四時間が経ち、コキュートスが森から進軍する。
リザードマン達は雄が戦うようだった。まあ、当然と言えば当然だが、全滅した場合どうなるのかは考えていないのか?と思うクロムだった。
「さてと、俺は自分の目で見ておきたいからな。ちょっくら戦場に行ってくるわ」
「勝手にしろ。ただし、余計な手出しだけはするなよ?」
「するわけなだろ?そんなに信用無いのかよ」
「当然だ。今のお前は信頼できんな」
「ひでー。まあ、こっちに来てからの日頃の行いのせいか」
そう言ってクロムはテントから出た。テントから出ると、クロムを待っていたアルシェとイミーナがいた。
「あれ?こちらでコキュートス様の戦いを拝見するのではなかったのですか?」
「どうせなら自分の目で見る方がいいだろ?だから行ってくるわ。もちろんお前らも一緒に行くんだぞ」
「――――――承知しました」
クロムは鎌を取り出し、先程のように鎌に跨る。そして二人が跨ったのを確認してから空へと飛び立ったのだった。
戦場に着いたが、まだ戦闘は始まってはいなかった。
その理由は、コキュートスがリザードマン達にある選択をさせていたからだ。
「コキュートス様は何をなさっておられるのでしょう?」
「アイツは戦闘狂って訳じゃないが、覚悟のある奴と戦いたいんだろ。覚悟も無いくせに戦場に出てくるような奴を斬ったところで不快なだけだしな。まあ、これは俺個人の感想だがな。コキュートスはどう思っているかは知らん」
「―――あれはいわゆるコキュートス様なりの慈悲ということですかね?」
「んー、そうにも思えるな。お?始まるみたいだぞ」
リザードマン達は若い連中を集落に戻し、老いた者と各族長と思われるリザードマンのみが残った。数で言えば有利なのはリザードマンだ。だが、数よりも圧倒的な力を持っているのがコキュートスだ。数だけいたところでコキュートスには敵わないだろう。それはナザリック全員が知っていることだ。しかし、新参者であるアルシェとイミーナはコキュートスのことが強いというのは知っているが、実際に戦っている姿を一度も見たことが無いので心配しているようだった。
「く、クロム様。コキュートス様大丈夫ですかね?やっぱりお一人であの数は無理なんじゃ……」
「―――同意。ここは私達が援護すべきだと」
「まあ、お前らまだコキュートスが戦う姿を見たことないわけだが、あの程度の連中に負けるような奴が階層守護者を任せられると思うか?」
「で、ですが……流石にあの数を相手にするとなると」
「コキュートスでも危ういと?」
「―――肯定。戦いは数がモノを言う」
アルシェが言うことは実際には間違ってはいないが、それは同じ強さの連中の話だ。例え弱い連中がどれだけいようと、弱ければ意味はない。が、個での強さではなく集団での強さは侮れない。そういうことを言いたいのだろうが、
「人をやめたお前達に言っておくが……その考えこそ弱者の考えだぞ?何で弱い連中が集団で戦うと思う?簡単な話、一人だと危険だからだ。それに一人で戦うよりも集団で戦う方が自分が生き残る確率も高くなる。集団戦には自分に対するメリットが多いんだよ」
「それって悪い事なんですか?」
「いや、別に悪い事じゃない。だがな、仲間と一緒に戦うことが当たり前になってしまうとな、一人で戦うことになった時どうなると思う?」
「―――それは……」
「今までは仲間との連携があってモンスターや敵を倒せた。だが、自分一人だと出来ることが少なくなる。そして、相手は待ってくれない。考える時間もない、どうすればいいかもわからない。結局は死ぬか逃げるかのどちらかになるんだよな。一人で戦って勝つ奴もいるだろうけど、無傷という訳にはいかないだろうな。
まっ、それに比べてうちの配下達はPOPするモンスターとは違いちゃんと自我があるからな。ちゃんと自分で考えて戦ってくれるわけだが……何せ一体一体が強いからな。例えば、アインズの創る
そう言って笑うクロム。それに対しアルシェとイミーナは青ざめている。今までナザリックの階層や設備については説明したことがあったが、配下達については話したことはない。階層守護者は彼女たちの上司に当たるので紹介はしてあるが、彼女たちはクロム直属の特殊部隊なのでナザリックでは新参者ではあるものの、地位はちょっと高いのだった。だからこそ、配下についての説明はしていなかったわけだ。
「そ、そんな……
「―――恐ろしい」
「お前らの頂点は俺とアインズのわけだが、次に強いのは階層守護者連中。接近戦最強はコキュートス、防御においてはアルベドより上なやつはいないな。まっ、階層守護者はそれぞれに特化した何かがある訳だが、コキュートスは戦闘に特化した守護者なんだよ。それこそ多対一を想定してあったり、強者との戦闘を想定して生み出されたと言っても過言ではないだろうけど、アイツは種族的にも数で不利だったところで何の問題もないだろうけどな。お?ほれ見てみろ」
そう言ってクロムが指さす方向に目を向けて見ると、リザードマン達を刀一本で蹂躙しているコキュートスがいた。
「流石に残った連中の中にコキュートスを満足させるようなそう多くはなかったみたいだな」
どうやらコキュートスは開戦後、弱めた魔法を発動して弱いリザードマン達を倒したそうだが、その魔法に耐えきったリザードマンが5匹。たった5匹だが、彼らはまだあきらめてはいなかった。だが、その中の一匹がコキュートスに真っ二つにされる。
「あー、遠距離攻撃する奴がいなくなったな。元々階層守護者連中は飛び道具に対する耐性アイテムあるから意味はないんだが、戦いづらいだろうな」
リザードマン達は戸惑うかと思ったが、戸惑うことなくコキュートスに攻撃を続ける。
「へぇ?覚悟は決まってるってか」
例え刺し違えてでも倒す!と言わんばかりに攻撃を続けるリザードマン達。だが、また一匹両断された。これで残るは3匹。
「……あのリザードマン、確かザリュースとか言ったかな?アイツの武器面白いな」
「―――魔法と思われる力を使っていたかと思われます」
「面白そうだし、久しぶりに”複製”使ってみるか」
クロムが何かを唱え始める。アルシェ達にはクロムが何をしているのかは分からないだろうが、クロムは気にせずに複製を行った。そしてクロムの手にはザリュースの持つ武器にソックリなモノが握られていた。
「ふ~ん?
「く、クロム様?一体どうやったんですか?」
「ああ、俺のスキルの一つだ。別に気にしなくていいからな。って……もう終わってんじゃん」
ちょっと複製をしている間にコキュートスの戦いは終わっていた。ちなみにクロムの持つスキル、”複製”は職業ウェポンマスターのレベルを10にすることで得られるスキルだ。そのスキルの名の通り、武器や盾、鎧までも複製することが可能だ。しかし、複製できるだけであって、本物の性能には劣るし、耐久値は低いと何とも使いづらいスキルだが、実はこのスキルは知る人ぞ知る有能スキルなのだ。
例えば、PvPで相手の持つ武器を複製すれば、相手の武器がどんな効果を持っているのかなどを見ることが出来る。それに複製に使われる魔力は少ない。その為、武器を失ったり、破壊されてもその場で武器を複製すれば困ることはないわけだ。ちなみに死神の職業を習得する前、クロムは弁慶と呼ばれたこともあった。別に負けた相手から武器を奪っているわけではなかったが、複製した武器をわざと見える位置に置いておいたらそう呼ばれるようになった。
「あーあ、肝心なところ見れなかったけどまあいいか。面白いもんも手に入ったことだし」
「クロム様楽しそうですね。目がキラキラと光ってますよ」
「――――まるで子供みたい」
「そりゃ、子供みたくもなるさ。俺達の世界には無かった未知の武器。そんなものが手に入ったんだぞ?これを研究すればこの世界の武器を大量生産も夢じゃない!こうしちゃいられねーな。さっさと館に戻るぞ!しっかり捕まれよ!」
「え、ちょっ!?きゃああぁぁぁぁぁぁ!!」
「――――ッ!!」
クロムは最高速度を出してナザリックに向かうのだった。ちなみにナザリックについた後、二人は胃袋の中身をぶちまけていたのだった。
ふぅ……GW中にどれだけ投稿できるかな?