クロムと転生組が帝国の兵と戦っている間、アインズは死体を使って
「はぁ……この位増えればナザリックの戦力の足しにはなるか?」
そう言いながらまた一体作る。本当なら
「それにしても……クロムさんはあんな連中を転生させるなんて何を考えているんだ?」
正直に言って、アインズはあの転生組のことを好ましく思っていない。理由としては、無断でナザリック地下大墳墓に侵入し、尚且つ、仲間達が残したアイテムを盗もうとした連中だ。転生させるよりも
そもそもあのワーカーを連れてきたのは俺だから俺の獲物だとのことだった。アインズは一応ワーカー達については聞いていたが、転生させる価値まではないと判断していた。ニグンやクレマンティーヌはスレイン法国の人間だったから転生させてナザリックの配下にすることには否定しなかったが、盗人共が仲間になるのは御免だった。
仲間達と共に作り上げただけあって、そういった人間には入って来て欲しくない。アインズはワーカー達がナザリックに一歩踏み込んだだけでも殺したい衝動に駆られた。それ位嫌だったのだ。
「クロムさんなりに何か考えがあるんだろうけど……私は奴らを好きにはなれないな」
「ええ、私も同じです」
「アルベド……居たのか?」
「はい、ノックをしたのですが返事が無かったので……申し訳ありません」
「かまわん。それで何かあったのか?」
アルベドには基本的にはナザリックの僕達の管理を任している。本来ならこの部屋にはあまり来ることはない。この部屋に来たということは何か異常があったか、もしくは何か伝えに来たのかのどちらかだ。
「クロム様からアインズ様に伝えておくように言われたことがあります」
「クロムさんが?
「クロム様は現在、バハルス帝国の兵と戯れております。だからではないでしょうか?」
「……ああ、クロムさんの提案した作戦を実行しているのか」
「はい。今のところは順調です」
クロムの提案した作戦というのは、クロムさんが帝国にナザリックのことをリークし、兵達をナザリックに向かわせ、それを撃退。ただし、殺しはせずに撃退する。そして大義名分を理由にバハルス帝国に攻め込むという作戦だ。
まだナザリックが目立つわけにはいかないので、隠密行動に長けた僕や、転移魔法の使える者を帝国の城に送り込み、裏から帝国を支配することがクロムの狙いだった。裏から支配することでナザリックを表に出すことなく、他の国への侵攻などがしやすい。それに帝国の皇帝を支配下に置くということも今回の作戦では重要なことだ。
「それで?転生した奴らはどうなんだ?」
「なんだかんだで強いみたいです。クロム様のおかげですかね?至高の御方の力はやはり素晴らしいモノです」
「…そうか。ああ、すまないがアルベド。ここに来たついでだ、新しくできた
「かしこまりました」
アルベドは
『アインズー。こちらクロム、こちらクロム。作戦は順調ですぜ』
クロムからの
「クロムさん。順調ということは帝国の兵士達は全員追い払ったということでいいのだな?」
『ああ、全員今帰っている途中だ。アイツらが帝国に帰るのには二日ほどかかりそうだから今のうちに攻め込もうぜ』
「わかった。では少し待っていてくれ。こちらも準備をしてくる」
『了解だ。俺は外で待機してるから、準備が出来たら迎えに来てくれ』
「わかった」
「シャルティア。これから帝国への侵攻を開始する。仕度をしろ」
『かしこまりんした』
アインズはため息をつき、準備をするのだった。
帝国ではジルクニフと秘書官、ロウネ・ヴァミリオンと伯爵達が集まっていた。伯爵達が集まったのは帝国の兵達の行先についてだった。リ・エスティーゼ王国との戦が迫っているというのに、大量の兵達をどこに向かわせたのかとジルクニフを問い詰めてきたのだが、ジルクニフはいつも通りに接する。
「我が帝国の兵が何処へ向かったかを教えろと言われてもこちらは教える気はない」
「何故だ!なぜ教えられん!」
「あれは私の兵だ。貴君等が気にすることではない」
「いや、貴方のではなく、この国の兵だ。確かに形式上はこの国の皇帝に仕えてはいるが、この国の兵だ」
「そうだ!我々にも知る権利はある!」
(面倒くさい連中だな……何とか追い返したいところだが)
とジルクニフが考えていると、
「どうもー、皇帝様はいますかね?」
ドアを蹴り破って誰かが入ってきた。視線は侵入者に集まる。だが侵入者は人間ではなかった。
「どうもー、アンデッドのクロムと」
「……アインズ・ウール・ゴウンと申す」
「そして私はシャルティア・ブラッドフォールンでありんす」
「あ、アンデッドだと!?」
「え、衛兵は何をしているんだ!!」
「あー、言っておくけど、衛兵達は全滅したから。あと、変な真似をしたら速殺すからね?」
クロムと名乗ったアンデッドが淡々と言う。ジルクニフはこの現状をどうにかしようと頭をフル回転させる。が、
「う、うわあああぁぁぁぁぁ!!」
伯爵の一人、フェメール伯爵が椅子から立ち上がり、逃げ出そうとした。そんなフェルメールの前にはいつの間にいたのか、悪魔らしきモンスターが現れ、何の躊躇もなく殺した。
「だから言っただろ?変な真似したら殺すって。下手に動かない方が生き残る可能性は高いぞー」
「そうでありんすよ?そもそも、この城は既に包囲済み。逃げ場などありんせん」
「そ、そんな……」
フェメール伯爵が死んだことでパニックになりかけたが、全員が冷静になった。そんな中、ジルクニフは内心で舌打ちをした。こんなことが起きるのなら帝国四騎士とフールーダは残しておくべきだったと。
「まあ、俺達は何も全員皆殺しにしたくてここに来たわけじゃないんだよ」
「……どういうことかな?」
「おっと、確かアンタがバハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスか。名前長いし、ジルって呼ばせてもらうぜ。俺達は取り引きしに来たんだよ」
「取引……だと?」
「ああ、その取引内容についてはうちのボスから伝えてもらう。頼むぜボス」
「……こちらの要求はただ一つ、この帝国をよこせ」
「馬鹿な事を言うな!」
「これは取引などではない!」
「そうだ。取引ではない。これは命令だ。別に断ってくれても構わないが、こちらは大義名分を理由にこの国に攻め込ませてもらう」
「どういうことだ!」
伯爵の一人がアインズに喰いかかる。
「どうもこうもない。私が住む墳墓にこの国の兵達が侵入してきた」
「なッ!?墳墓に侵入した!?どういうことですか皇帝!」
「……実はとあるワーカーから新たな墳墓を発見したとの情報を入手した。そこで私は兵を送り、その墳墓にある古代のアイテムを回収するように命じたのだ」
「そうか、あの連中もこの国と関係があったのだな。更に攻める理由が増えたな」
アインズはそう言って皮もない指でどうやってかは解らないが、指を鳴らした。すると、シャルティアが黒い穴を創り出した。伯爵だけではなくジルクニフも息をのむ。何故ならその穴からモンスターが現れたからだ。
「さて、どうするかね?この国を明け渡すのならせめてものの情けで皇帝のままにしておくが?」
「……何が狙いなのですか?」
「狙いも何も、お前の兵が私の住む場所を荒らした。ただそれだけのことだ。取引に応じれば、お前は皇帝のまま。取引を拒否すれば帝国は滅びる。さて、どうするかね?」
アインズはいつの間にかシャルティアが取り出したまさに王が座るような椅子に座っていた。ジルクニフはどうするべきか考えるが、
「こ、皇帝陛下!ここは取引に応じましょう!」
「そうです!帝国が滅ぶよりはマシです!」
「それに帝国を明け渡したとしても陛下は皇帝のままです。それなら応じた方がいいと思われます!帝国が滅べば全てが無駄になるのですよ!?それでもいいのですか!?」
(……確かに帝国が滅ぶよりはマシだ。マシだが、こいつらの明確な目的が解らない。何が狙いなんだ?帝国という名の国?それとも魔法?わからない……アンデッドなだけあって表情も変わらないし、何を考えているのかもわからない。……とにかく最善の手を打つしかないようだ)
「……解った。帝国は貴方方に譲りましょう。ただし、これだけは約束してください」
「何だ?」
「民をむやみに殺さないで欲しい。それだけは絶対に守ってくれ」
「……ああ、解った。君は今後もこの国の皇帝として働いてもらうが、重要な案件や何か重大なことが起きた場合は私に連絡しろ。連絡については後でこちらから送る者を通じて行う。それと、私の命令に逆らうことは許さん」
「……承知した」
「それでは失礼する。シャルティア」
「はい、アインズ様」
シャルティアはまたもや黒い穴を創り出し、三人とモンスター達は穴の向こうへと消えて行った。
「へ、陛下……」
「何も言うな。今はとにかく四騎士の帰りを待て」
「……か、彼らが勝てる相手なのか奴は?」
「それは無いだろう。奴には四騎士どころかフールーダですら敵わない。私はそう思う」
「………」
「今は待つ。それしか今は出来ない」
そう言ってジルクニフは椅子から立ち上がった。下手に抵抗しても死者が出るだけ、それなら少しずつ、気づかれないように奴を倒すための準備を進めるだけだ。奴を倒すのには帝国だけでは力が足りないということは解っている。だからこそ、今から準備を始めるのだった。そう、他国の力を借りてでも……。
という訳で、帝国ゲッチュ!