オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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33.目的

バハルス帝国を裏から支配することになったアインズ。アインズは頭をポリポリとかきながら、次は何をするべきかを考える。今回の帝国を支配するという作戦はクロムさんの案だった為、アインズは特に何もしていない。

だが、これから帝国をどう使うかはお前が決めろとクロムさんに言われたので困っている。正直、この世界での最優先の目的は他のメンバーの捜索。それ以外のことにはぶちゃけ興味はない。一応警戒しているのが、世界級(ワールド)アイテムを所持しているスレイン法国。スレイン法国との戦いの為にも今は戦力を集めているアインズ達だが、戦力と言っても人間の死体を媒介としたアンデット製作で作れるのは死の騎士(デス・ナイト)まで。ユグドラシルのプレイヤーがいると仮定した場合は死の騎士(デス・ナイト)では相手にならないだろう。せめて中位のアンデッドを作れればいいのだが、その媒介になりえる者が存在しない。アインズが今後と戦力の増強に困っていると、そこにデミウルゴスがやって来た。

 

「アインズ様、追加の死体をお持ちしました」

 

「うむ。死体回収は順調のようだな」

 

「はい、この世界には多くの墓があるようで死体も集まりやすいみたいです」

 

「ほぅ、それは私達にとっては好都合だな」

 

「ええ、まったくです」

 

アインズとデミウルゴスは笑う。

 

「それでアインズ様、帝国を手に入れたと聞きましたが……」

 

「ああ、クロムさんの作戦が上手くいってな。帝国は私達の支配下にある」

 

「それは素晴らしい。これで帝国を駒として使うこともできますね。わざわざ私達が動かなくても、帝国を動かせば私達の事はバレませんし、何より帝国を支配下に置いたことでこの世界により詳しくなれます」

 

「その通りだな。クロムさんもそれが目的だったのだろう」

 

アインズは推測でデミウルゴスに答えるが、実際はどんな目的があるのかは一切わからない。クロムさんは一体何をしようとしているんだ?と不思議に思う気持ちが無いわけではないが、この世界で頼れるのは守護者達とその僕、それとクロムさんだけなので深くは考えなかった。

 

「アインズ様、それでは私はこれにて失礼します」

 

「うむ」

 

デミウルゴスが部屋を出ようと扉を開けると、

 

「やっほー、お疲れかね?」

 

扉の前にクロムが立っていた。

 

「これはクロム様。アインズ様にご用事ですか?」

 

「ああ、ちょっと話したいことがあってな」

 

「クロムさん、ちょうどよかった。私もクロムさんに聞きたいことがあったのだ」

 

「俺に?まあ、別にいいけどよ」

 

デミウルゴスが部屋を出て行き、アインズの部屋にはクロムと天井の八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)、それと一般メイドがいる。アインズはクロムとの会話を聞かれたくなかったので、

 

八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)、それにシクスス。少し席を外してくれ」

 

「承知しました」

 

「かしこまりました」

 

こうして部屋にはアインズとクロムだけとなった。これで少しは力を抜けると言わんばかりにアインズが椅子に座る。クロムも部屋にあるソファーに腰を下ろす。

 

「それで?俺に聞きたいことって何なんだ?」

 

「ええと……まず、あの転生させた奴らについてです」

 

「アイツらについてって……おいおい、ギルド長様が戦力を欲しいとおっしゃるから転生させたんだぜ?」

 

「いえ、そうではなくて……何故彼らを転生させたんですか?あの程度の実力なら僕の作った死の騎士(デス・ナイト)の方がよっぽど戦力になると思うんですが」

 

「……アインズ、確かにこの世界で死の騎士(デス・ナイト)が強いって言うのは俺も驚いた。だけどな、この世界にはユグドラシルになかった技術がある」

 

「武技……ですね?」

 

「ああ、そうだ。武技自体は魔力の消費なしで発動できる。これは俺みたいな接近戦をメインにしている奴からすれば嬉しいことだ。スキルを使うのにもMPを消費するのに、武技は消費しない。まあ、肉体的消費はあるらしいがその程度で済めば十分使える。

 それに武技を階層守護者や僕、お前の作った死の騎士(デス・ナイト)が習得できるのなら……ナザリックはより強くなれる」

 

「それが転生させてまで仲間にした理由ですか」

 

「そうだよ。そうじゃなきゃ転生させてないし」

 

そう言って笑うクロム。納得はできないが、クロムの言うことには理解できる。確かに魔法を使う時、スキルを使う時にMPを消費するのは嫌だなーと思っていたが、コレはゲームなのだから仕方ないと割り切っていたが、この世界はゲームではない。

MPが減っていくということは、自分の攻撃手段が減っていくのと同じだ。特にアインズのような魔力系の魔法詠唱者(マジックキャスター)はMPを沢山消費する。信仰系であってもこれは変わらないとは思うが、信仰系はどちらかと言えば回復や支援で仲間を助けるような役割だとアインズは思っている。それに比べて魔力系は、攻撃に特化した魔法ばかりだ。攻撃以外にも支援魔法も使えるし、自信に強化魔法をかけることもできる。だが、直接的な攻撃力は全くと言っていいほどないのだ。この世界の人間相手ではMPが無くても負けることはないだろうが、プレイヤーや世界級(ワールド)アイテムの使い手を相手にした場合は勝てないだろう。

だが武技は魔法やスキルとは違う。MP消費なしで使用できる。習得できるかはまだ分からないが、習得できればアインズは生身でも戦えるようになるだろう。つまり、クロムは武技を習得する為にアイツらを転生させたということになる。

 

「それなら人の姿で少しずつ覚えていけばよかったんじゃないですか?」

 

アインズがそう尋ねると、クロムはチッチッチッと無い筈の舌を鳴らしながら指を振る。

 

「それだと時間がかかるだろ?それに習得できるか分からないもんにそんな時間かけたくないし。それなら転生させて、うちの僕に習得できるか試して習得できれば俺達も習得すればいい」

 

「……確かにそうですね。僕達が習得できるっていう保証はありませんし、そんなに時間をかけて習得するよりは仲間にして毎日教えさせる方が効率的ですね」

 

「だろ?だからこそ、俺は武技を使える人間を厳選して転生させてんだ」

 

「…あれ?でしたらあの時外で待機していた奴を殺したのは何でですか?」

 

ワーカーを騙してナザリックに招いた時に外で待機していた男も確か武技を使えると僕から聞いていたが、クロムは殺すように命じていたのを記憶している。

 

「ああ、だってあんなのがこのナザリックに入ってくるなんて生理的に無理。一応あいつの武技を見ておいたけど、あれならブレインの方を習得する方がマシだったからな。だから殺した」

 

「なるほど……あ、あともう一つ聞きたいことがあるんですけど、何故帝国を手に入れたかったんですか?」

 

アインズはこれが一番疑問だった。アインズ達が住むナザリックは帝国よりも優れている。兵についても、こちらはモンスター。圧倒的にこちらの方が向こうよりもいい筈なのにそれでもクロムは帝国を支配しようとしていた。だからこそ気になる。クロムが帝国を手に入れてまでしたかったことが。

 

「何故帝国を手に入れたかったかって?そりゃ簡単な話だ。俺達が、アインズ・ウール・ゴウンが裏で動くためだよ」

 

「僕が?」

 

「あ、アインズじゃなくてギルドな。ていうかややこしいから今はモモンガって呼ぶぞ。アインズ・ウール・ゴウンのギルド長のモモンガは冒険者モモンとして人間たちにとっての英雄になってもらいたい。それと同時に一つの国を裏から支配してこっちの手駒として動かしたいのさ」

 

「モモンが人間たちの英雄に?僕が英雄になって何か得があるんですか?」

 

「あるに決まってるだろ?アダマンタイト級冒険者になればまず結構な勢いでその名前が広まっていく。まあ、これはいずれ実行する計画の為の布石なんだけどな」

 

「はぁ……」

 

「あと一つ言っておくと、別に帝国を支配したかったって訳じゃないからな?俺は国を支配下に置きたかったんだよ」

 

「国を……ですか?」

 

「そ。ナザリックの近くにある国は二つ。一つはバハルス帝国、もう一つはリ・エスティーゼ王国だ。正直どっちの国を支配しようか迷ってたけど、帝国にはワーカーがいるだろ?これは利用するっきゃないと思って帝国を支配することにしただけだ」

 

「じゃあ帝国の兵をこっちにおびき出したのは?それにも何か理由があるんですか?」

 

「あるとも。モモンガ、ンフィーレアを救出した際に俺が飲み込んだ宝珠、アレ覚えてるか?」

 

「ああ、確か死の宝珠とかいうこの世界特有のアイテムでしたね」

 

そう、クロムはカジットが持っていた死の宝珠を飲み込み、アインズのようにお腹に宝珠を仕込んでいるわけだが、

 

「それが何か関係あるんですか?」

 

「ああ。あの宝珠は負のオーラを溜めて、それを使ってアンデッドの召喚できるみたいなんだよ。しかも時間制限なしで」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ、試しに骨の竜(スケリトル・ドラゴン)を作ってみたけど、これが消えないんだよなー。だからこそ、うちの部下の特訓相手として戦わせたりしてたんだよ。負のオーラってなかなか集めにくいだろ?」

 

「まあ、そうですよね」

 

「だからこそ、アイツらが役に立ったわけだ」

 

「?どういうことですか?」

 

「アイツらの内、四人の騎士がいたんだが……あれは帝国最強の騎士と呼ばれる四人でな。それともう一人、フールーダっていう魔法詠唱者(マジック・キャスター)がいたんだが、コイツはなかなか強いらしくてな?何でもコイツがいるのといないとじゃ帝国の戦力が激変するらしいんだわ」

 

「あ、なるほど。その騎士達を使って負のオーラを集めた訳ですね」

 

「そっ。しかも兵達がこっちに来てるから城の方の守りは少数。城の守りが手薄じゃなかったとしても何の問題もないけど、目立つわけにはいかないからな。結果俺達は帝国の支配に成功したわけだ」

 

「そうですね。でも僕が気になるのは「帝国を手に入れて何をしたいかだろ?」…はい」

 

「まず、俺が帝国を手に入れてしたいこと。それは情報収集だ。何といっても俺達はこの世界について知らないことの方が多すぎる。今はセバスやウィル達を使って情報を集めてるが、皇帝を使えばより他の国のことや、内密にしておきたいことも聞き出せるわけだ」

 

「なるほど……皇帝にそんな使い道があったなんて」

 

「そして、帝国という国を隠れ蓑にして他国の戦力調査。で、たまに人間同士の戦争をさせたりする。他の国の兵よりは帝国の兵は強いからあんまりおもしろい結果にはならないだろうけど、俺達は表に出ることなく戦力を削ったりできる。まあ、一言で言えば楽が出来るってわけだ。以上のことから俺が国を支配下に置きたかった理由さ。納得したか?」

 

「ええ、納得しました。確かに僕達はまだ目立つわけにはいけませんからね。……いや、待てよ。目立てば他のプレイヤーが見つかりやすくなるんじゃ……」

 

「他のプレイヤーは気づくだろうが、それが仲間だっていう保証はないからな。俺はどちらかというと俺達に敵意を持ったプレイヤーの可能性の方が高いと踏んでる」

 

「うっ……そ、そうなりますよね。あ、そう言えばクロムさんの話って何ですか?」

 

「ん?ああ、次の作戦なんだけどな。一度、リ・エスティーゼ王国に巣食ってる八本指っていう組織あっただろ?」

 

「ああ、そう言えばそんな組織ありましたね」

 

一応クロムからの報告で耳には入っている。

 

「セバスがリ・エスティーゼ王国近くにいるらしいからさ、その組織潰そうぜ」

 

「潰してどうするつもりなんですか?」

 

「潰した後考えればいいだろ?報告によると、八本指は娼婦館や麻薬を作ってるらしいんだよな。で、子供もその被害にあってるわけだ」

 

あ、これヤバイとクロムの声音から察するアインズ。クロムは子供が好きだ。子供を守る為なら何だってするだろう。だからこそ、アインズは思った。八本指という組織は虎の尾を踏んでしまったと。

 

「だからさ、俺が直々に組織をぶっ壊してやるよ。もちろん協力してくれるよな?アインズ」

 

「も、もちろんです」

 

「ありがとな。それじゃあ明日決行するから。よろしくー」

 

そう言ってクロムはアインズの部屋を出て行った。クロムが出て行った後、シクススと八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)が入ってきた。

 

「アインズ様、何かお疲れのように見えますが……」

 

「気にしないでくれ……」

 

シクススが気にかけてくれるほど疲れているように見えるのか……と思うアインズだった。

 

(明日は血の雨が降るかもしれないなー)

 

そう思いながらアンデッドの作成を再開するのだった。




今回長すぎ。自分でもそう思ってしまうわ。
さて、次回は八本指が地獄を見ることになるのかなー

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