オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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28.絶望

二手に分かれて墳墓を捜索するヘッケラン達。外では既にエルヤーが殺されているとも知らずにどんどん墳墓の中へと進んで行く。

グリーンリーフとオーバーキルの進んだ道には沢山のアンデッドが現れた。全員で協力しながらも数を減らしていく。

 

「どんだけいるんだよアンデッド」

 

「そうしゃな。これほとの数かおるんしゃ。もしかしたらここには死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)かいるかもしれんの」

 

「うげー。アイツとは戦いたくないね。俺達のチームは全員接近戦しかできないからな」

 

「ひゃっひゃっひゃ、心配せんてもワシのチームには信仰系と魔力系の魔法詠唱者(マジック・キャスター)かおる。何とかなるわい」

 

「そりゃ助かるぜ、老公」

 

アンデッドを倒しながらも先を目指していると、地下へと続く道をグリーンリーフの一人が見つけた。

 

「これは……この墳墓は一筋縄てはいかないと見た」

 

「同意だな。一度合流したいところだが、どうせ出てくるのはアンデッド系のモンスターだけならまだまだ進めるだろ」

 

そう言って先に進もうとするクローム達をパルパトラが止める。

 

「やめておけ。ここは一度引き返すそ」

 

「何だよ、怖気付いたのかよ」

 

「怖気付いたわけてはない。この先の情報はまた無いから無理に進む必要はないと言いたいんしゃ」

 

「要するに不安なんだろ?ならここで待っているか、ヘッケラン達を探して合流してろよ。その代わり、この先で俺達がお宝を見つけても知らないからな」

 

そう言ってクロームは墳墓の地下へと行ってしまった。パルパトラは一度戻るべきだと判断し、ヘッケラン達との合流を目指した。来た道を引き返して合流しようとするが……

 

「老公……さっきと道が変わっていませんか?」

 

「……そのようしゃな」

 

先程通った道の筈なのにまったく違う道になっていたのだ。ここまで来るのに一本道だった筈なのに十字路になってたのだ。

 

「どうなってるんだこの墳墓は」

 

「愚痴を言ったからって道が変わる訳でもないだろう」

 

「そうだぞ。とにかく、どちらに進みますか老公」

 

「真っ直くしゃ。とにかく真っ直く進んてみるそ」

 

パルパトラを先頭に道を進んで行くと、広い場所に着いた。そこには高級そうな置物や宝箱が置いてあった。パルパトラ以外のメンバーがそのお宝を目にして興奮しているのに対し、パルパトラは警戒していた。道が変わっていたこと、目の前にある宝、どうにも腑に落ちないのだ。

メンバーの一人が宝箱に触れると、

 

 

 

宝箱が襲ってきた。宝箱を触った男は宝箱に腕を噛みちぎられた。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

「モンスターの擬態か!」

 

「くそっ!陣形を組め!」

 

宝箱に触れたことが引き金だったかのように壁が開き、そこから様々な骸骨(スケルトン)が現れた。しかも普通の骸骨(スケルトン)と違い、持っている武器には魔法の力を感じる。

 

「何しゃあのモンスターは」

 

「老公もご存じないのですか?」

 

「長年モンスターと戦ってきたか、このようなモンスターは見たことはない」

 

「そうだろう?」

 

骸骨(スケルトン)の群れの向こうから声が返ってきた。骸骨(スケルトン)達が左右に分かれ、一本の道ができた。その道を通ってきたのは……

 

死者の大魔法使い(エルダーリッチ)!?」

 

「この墳墓の支配者か!」

 

「違う。私はこの墳墓の支配者ではない。まず、私などこの墳墓の中では最弱といっても過言ではない」

 

「ば、馬鹿な……死者の大魔法使い(エルダーリッチ)よりも強いアンデッドがこの墳墓にはいるというのか!?」

 

「そうだとも。その御方こそこの墳墓の支配者。そして、いずれはこの世界を支配される御方だ。おっと、紹介が遅れたな。私は元はスレイン法国に仕えていたが、今はこの墳墓に仕えているニグンだ」

 

「……やれやれ。とうしようもなさそうしゃの」

 

パルパトラは槍を構える。それに習い、メンバーの男達もそれぞれ、己の持つ武器を構えるが、

 

「私の主の命により、貴様らを殺す。ただし、そこの老人。お前は別だ」

 

「つまりお主の目的はワシということてよいんしゃな?」

 

「……手足を失っても構わないと言われている。抵抗するならするがよい」

 

「ひゃっひゃっひゃ。それならワシと取引せんか?」

 

「取引だと?」

 

「そうしゃ。ワシはとうなってもいい。たか、こやつ等はまた未来ある若者達。ワシの命と引き換えにこやつ等を見逃して欲しい」

 

そう言ってパルパトラはニグンに頭を下げた。メンバー達はお止め下さいと言っているが、それを無視してニグンは考え込む。パルパトラはいけるかと思ったが……

 

「それは出来んなぁ」

 

「……何故しゃ?」

 

「この墳墓の支配者であられる御方は静かに暮らしていたいのだ。もし、ここでお前の仲間を見逃したことでこの墳墓に今回よりも大量の兵がやって来たら……それこそこの世界の終りを招くことになる。まあ、私はそれでもいいが、まだ準備が整っていないらしいのでな。今回は誰も逃すわけにはいかないのだよ」

 

「……そうか。それなら仕方ない…のッ!!」

 

「むっ!」

 

パルパトラはニグンの一瞬の隙を狙って槍を突き出したが、盾を持った骸骨(スケルトン)に防がれた。舌打ちをしつつもパルパトラは攻撃の手を緩めない。その光景を見てメンバー達も戦おうとしたが、

 

「逃けろ!!お前達は逃けるんしゃ!!」

 

パルパトラがそう言うが、誰一人逃げようとはしなかった。

 

「老公を残して逃げるなんて我々にはできません!」

 

「逃げるなら老公も一緒です!」

 

「お前達……」

 

「フン、雑魚が。お前達に用はないのだよ。《電撃(ライトニング)》!」

 

ニグンの放った魔法が二人の魔法詠唱者(マジック・キャスター)を貫いた。回復魔法を使ったり、ポーションで回復しようとするが、弓を持つ骸骨弓兵(スケルトン・アーチャー)達の容赦ない矢の雨が襲う。手助けしようとするも、骸骨(スケルトン)阻まれ、思うように動けない。

パルパトラは死者の大魔法使い(エルダーリッチ)であるニグンを相手に奮闘中であった。ニグンはまだ新しい体に慣れていないからか、パルパトラに苦戦していた。

 

「《竜牙突き》!」

 

「《火球《ファイヤーボール》》!」

 

パルパトラの突きを魔法で対応し、飛行(フライ)の魔法を使って空を飛んで距離をとる。パルパトラは距離をとらせまいとニグンを追いかける。が、ニグンを追いかけるパルパトラの動きが止まった。本人の意思で止まったわけではない。身体が動かないのだ。まるで石になったかのように身体が動かなくなっていた。

 

「ふふ、狙い通り私を追ってきたな」

 

止まっているパルパトラの元へニグンが降りてきた。

 

「何故貴様が動けないか教えてやろう。それはな、この部屋の天井に設置されているアイテムの効果だ」

 

そう言ってニグンが指を指した方向には二つの眼光が見える。

 

「あのアイテムの名前はゴルゴンの魔眼。あの瞳を見てしまったモノは無条件で石化するのだよ。お前は私を見逃さないように上を見た。上には私が前もって設置しておいたゴルゴンの魔眼があるとも知らずにな。

 そして、お前は私の後ろにあるこいつの事も見てしまった。その結果がこれだ。……さて、あちらの方も終わったようだな」

 

そう言ってニグンは石化しているパルパトラを持ち上げ、墳墓の更に下へと続く階段を降りて行った。その際、骸骨(スケルトン)に殺された仲間の姿を目にした。パルパトラは自分の実力の無さを痛感し、絶望したのだった。

 

 




さて、これでグリーンリーフもなくなりました。パルパトラは一体どうなるんでしょうねー。石化されてるから置物にされちゃったりしてwww

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