オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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29.全滅

天武のエルヤー、グリーンリーフのパルパトラ達がやられている頃……ヘッケラン達は下へと続く階段を降りていた。下へと続く道を見つけた時、降りるかどうか話し合った結果、情報を集める為に降りようということになった。階段は長くはなかったが、降りた先にあったのは上の階と同じく墳墓だった。

 

「墳墓の下にまた別の墳墓か……」

 

「しかも地下にあるから死の大魔法使い(エルダーリッチ)がいたとしても何ら不思議じゃないな」

 

グリンガムの言う通りだった。カッツェ平野に現れるアンデッドは定期的に退治している為、強いアンデッドが生まれることはないが、この場所のように人目に付かないようで生まれたアンデッドは誰も退治をしていないのでよく墳墓に強いアンデッドがいることがある。

代表的なのは死の大魔法使い(エルダーリッチ)。生者への強い憎しみを持つアンデッド。このアンデッドを相手にするのは相当大変だが、一体だけなら倒せる自信はある。だが、逆に言えば一体以上出てこられると勝てる気はしないということになる。一体でも厄介な相手を複数相手に出来るのは精々アダマンタイト級の冒険者くらいだろう。ヘッケラン達は警戒しながら墳墓を進む。すると、見えてきたのは骸骨(スケルトン)達が肩車をしているかのようにみえるアンデッドだった。これまでに見てきた骸骨(スケルトン)とは別物のような気がして仕方がなかった。

 

「グリンガム。お前あのアンデッド見たことあるか?」

 

「いや、俺もない。新種のアンデッドかもしれん。慎重に倒すぞ」

 

「わかった」

 

ヘッケランとグリンガムのチームは仲が悪いわけではないので、一応は即興のチームプレーは出来る。新種のアンデッドを全員で囲み、仲間をカバーしながら少しずつ体力を減らしていく。アンデッドの複数回の連続攻撃に苦戦はしたが、誰一人やられることなく倒すことが出来た。

 

「ふぅ……思ったよりも時間がかかったな」

 

「ああ。なかなか強いアンデッドだった。あの連続攻撃はなかなか厄介だった」

 

ダメージを負った連中の回復が終わると、再度墳墓を突き進む。しかしあるのは墓だけ。そして現れるのはアンデッドのみ。しかも休む暇を与えないかのように次々と現れてくる。

 

「チッ!まだ出てくるのかよ!」

 

「厄介なところに来てしまったようだな。どうするヘッケラン。ここは二手に分かれて敵の数を減らさないか?」

 

「そっちは人数多いからいいかもしれないがよ、俺達四人しかいないんだけど?」

 

「何とかなるだろ」

 

「そんな無責任なこと言うなよな。まあ、でもそうするしかなさそうだな……」

 

ヘッケランの視線の先には、先程倒した新種のアンデッドが三体こちらに向かってきている姿だった。

 

「敵を全て倒した後、もう一度ここで落ち合おう」

 

「わかった。やられんなよ?」

 

「そっちこそな」

 

そう皮肉を言ってヘッケラン達とグリンガム達は別々の方向に逃げて行った。アンデッド達は人数の多いグリンガムの方を追って行った。だからと言ってヘッケラン達が助かったわけでもなかった。目の前には新手のアンデッドが待っていたからだ。

 

「本当にここはアンデッドの安売りしてんな!」

 

「無駄口叩かない!」

 

「そうですよ。余裕なんてないんですから」

 

「―――もう少し危機感を持ってほしい」

 

「はいはい、わかったよッ!」

 

ヘッケランがアンデッドの首を斬り落とす。まだまだアンデッドは出てくるが、大量のアンデッドに追われているグリンガムの事が気になるヘッケランだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそぉぉぉぉぉ!!しつこい連中だな!!」

 

「まったく!めんどくいんだよ《電撃(ライトニング)》!」

 

振り向きざまに魔法を放ち、アンデッドの数を減らしていくが、その人数の多さからかは分からないが、また別のアンデッドが現れる。

 

「倒しても倒しても現れるし……キリが無い!」

 

「おい!あそこ見ろよ!」

 

盗賊が大声を上げた。盗賊が指さす場所を見てみると、大きな扉があった。罠にしか見えないが、今はそんなことを言っている余裕は無い。

 

「あの中へ逃げ込むぞ!」

 

グリンガムはメンバー達に命令する。誰もグリンガムの指示には異論はなかった。というよりもそれが最善の策だとしか思えなかった。グリンガム達は扉の場所に着くなり、大急ぎで扉を開き、メンバー全員が部屋の中に入った事を確認し、扉を閉めた。あともう少し遅かったら大量のアンデッドにやられていたところだっただろう。

メンバー全員が安堵の溜息をつき、休憩しようしたが、

 

「いんや~、お疲れ様」

 

部屋の奥から女性の声が聞こえた。気を抜こうとした矢先、現れた敵に警戒心を高めるグリンガム達。だが、部屋の奥から現れたのは……

 

「あなたは……オーバーキルの」

 

「そう、エクレちゃんだよ。それにしても大変そうだったね」

 

「ええ……あんなに大量のアンデッドに襲われるとは思っていませんでしたよ。そちらのチームは大丈夫でしたか?」

 

「大丈夫大丈夫。だってアタシ達のチームにはクロム様がいるしね」

 

「クロム?クロームではなくてクロムですか?」

 

「うふふ、イイコト教えてあげようか?」

 

「……何ですか。いいことって」

 

「実はね……この部屋って(トラップ)部屋なんだって!」

 

「なッ!?」

 

グリンガム達は急いで部屋を出ようとしたが、もう遅かった。いきなり床が消え、下に落下していく。それはエクレも一緒だったが、エクレは鼻歌を歌いながら落下している。

 

「き、貴様!この墳墓の情報は嘘だったのか!」

 

「うん、そうだけど?ていうかそれ説明したのってアタシじゃなくてクロム様だし」

 

「く、クロム様というのはクロームさんのことか!」

 

「…あのさー、おしゃべりもいいけどそろそろ気を付けてね?」

 

「え?」

 

下に目線を映すと、そこには槍を構えた骸骨(スケルトン)が待ち構えていた。チームの魔法詠唱者(マジック・キャスター)達は《飛行(フライ)》の魔法を使って、他の仲間たちを助けているが、グリンガムは鎧を着ているので抱えるのは不可能だ。グリンガムはまるで石のように丸まって骸骨(スケルトン)の持つ槍に落下した。勢いがあるので鎧が貫かれるかと思ったが、運よく槍は鎧をかすめた程度だった。それでも落下によるダメージはかなり痛いモノだった。

メンバーの信仰系の魔法詠唱者(マジック・キャスター)達が駆け寄ってきて回復魔法を使おうとしたが、エクレの持つスティレットによって心臓を貫かれた。

 

「なかなかしぶといねー」

 

「貴様……!よくも俺の仲間を!」

 

「仲間?仲間なら周りにまだいるじゃん?」

 

エクレの言う通り、まだ仲間全員がやられたわけではない。だが、グリンガムはそういうことを言っているわけではない。

 

「でもさ、この程度の強さでナザリックに挑もうとしていたなんて笑えるよね」

 

「ナザリック……?それがこの墳墓の名前か」

 

フラフラしながらだが立ち上がるグリンガム。一応持っていたポーションが無事だったか確かめるが、残念なことにポーションの入れ物が割れていて中身がこぼれている。これでは回復できない。仲間もポーションを持っているが、エクレから誰も目を離せない。恐怖からかは解らないが、何故か視線を外せない。それに変な気分になってきた気もするグリンガムだった。

 

「そう。このナザリック地下大墳墓を支配するアインズ・ウール・ゴウン様とアインズ様を手助けするアタシのご主人様のクロム様。アインズ様もクロム様もどちらも常識を逸脱した力の持ち主。そんな御方の支配する地に無断で入り込んでただで済むわけないじゃん」

 

「くっ……」

 

「でもさ、何でか知らないけど、クロム様にはアンタを回収しろって言われてるんだよね」

 

「俺を…?」

 

「そう、アンタだよアンタ」

 

スティレットでグリンガムの鎧を叩くエクレ。この距離なら攻撃が当たる。それは解っているのに動けない。

 

「あと言っておくけど、アンタ達もう終わってるから」

 

「何?」

 

「アタシ人間辞めてるんだよねー」

 

そう言った直後、エクレの腰辺りから羽が出てきた。漆黒の羽がエクレの魅力を更に引き立てる。

 

「それにアタシの本当の名前はクレマンティーヌ。種族はサキュバスだから。アンタ達がここに降りた時点でアタシはスキルを使ってたの。このスキルから逃れることは出来ないから」

 

「そんなわけあるか!」

 

「じゃあ試してみなよ。まず動けないからさ」

 

グリンガムは全身に力を籠めて動こうとするが、指一本動かない。周りを見ると、他の仲間も同様だった。

 

「ね?嘘じゃないでしょ?」

 

「ぐっ!」

 

「じゃあ、他のはいらないから死んでもらおうかな?グリンガム以外は死んで」

 

クレマンティーヌがそう言った瞬間、グリンガム以外の身体が動き始めた。ただし、本人の意思で動いているわけではなさそうだった。何故なら全員が刃物や瓶を割ったりして喉笛を斬ろうとしているからだ。

 

「な、何をしたんだお前は!?」

 

「ふふふ……」

 

クレマンティーヌはグリンガムの質問には答えずに笑うだけだった。グリンガムの仲間達は泣きながら死にたくない死にたくないと言いながらも、自らの喉笛を切り裂いた。グリンガムはその光景を見ることしかできなかった。チームのリーダーとして仲間を救うことが出来なかった。

 

「これでいいよね。さて、アンタをクロム様の元まで連れて行くから」

 

「……さん」

 

「えー?何て言ったのー?聞こえなーい」

 

「絶対に許さんぞ!!」

 

「……はっ、寝言は寝て言えよ。アタシ如きのスキルで動けない奴が何言ってんの?」

 

「俺を舐めるなぁぁぁぁぁ!!」

 

グリンガムは無理やり身体を動かそうとするが、やっぱり身体は動かない。と思いきや、グリンガムが少しだが位置が変わっていた。

 

「………」

 

「ふ、ふふ。どうだ?動いてやったぞ!」

 

「……うぜぇ」

 

そう言ってクレマンティーヌはグリンガムの四肢を貫いた。

 

「ぐああぁぁぁぁぁ!!」

 

「クロム様には捕まえてこいしか言われてないから生きてれば問題ないよね?」

 

そう言ってクレマンティーヌが腰につけているバックから取り出したのは小太刀と呼ばれる武器だった。そしてその小太刀をグリンガムの肩に突き刺す。

 

「ぐぅぅぅぅ!」

 

「別に我慢しなくてもいいんだよ~?誰も聞いてないからさッ!!」

 

そう言ってクレマンティーヌはグリンガムの肩を斬り落とした。グリンガムは自分もこれで死ぬんだと理解し、自分よりも先に死んでしまった仲間達にすまなかったと心の中で呟いた。そしてグリンガムの意識は途切れた………。




こうしてグリンガムもやられちゃったわけですが、次はフォーサイトVSプレイヤーにしようか

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