オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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03.蹂躙

クロムこと遠山竜司は子供が好きだった。竜司は子供達を喜ばせる為に、童話を描くようになった。竜司の童話は沢山の子供に人気だった。それが現実世界での竜司にとっての誇りとも言える。

そして今、子供が自分の目の前で殺された。クロムは自分の感情を抑えられず、マスクを外して目の前の敵を全て殺そうとした。だが、クロムの感情は何故か抑制され、すぐに冷静になった。

 

(……なるほど。一定以上の感情を持つと強制的に鎮静させられるわけか)

 

この世界の仕組みを理解しつつ、鎌を振るう。今クロムが使用しているデスサイズは伸縮可能の《如意棍棒》と名付けられた鎌だ。棍棒と名に入っているが、これ以外に適した名前が思いつかなかったからしょうがない。ユグドラシル時代ではよくギルドメンバー達に名前詐欺だと言われた鎌だ。

鎌を振ると同時に鎌を伸ばしたことにより、本来の範囲よりも広範囲に攻撃を可能とする。そして大量の人の上半身が地面に転がり落ちる。遠くにいた騎士や弓兵は無事だったが、それでもかなりの数の兵士を失った。

騎士達は一歩ずつ下がっていく。

 

「おいおい……どうしたんだよ。弱い者は相手に出来るが、強い者は相手に出来ないなんて……騎士様はそんな臆病者じゃないよな?」

 

クロムは騎士達を睨む。騎士の一人が腰を抜かして地面に座る。そして何を血迷ったのか、

 

「お、お前ら!俺の逃げる時間を稼ぐんだ!」

 

と、味方を生贄に自分だけ逃げようとした。これには他の騎士達も唖然とした。クロムはため息をつき、騎士達に近づいていく。騎士達の被るヘルムの隙間から見える目には、恐怖が刻み込まれているように見える。涙目の者もいるが、剣を構えることはやめなかった。

 

「馬鹿な上司を持つと大変だよな……まあ、俺には関係ない話だがな」

 

クロムが鎌を振り上げる。騎士達は盾を持つ者を外側に配置し、盾を持たないものや弓兵を中心に集めた。作戦としては、クロムの鎌の一撃を盾で受け止め、無防備になったクロムへ弓攻撃と集団による斬撃攻撃を行うつもりなのだろう。

 

「よ、よし!お前らそのままソイツを抑えておけ!!俺はこの隙に……ッ!?」

 

逃げようとした隊長らしき人物の後方にはいつの間にか人が立っていた。しかもその男はある仮面を被っていた。それはユグドラシルのクリスマスイヴ、一定時間以上いると強制的に所有することになる嫉妬する者たちのマスク、通称嫉妬マスクだ。クロムも嫉妬マスクを持っている。しかしクロムはそのマスクを被る人物の正体を見ただけで分かった。その男が着ているローブは、アインズ・ウール・ゴウンのギルドリーダーのものだからだ。更に男の後ろには、執事服を着た男性と、メイド服を着た女性が立っていた。後から遅れて鎧を着た者もやって来た。

 

「すまないが、彼は私の所有物なんでね……あまり虐めないでくれるかね?」

 

「な、何なんだお前はぁぁぁぁ!!」

 

と、怯えながらも腰にあったナイフをローブの男、モモンガへ向かって投げる。が、ナイフはモモンガには届かず、執事服を着た男性がその腰に装備する長刀で弾く。

 

「ご苦労だったな。さて、貴様ら犬には聞きたいことが沢山あるのでな……大人しく私に従ってくれるのなら、命は保障しようじゃないか」

 

「わ、分かった!話す!話すからどうか命だけは!!」

 

と、命乞いをする隊長の頭に火炎の球が命中した。男の頭は、首から上が完全に無くなっていた。そして、他の騎士達も男と同じく、火炎の球によって燃やされる。

 

「くっ!小癪な真似を……クロム!」

 

「わかった。すぐに突き止める」

 

《魂感知》で火炎を放った人物を突き止める。火炎の球を放ったのはどうやら一人だけではなかった。その他にも数人が一緒に逃亡している。その中に、他の奴よりはマシな人間が一人だけ混じっていた。

 

「どうする?今すぐ追いかけて捕獲するか?」

 

「……いや、今はやめておこう。どうやら今すべきことは別にある様だからな」

 

モモンガ視線の先には、このカルネ村の住人達が村の中心で震えていた。村人たちの視線の先は……言うまでもなく、クロムに向けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謎の騎士達襲撃の後、モモンガは自分達以外のプレイヤー捜索の為に、ギルドネームであるアインズ・ウール・ゴウンを自分の名前としたことをこっそりと教えてくれた。そして、この村の村長には、クロムは自分の配下であり、あれは夜中にアンデットに襲われないようにと用意した自作のヘルムだと説明した。

ヘルムの上からマスクを付けるのも変な話だが、アインズが幻術を使って、クロムの顔を創り出したことにより、疑われることはなかった。

 

「で、次はどうする?敵はかなり距離をとってるぞ」

 

「……そうですね。とにかく、ここの村とはいい関係を保ちたいところですからね……また襲ってくる可能性もあるので、私が村を防衛するのでクロムさんは敵を壊滅させてきてください」

 

「オーライ。全部ぶっ殺せばいいんだな?任せろ。そういうのは得意だ」

 

「じゃあ、この二人をお供につけますね」

 

執事服を着たドゥルガーとメイド服を着たシュルツが一歩前に出る。クロムは二人の頭を撫で、一言。

 

「頼りにしてるからな」

 

と言った。シュルツは目を輝かせ、クロムの顔を見上げる。ドゥルガーは目を瞑っているが、嬉しそうだった。

 

クロム達は村を出て、逃亡した連中の居場所へと向かう。クロムとドゥルガーは空を飛べるのでいいが、シュルツは空を飛ぶ手段がないので、クロムの鎌に一緒に跨っている。連中のもとへと向かう途中、馬に乗っている騎士達を確認した。

恰好は村に来た騎士達とは違うが、一応警戒するようにアインズに伝えておいた。そして数分後……連中は山陰に隠れていた。

 

「やあやあ、さっきはよくもやってくれたな?」

 

「……どうやって我々の居場所を」

 

「さあな?どうせ何と言ってもお前らは信用しないだろからな。だから説明はしない。あと、先に言っておくが……抵抗は無駄だ」

 

「ほざくな!天使を突撃させろ!」

 

隊長らしき男が部下に命令すると、空中に天使が現れた。それも一人や二人ではない。沢山の天使たちが現れた。クロムはその天使の正体を知っていた。何故ならその天使はユグドラシル時代にいたモンスターの一つだからだ。天使、正式名称を炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)という。クロムからすれば弱いが、この世界の住人からすれば、脅威なのだろう。

沢山の天使がクロムに向かって突撃してくるが、天使はクロムに触れることさえ許されなかった。その理由は、シュルツとドゥルガーがクロムの前に立ち塞がっているからだ。シュルツの回し蹴りで霧散する天使。ドゥルガーの居合で数体の天使が倒される。

 

「ば、馬鹿な!天使たちがこうもあっけなくやられるだと!?」

 

「……せめてさ、俺まで攻撃届かせるくらしろよ」

 

「こ、この……!」

 

隊長らしき男は、隊員とは別の天使を召喚する。監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)と呼ばれる天使だった。先程の天使と違い、その手にはメイスと盾が装備されていた。

 

「やれ!監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)!奴を叩き潰せ!」

 

監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)はメイスを振り上げ、クロムに向かって振り下ろすが、シュルツによって阻まれる。クロムの戦う男、ニグンは現実世界で言う異能の力を持っており、この世界ではそういった力を生まれながらの異能(タレント)と呼んでいる。そしてニグンが持つ生まれながらの異能(タレント)は、召喚したモンスターを強化する力だった。しかし、強化されているにも関わらず、シュルツは攻撃を受けている。ニグンは自分の目を疑った。そして次の瞬間には、監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)は真っ二つにされていた。

 

「くっ!」

 

「う、うわあああぁぁぁぁ!!」

 

一人の隊員が錯乱し、クロムに向かって魔法を放つ。それにつられて、他の隊員達も魔法を放つ。《魔法の矢(マジック・アロー)》、《睡眠(スリープ)》、《電撃球(エレクトロ・スフィア)》、《電撃(ライトニング)》、《火球(ファイヤーボール)》、《恐怖(フィアー)》、《(ポイズン)》など様々な魔法を放つが、魔法もシュルツとドゥルガーによって阻まれやはりクロムには届かなかった。

ニグンは懐からある物を取り出していた。それはスレイン法国から出る際に渡されたものだった。それは水晶で、その中にはある天使が封じ込められていた。いくらバケモノ染みた相手と言えども、最上位天使には勝てない筈だ。そう確信しているからだ。

 

「これより最上位天使を召喚する!」

 

隊員達からは歓喜の声が上がる。クロムは暇そうに立っている。召喚の邪魔をする気はないらしい。

 

「これが最上位天使、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)だ!」

 

ニグン達は、この場に最上位天使、それもニグンの力によって強化された最上位天使が現れたことで勝利を確信した。が、クロムは頭をポリポリとかいて一言つぶやいた。

 

「ガッカリだわー」

 

「何?」

 

威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)ぐらいなら俺もアインズもソロで勝てるわー。マジないわー」

 

「な、何を言ってるんだ貴様は!最上位天使だぞ!?あの魔人にすら匹敵すると言われている存在だぞ!……ま、まさか……いや、そんなことある筈がない!善なる極撃(ホーリースマイト)を放て!」

 

威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)の持つ武器が分解されたかのようにバラバラになり、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)を中心に回りだす。

 

「人では決して到達できない第七位階魔法だ!魔人すらも消滅させる神の御業を……喰らうがいい!!」

 

威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)善なる極撃(ホーリースマイト)をクロムに放つ。さはり先程と同じようにシュルツとドゥルガーが受け止めようとするが、二人の動きをクロムが止める。そしてクロムは何も抵抗せずに善なる極撃(ホーリースマイト)を喰らった。ニグンはそれを確認し、高笑いをした。

 

「フハハハハハ!所詮は人間!魔人をも消滅させる力を持つ天使には「勝てますが何か?」……え?」

 

ニグンが驚きの声を挙げたと同時に、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)と同じように真っ二つにされた。煙が晴れると、そこには無傷のクロムが立っていた。

 

「な!?ば、馬鹿な!?」

 

「いやー、ダメージを受けるって感覚変なもんだなー。まあ、目的は果たしたからいいか。さて、全員の魂いただきます」

 

その後は言うまでもなく、ニグン達は命乞いをすることすら許されず、蹂躙された。




タイトル……考えるの難しい。
クロムさんにはもっと頑張ってもらおう。

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