オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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今回短めです


43.新たな発見

リザードマンとの戦いが終わった後、クロムは速攻で館に戻り、ザリュースの持っていた武器の研究を始めた。

クロムが作った転生部隊の中にも似たような武器を持っていた奴はいたが、それとはまったく別物の武器だった。クレマンティーヌの所有していたスティレットはある魔法を使用することで武器に魔法を蓄積できるらしいが、ザリュースの持っていた武器は魔法を蓄積しているわけではなかった。

魔法と思われていた攻撃はこの武器特有の能力だった。さらにこの武器には攻撃で冷気ダメージを与えることが出来る上に、冷気に対する耐性までもある。

 

「素晴らしいな……。こんな武器はユグドラシルにはなかったからな。研究のし甲斐がある」

 

クロムは館の自室兼研究室に籠って凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を解析していた。どうやら凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)には1日に三回だけ行使できる力があるようだった。コキュートスとの戦いのときに使ったであろうと思われる能力だとすぐに検討はついた。クロム達からすれば強力でもないと思うが、他の者からすれば十分な脅威だと思う。

大体普通の人やモンスターには冷気に対する耐性はない。寒地に出現するモンスターや、そういった場所に行く冒険者達なら冷気に対する対策があるだろうが、こちらではそのようなモンスターも冒険者もいない。それは事前に調査済みだ。

それ故に、凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を持つ者はかなりの確率で勝利することは可能だ。では、そのような武器をモンスターに装備させればどうなるだろう?本物より劣ると言っても、三つの特殊能力は付与されているのだ。冷気耐性が無い連中では防ぎようがないダメージが襲い、もともとこの世界では強いモンスター達がそのような武器を持っているとなると、今ですら苦戦するというのにさらに強くなったモンスターを相手にするなどごめんだろう。

 

「これを強化したうえで大量生産すれば……ナザリックの戦力も大幅にアップするな」

 

正直に言えば配下達の持っている武器の方が凶悪なものがあるが、POPするモンスター達は普通の武器なのでこれを装備させれば通常のモンスターよりも強くなるとクロムは思った。実際、間違ってはいないだろうが、一つだけ不安なことがある。それはモンスター達がその特殊能力を使いこなせるかどうかだ。

ザリュースは知性があり、凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を使いこなしていたが、モンスターには知性が無い。指揮官がいれば別だが、モンスター達だけでは十分に使いこなせない確率の方が高いと思われる。

 

「冷気ダメージは武器自体にあるからいいけど……氷結爆散(アイシー・バースト)使えないような気がするな」

 

凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)の特殊能力であり、切り札とも言える技、氷結爆散(アイシー・バースト)。 剣を振るった周囲を一気に凍らせることが出来るのだが、モンスター達では仲間を巻き込んで使用する可能性もあるし、そもそも使えない可能性もある。

 

「そういうことを考えたらやっぱ指揮官級の奴に持たせておいた方がいいのか?だが、これを全てのモンスターに装備させればナザリックの戦力強化は間違いはない。でも、使いこなせるのか?一度実験をしておくべきだな。とりあえずもう一本複製しておこうか」

 

複製を使用してコピーのコピーを作った。性能は変わらない。本物から複製すれば性能は劣るが、コピーしたモノをコピーしても性能には変わりないということがユグドラシル時代に証明された。なのでこちらでも試してみたが、そこは変わりなかった。

 

「これなら大量生産はできるだろうけど、アインズならこれ強化しそうだなー」

 

と、独り言を呟いた。

 

「そうですね、強化しますよ?」

 

「うぉ!?あ、アインズ!?」

 

気づけばアインズが研究室の中にいた。

 

「クロムさんにこれを解析してもらおうと思ってたんですけど……既に始めてたんですね」

 

アインズの手には凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)が握られていた。

 

「それってオリジナルのやつか」

 

「ええ、実はコキュートスが彼らを配下として迎えたいとのことで蘇生させたのです。そして、蘇生した代わりにと貸してもらったんですよ」

 

「でもいいのか?中位アンデッドの媒介にするんじゃなかったのか?」

 

「それなんですけどね……リザードマンでは中位アンデッドの媒介には成り得ませんでした」

 

「マジかよ……じゃあ中位アンデッドを創るには何を媒介にすればいいんだよ。人間ならアダマンタイト級の冒険者を媒介にすればギリギリいけそうな気がするが」

 

「それは最後の手段ですよ。で、これいりますか?」

 

「あー、一応オリジナルも解析してみるわ。まあ、俺の解析はアイテム頼りだけどな。解析が終わったら強化するんだろ?」

 

「ええ、しますよ。なかなか面白そうな武器ですしね」

 

「わかったよ。終わったら誰かに届けさせるから」

 

「わかりました。では、また後程」

 

そう言ってアインズは部屋から出て行った。クロムはオリジナルの凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を詳しく解析することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数時間後……

 

「やっぱこの武器いいものだな。正直これと似た鎌作れないかな?」

 

解析した結果、この武器は特別な方法で生まれた武器だということが判明した。そこでちょっと思ったのだが、同じような作り方をすれば似たような武器を作ることが出来るのではないのか?と。

 

「試してみる価値はあるな……となるとここはあの階層に行くとするか」

 

クロムは目的の階層へと向かった。その階層は第五階層。そこにある氷河で鎌を作ろうと思ったのだ。

 

「さてさて、作れるのかな?それ以前にどれだけ時間がかかるんだろうなー」

 

ピックで氷を鎌の形に削っていく。鎌の形に削るだけでもかなりの時間がかかった。そしてここから形を整える。氷河で作った鎌はシンプルなものだった。が、鑑定をしてみると……

 

「おお……一応特殊能力ついてるじゃん」

 

一応ではあるが、冷気に対する耐性と冷気ダメージはあったが、氷結爆散(アイシー・バースト)までは再現できていなかった。もしかすると、場所も関係するのかもしれない。どちらかと言えばこちらの方が氷結爆散(アイシー・バースト)の能力が付与されていてもおかしくはないと思うのだが、特定の場所、そこにある素材で武器を作ることで特殊能力が付与されるのが知れたのは幸いだった。

 

「さて、凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)をアインズに返すとするか」

 

クロムは第五階層から第八階層の館に戻り、シュルツに返してくるように命じたのだった。




さて、次はどんな話にしようかな?

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