失礼ですが、他の同志たちもお呼びください。我らは主人に名前を呼ばれることが至福なのです。恐らくですが、名前を呼ばない限り二人は動きません」

 

「そうか。ではオー、ランタン」

 

「「お呼びでございますかクロム様」」

 

ジャックの左右に更に二体のカボチャ頭の人形がやってくる。左がオーと呼ばれたジャック・オー・ランタン。右がランタンと呼ばれたジャック・オーランタン。

 

「お前達にも伝えておこうと思ってな。ナザリックの主、モモンガはこれよりアインズ・ウール・ゴウンを名にした。これからはアインズ様と呼ぶんだぞ?」

 

「了解です」

 

「それとジャック。お前達には情報収集に協力してもらうぞ?」

 

「と言うと、ウィル・オー・ザ・ウィスプの召喚をすればよいのでしょうか?」

 

「そうだ」

 

「かしこまりました」

 

このジャック・オー・ランタンはイベントでゲットしたNPCだ。10月31日に行われる期間限定クエスト、『狂気のカボチャ、ジャック討伐』にて入手できる。ユグドラシル上でどこかに出現するジャックを倒すことによって限定ガチャチケットを入手できる。そのガチャの景品がジャック・オー・ランタンだった。他にもハロウィンで有名なモンスターたちの排出もしていたが、クロムはジャック・オー・ランタンにしか興味なかったので、全て売却していた。そして三体のジャック・オー・ランタンの入手に成功したのだ。

それぞれ穴の形が違う。ジャックは円状の穴、オーは三角、ランタンはひし形だ。些細な違いではあるが、クロムにはちゃんと見分けがつく。さらに、レイス系のモンスターでもある。腕には関節が無く、手袋が宙に浮いていると言っていい。ボロボロの布を身につけているが、その布の中は何もない。ジャック達には足が無い。だから宙に浮いているのだ。そして全員が鎌とランタンを装備している。

ジャック達はランタンを開くと、そこから炎が飛び出したかと思うと、炎が人の形となった。

 

「準備完了です」

 

「うむ、流石だな」

 

ジャック達が持つ特殊スキル、《ウィル・オー・ザ・ウィスプ召喚》。ランタンの中にウィル・オー・ザ・ウィスプ達を待機させているのだ。このスキルは討伐イベントの時にもあった使用で、かなり苦戦させられた。

 

「さて、では近場の村。カルネ村に一体を送り込もう。これは魔法で作ったランタンだと言ってな」

 

クロムはニヤリと笑う。ウィル・オー・ザ・ウィスプ(長いのでウィルという敬称で呼ぶ)はランタンの中でも人の話を聞き、理解することが出来る。言語は一緒だったのだ。読み書きはどうか分からないが、聞くだけならなんら問題はない。更にウィルの召喚制限はどれだけか試したことが無い。そこで金銭を稼ぐため、情報を集める為に魔法のランタンとしてウィルが入ったランタンを売りに出そうと考えたのだ。金は集まる、情報も集まる、まさに一石二鳥だ。

 

「ジャック達よ、ウィルを売ることについて何か問題はあるか?」

 

「いえ、ありません。いざとなればこいつらは自力で帰ってきますゆえ」

 

「そうか、では借りるぞ」

 

「御身のお役にたてることが我らの存在理由なのです。そのようなことをおっしゃられないでください」

 

三体は頭を下げる。

 

「流石はクロムさんの部下だ。とても優秀だな」

 

「そんなことはありませんよアインズ様。我らは三体揃って階層守護者に匹敵するのですから。侵入者に一体やられてしまった時点で我らは階層守護者に劣ります」

 

「いやいや、そんなことはないと思うぞ?私たちはこの第八階層でヴィクティムとクロムさんの次に信頼していたのがお前達だったしな」

 

「至高の方々が……ですか。それは大変恐縮です」

 

「これからも頼らせてもらうぞ」

 

「では、これで私たちは失礼する。これからの準備があるからな」

 

「はい、我らはここでウィルの量産を続けます」

 

「頼んだぞ」

 

そう言ってクロムとアインズは転移した。そして二人が転移したことにより地下室には三体のジャック・オー・ランタンだけが残る。

 

「あひゃ!クロム様直々のご命令だ!」

 

「きひゃ!侵入者の撃退がこの頃なくて暇だったが……」

 

「くひゃ!クロム様の為なら我らは苦痛ですら快楽へと変えようぞ!」

 

三体が身につけるボロボロの布の表面はアインズ・ウール・ゴウンの紋章が刻まれているが、その裏面はクロムの紋章が刻まれいている。

この三体には狂気のカボチャだった頃の記憶が残っている。自分を幾度となく倒した相手。そんなお方に仕えられるという悦び。三体はナザリックの為、アインズ・ウール・ゴウンの為ではなく、クロムの為に働くのだった………。

 

 




ジャック・オー・ランタン!
ハロウィンの時期から考えていたキャラです!

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