オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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待たせたな!
一週間ぶりの投稿だZE☆


35.狙われる八本指

八本指。リ・エスティーゼ王国に巣食う裏稼業を生業とする連中だ。今日も彼らは裏の仕事をする。生きる為、金の為、自分の快楽の為に……そんな八本指の警備部門で六腕と呼ばれる警備部隊に所属するサキュロントはゼロの命令で奴隷部門を担当するコッコドールの護衛の仕事を担当していた。最近、八本指が管理している麻薬栽培所が何者かが襲撃し、かなりの被害が出ているらしい。それは奴隷部門を担当するコッコドールも同じだった。誰かの密告により、リ・エスティーゼ王国にある娼婦館の一つが検挙されたのだ。

その為、コッコドールは保険として警備部門を担当するゼロに護衛の依頼を申し込んだのだが、コッコドールの依頼は現在受けている依頼よりは優先度が低かったらしく、六腕が一人でも大丈夫だと言われた。その結果やって来たのがサキュロントだった。

 

「……あなた一人で本当に大丈夫なの?」

 

「安心してくださいよ。王国の兵士如きには遅れは取りませんよ。まあ、向こうが冒険者達を雇っていれば話は別かもしれませんがね」

 

「……とにかく、しっかり私の事は守りなさいよ」

 

「わかってますってコッコドールさん」

 

コッコドールは部下に命じて、奴隷達を馬車に乗せこんでいく。コッコドール達がいる娼婦館はもうまもなく王国の検挙が行われるという情報をリークした。その情報を聞いてからのコッコドールの行動は早かった。まずは八本指に関するモノを全て処分、そして奴隷達の移送を始めようとしたのだ。奴隷の数は多くはないのでそこまで時間はかからない筈とコッコドールは計算している。

と、そこへ一人の執事服を着た老人がやって来た。

 

「何見てんだよジジイ」

 

部下の一人が老人に食って掛かる。

 

「……少しお聞きしたいのですが、貴方達は何をしているのですか?」

 

「アンタには関係ないことだよ!」

 

「では何故そこの御嬢さん方を馬車に乗せているのですか?それも鎖をつけて。それではまるで奴隷として扱っているようではありませんか」

 

「アンタには関係ないって言ってるだろうが!しまいには殺すぞ!」

 

「……ほぅ?殺す、ですか。では御一つお聞きしますが、貴方程度の実力で私が倒せるとでも?」

 

「ああ?ジジイ如き俺一人で十分だよ!」

 

男は剣を抜き、老人に斬りかかる。コッコドールが余計なことをと呟き、男を止めようとするが、それよりも先に老人の蹴りが男の顔に命中する。しかも老人の蹴りを喰らった男の顔は体と首が別々の場所にある。

この状況にコッコドールだけではなく、雇われたサキュロントとコッコドールの部下たちも目を見開く。

 

「やれやれ……こういった結果になることは見えていましたが、これでは話になりませんね。この後は貴方に任せますよ」

 

「わかりましたセバス殿」

 

そう言って老人の背後から別の男が現れた。

 

「こ、この野郎!」

 

「待て!お前達ではソイツの相手は務まらん」

 

コッコドールの部下達を止め、サキュロントが剣を抜く。

 

「コッコドールさん。こいつらは俺が足止めをしておくんで逃げてください」

 

「……勝てそう?」

 

「多分勝ち目は薄いでしょうが、俺の攻撃を初見で見破るのは無理です。バレるまではこちらが有利でしょうが、タネが解ってしまえば俺はすぐにやられるでしょう」

 

「……わかったわ。行くわよアンタ達」

 

コッコドールは自分の部下を連れて馬車に乗り込み、何処かへ向かって走り出させた。

 

「ええっと……こういう場合はどうしますかセバス殿?」

 

「大丈夫です。すでにあの馬車に潜入している者がいます」

 

「なるほど、それなら大丈夫ですね」

 

「話をしている余裕があるのかッ!」

 

サキュロントが不意を衝いて、剣を振り下ろすが男は普通にサキュロントの攻撃を受け止める。

 

「余裕はありますよ。何せ私、貴方よりは強いですから」

 

「はっ!口でならどうとでも言えるぜ」

 

だが、今ので大体の実力は分かった。確かにサキュロントよりは強いかもしれない。が、それは剣士ならの話だ。相手は剣士ではない。それに付け加えるとサキュロントはただの剣士ではない。

それらをふまえて、今目の前の相手に勝てる確率は五分五分と言ったところだ。

 

「セバス殿、確かクロム様の命令は八本指の幹部以外は私達に任せるとのことでしたよね?」

 

「はい、そう伺っております。なのでその男は貴方が倒してもクロム様は何も言わないでしょう。あと、正直言って私は貴方の実力を見てみたいのです。私は最近ナザリックにはいませんでしたからね。貴方達の実力についてはあまり知らなくて」

 

「承知しました、セバス殿。ですが、彼はちょっと可哀想ですね」

 

「ああ?何を言ってるんだ?」

 

「だって私との相性最悪ですもん」

 

「……負け惜しみか?」

 

「いいえ、本当のことですよ」

 

そう言って目の前の男はニッコリと笑った。サキュロントはその態度に怒りを覚えた。六腕の中ではサキュロントは一番弱い方だが、それでも冒険者に例えるならオリハルコン級の腕はある。だからこそ、相手になめられた態度をとられたことが気に食わなかった。

サキュロントは小さな声で何かを呟いてから目の前の男に斬りかかった。男は先程と同様に攻撃を防ごうとするが、サキュロントの攻撃は何故か防ぐことが出来ず、男の身体を斬りさいた。

 

「どうした?しっかり防げよ」

 

「これは……」

 

「ほらほらぁ!!」

 

一撃が入ったことでサキュロントの攻撃が続く。男はサキュロントの攻撃を必死に防ごうとするが、全て防御を通り抜けて体に命中する。次第に男の身体は切り傷だらけになっているのだが……何かがおかしい。

 

「はぁはぁ……」

 

「どうしたんですか?私はまだ戦えますよ?」

 

「くっ!」

 

サキュロントはまた一つ傷をつけるが、やはり男の身体からは血が出てこない。傷は深くないと言ってもこれだけの切り傷がついているのだ。服に血がしみ込んだり、血液の減少によって動きが変わってきてもおかしいぐらい切り傷がついているのに目の前の男は何事もないように平然とサキュロントの目の前に立っている。

 

「お、お前!何で倒れないんだ!?」

 

「だから言ったでしょう?私と貴方じゃ相性が最悪なんですよ」

 

「ちゃんと答えろ!」

 

「いえいえ、さっきからちゃんと答えてますよ?」

 

「こ、この野郎……なら、この一撃で死んじまえよ!!」

 

サキュロントは生物の弱点を狙う。それは……心臓だった。どんな生き物でも心臓を刺されれば死ぬ。モンスターも一緒だ。ただ、モンスターの中には心臓が無く、コアと呼ばれるモノを破壊しなければ死なないモンスターもいるが、今は関係のない話だ。サキュロントは確かな手ごたえを感じていたが……

 

「いやはや、驚きましたね。こういう仕組みだったんですか」

 

「ば、馬鹿な……」

 

心臓を貫かれたというのに目の前の男は平然としている。

 

「な、何故死なない!?確実に心臓を貫いてるんだぞ!?」

 

「それは簡単な話ですよ。私が人間じゃないからです」

 

「は……?」

 

「元は人間でしたが、今ではモンスターに転生したんです。理解はできないでしょうが、別にいいんですよ。どのみち貴方はここで死ぬんですから」

 

そう言った直後、男の身体が膨れ上がる。一体何をする気なんだと警戒するサキュロント。刺した剣を抜こうと引っ張るが、

 

「ぬ、抜けない!?」

 

「ええ、私の身体の中に固定させてもらったので人間では抜くことは不可能でしょう。そして、貴方も私の身体に取り込まさせてもらいますよ」

 

「じょ、冗談じゃない!」

 

サキュロントは剣を捨て、逃げようとするが足が動かないことに気が付いた。足が動かない理由は、サキュロントの脚に何かの液体が固まっていたからだ。そしてサキュロントは男の正体にようやく気が付く。

 

「ま、まさかお前……スライムかッ!?」

 

「ご名答です。ちなみに貴方を取り込むのにもちゃんとした理由がありますよ。私のスキルの一つに《擬態》というスキルがあるのですが、発動条件は対象を取り込むことなんですよ」

 

男は話ながらサキュロントを身体に取り込む。サキュロントの身体が少しずつ男の液体状の身体に入って行く。スライム特有の嫌な感触を感じる。

 

「正直言って、今日の作戦でこのスキルはかなり使えると思いましてね。そこで敵の一人や二人飲み込んでも構わないというお許しも得ています」

 

「や、やめ!」

 

やめてと言おうとしたサキュロントの口を塞ぐ。しかも口を開けたタイミングが悪く、身体の中に液体が入り込んできた。液体の中で呼吸も苦しいというのに、さらに体の中に液体が入っていることでもっと苦しい。サキュロントは液体の中でもがくが、意味はなかった。

 

「……そちらは終わりましたか?」

 

「ええ、ちょうど飲み込んだところです。ちなみに先程の方々の方は?」

 

「あちらも終わったようです。話によると、さっきの方は奴隷部門の長だったようです」

 

「そうですか……良かったです。クロム様からは奴隷になっている人達についての対処は見つけた連中に任せるとおっしゃっていましたからね」

 

「そうですね。シュルツやドゥルガー辺りなら平気で殺すかもしれませんし、新入りだとどう動くかはわかりません」

 

「それで……セバス殿」

 

「わかってます。今部下に命令して奴隷だった方々を兵士のいるところまで案内させています」

 

「……ありがとうございます、セバス殿」

 

「いえ、私を創造してくださった御方ならきっと同じことをしている筈です」

 

「セバス殿を創造なされた御方ですか……一度お会いしてみたいものです」

 

「……そうですね。私達ももう一度会えるのならお会いしたいです」




今回の投稿に一週間かかった理由……特に何もない。
というのも、どうやって八本指の連中を虐めようか考えていたからだ!まあ、とにかく次の話を考えねば……次は誰に死んでもらおうかな♪

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