オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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27.墳墓への侵入

ヘッケランが率いるフォーサイトと協力しながらアンデッドを倒していくクロームことクロム達。実はヘッケラン達に会う前に少し離れている場所から様子をうかがっていたのだ。

別にフォーサイトの連中が強いわけではないが、チームワークはなかなかよかったのでチーム全員を転生させようかと考えている。アンデッドを依頼にあるだけ倒した後、クロム達はヘッケラン達と一緒に帝国にある酒場にやって来ていた。

 

「いやー、いつもよりも早く依頼を終わらせることが出来たのはクロームさん、貴方のおかげだ」

 

「いやいや、そんなことはないって。そっちのチームも優秀だったからだよ」

 

(人間にしてはだけどな)

 

本心は口に出さずにヘッケラン達と話す。シュルツとクレマンティーヌはほとんど喋らずに料理ばかり食べていた。これもクロムが指示したことだ。シュルツ達が話すとボロが出そうになるので、基本はクロムが喋ることにしている。ただし、喋りかけられた際はクロムが教えておいたことを喋る手はずになっている。

 

「それにしても……話に聞いていたのと外見がかなり違うんですけど……」

 

「おろろ?俺の事知ってるの?」

 

「ええ。ワーカーといえ、この国にいますから。凄い速さで冒険者の階級を上げているチームがあると噂になっていましたから。ただ、その際に聞いた貴方の外見と違うんですよね」

 

「あー、それにはちょっとした事情があるんだよ」

 

「事情ですか?」

 

「ああ。俺達ってバハルス帝国で冒険者やってたんだけど、資格を剥奪されちゃってな?それでモンスターに八つ当たりしに行った場所で墳墓を見つけたんだよ。それも今までに見たこともない立派な墳墓をな」

 

「墳墓……ですか?」

 

「ああ。その墳墓の中にあるアイテムに触れたら……この姿だったのさ。まあ、呪いとでも考えてるんだよな。でも……あの墳墓にはまだまだお宝の匂いがするんだよなー」

 

と言って、ヘッケラン達を横目で見ると、表情が変わっていた。先程のようなちょっと気の抜けた表情ではなく、まさに仕事をする時の表情だ。

 

「クロームさん。その話、詳しくお聞かせくださいませんか?」

 

「別にいいぜ。俺もあの墳墓についてはもう一度チャレンジしたかったしな」

 

そう言って、クロムはヘッケラン達に墳墓の場所、そこに現れたモンスターについて教える。ただし、この時のクロムは獲物が釣れたとあくどい笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その日の夜。クロームのチーム『オーバーキル』、ヘッケランの『フォーサイト』の他に3チームのワーカーが集まっていた。その理由は、クロムの見つけたという墳墓への探索だ。クロームの話を聞いたヘッケランは他のワーカーチームの協力して墳墓を攻略しようと言い出したのだ。クロムはそれを了承した。そしてヘッケランは昼のうちに他のワーカーチームに協力を要請した。そして集まったのが、グリンガムが率いるチーム『ヘビーマッシャー』、パルパトラ・オグリオンのチーム『グリーンリーフ』、ガゼフに匹敵する強さを持つと言われているエルヤー・ウズルスのチーム『天武』が集まった。

本来ならワーカーが協力し合うことはほとんどない。が、クロームの話ではその墳墓には持ち帰りきれないほどのお宝があるらしい。だからこそ協力したのだろう。

 

「さて、これよりクロームさんの言っていた墳墓に向かうが、何か異論がある奴はいるか?」

 

とヘッケランが訪ねる。誰も異論はないようだった。

 

「それでは出発だ」

 

ちょっとした集団が墳墓に向かって歩いて行く。当然墳墓に向かう途中でモンスターが現れるのだが、各チームのリーダーがすぐさま倒していくのでさほど邪魔にはならなかった。どちらかというと、うざかった。

しばらく歩くと、それらしいモノが見えてきた。

 

「あれだ!あの墳墓にとてつもないお宝が眠ってるんだ!」

 

とクロームが大きな声を出した。ヘッケラン達一向はとりあえず荷物を降ろし、作戦を伝える。クロームの話で基本この墳墓にいるのはアンデッド系のモンスターとのことだ。ならば信仰系魔法詠唱者(マジック・キャスター)や打撃武器が有効だ。そのことは事前に伝えておいたので、ほとんどのメンバーが打撃武器を装備している。

 

「さて、ではこれより墳墓に侵入するわけだが……どうする?クロームさん曰く、入り口には罠がないらしいから全員で突入するか?」

 

「それもいいと思うが、あんまり集まりすぎても動きにくいだけじゃね?」

 

「そうしゃな。ここは二手に分かれるへきしゃ」

 

「異論はない」

 

「ええ、構いませんよ」

 

とりあえず二手に分かれて行動することになった。『フォーサイト』と『ヘビースマッシャー』、『オーバーキル』と『グリーンリーフ』。『天武』は私だけで十分ですと言うのでそのままで。

 

「じゃ、とりあえず行くか老公」

 

「ああ、行くとするか」

 

まずは墳墓を一部知るクロームとパルパトラ達が入って行った。そして、3分程待ってからヘッケランとグリンガム達。エルヤーには悪いが、地上で待ってもらうことにした。というかクロームが無理やり待たせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……納得いきませんね」

 

天武のリーダー、エルヤーが独り言を呟く。エルヤーはまれに現れるという強いアンデッドと戦えると期待して誘われてもいないのにこの探索に協力をしたのに自分は地上で待っていろ言われたのだ。しかも幼い子供に。

 

「私の強さを知らないのですかね……?いえ、そんなことはどうでもいいのです。何故、強い私が待たされなければいけない。ここにいるべきはあの子供の筈です」

 

エルヤーはクロームの事については何も知らない。ただ、新しいワーカーだということは分かっている。だが、納得がいかない。と、不満を募らせていると、足音が聞こえた。

 

「……モンスターですかね?」

 

「いえ、違います」

 

エルヤーが声をした方向に顔を向けると、そににはマントを纏った二人の男が立っていた。二人とも顔は見えないが、一人は燕尾服を着ている。

 

「私は執事ですよ」

 

「執事……だと?何故こんなところに執事がいる?」

 

「何でって……私はこの墳墓を支配する御方に仕えているからですよ」

 

「ほぉ?つまりこの墳墓には支配者がいるわけですか」

 

「そうなります。が、私の主よりあなたは殺しても構わないらしいですからね。せめて弟子の鍛錬に付きあってもらおうかと」

 

「鍛錬だと?」

 

「はい」

 

そう言って執事は纏っていたマントを外した。エルヤーは男の顔に驚きを隠せなかった。それは人のモノではなかったからだ。

 

「紹介が遅れました。私、このナザリック地下大墳墓の執事、ドゥルガー・アルジェントと申します。そしてこちらが私の弟子の」

 

「ブレイン・アングラウスだ」

 

「ブレイン・アングラウス!?」

 

エルヤーは更に驚いた。ブレイン・アングラウスと言えば、あのガゼフ・ストロノーフに匹敵する程の剣豪。かなりの強敵だが、

 

「ふ、ふふふ……ブレイン・アングラウスですか。驚かされましたけど、貴方では私の相手にはなりませんよ?」

 

そう言って構えるエルヤー。それに対しブレインは構えようとしない。

 

「私はあのガゼフ・ストロノーフに匹敵する強さです。そのガゼフ・ストロノーフに負けた貴方は私よりも弱いということです」

 

「……」

 

ブレインは何も答えない。

 

「どうしました?怖気付きましたか?」

 

「……口よりも体を動かせばどうだ?」

 

ブレインが挑発する。エルヤーはこれは誘いだと判断して動かなかった。

 

「……一応気は使ったんだがな」

 

「いいんですよ。正直言えば、あんなゴミと今の貴方じゃ話になりませんしね」

 

「ゴミだと?」

 

「ええ、そうですよ?だって貴方………私の攻撃見えていませんでしたよね?」

 

「……え?」

 

何を言ってるんだと思った次の瞬間、エルヤーの右手が地面にボトッと音を立てて落ちた。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「どうですか?今の攻撃は見えましたか?」

 

「ええ。見えました。俺の武技に似ています」

 

「貴方の武技が似てるんですよ。この技はただ相手を斬るだけではなく、鎌鼬も起こせるんですから」

 

「…!素晴らしい技でした」

 

「貴方ならこの技を取得できますよ」

 

エルヤーが痛みで絶叫しているというのに、二人は気にせず話をしていた。エルヤーは止血をしつつ、自分の右手を拾い、奴隷のエルフに怒鳴る。

 

「何をボーっとしている!早く回復魔法をかけろ!」

 

エルフ達はビクッと体を震わせ、エルヤーに向けて回復魔法を使用した。エルヤーの右手は何事もなかったかのようにピッタリとくっついた。

 

「さて、相手も回復したようですし、次は貴方がやってみなさい」

 

「はい」

 

「こ、この……!」

 

エルヤーは既に冷静ではなくなっていた。それと同様に余裕もなくなっていた。先程のドゥルガーの一撃は冗談抜きで見えなかった。ブレインはそれと似たような武技を使えるとも言っていた。エルヤーが使う武技の中で攻撃系の武技は《空斬》だけだ。エルヤーはとにかく《能力向上》、《能力超向上》で能力を上げる。

 

「く、《空斬》!!」

 

「ふッ!」

 

エルヤーの放った全力の斬撃を放つが、ブレインが斬撃を斬る。ドゥルガーに至ってはブレインの斬った斬撃を更に細かく切り刻んだ。

 

「そ、そんな……こ、こんなバカなことがあり得るかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「だよな。俺もそう思ったが……今では俺もその集団の一員だ」

 

気づけばブレインが懐まで入り込んでいた。そしてエルヤーの身体は見事に真っ二つにされたのだった。だが、まだ意識はある。

 

「お、お前ら!早く魔法を…ガハッ!」

 

一人のエルフがエルヤーのことを蹴った。

 

「な、何をするこの奴隷風情が!ぐっ!」

 

更にもう一人のエルフもエルヤーを蹴り始めた。最終的には3人のエルフに蹴られていた。エルヤーはいつの間にか死んでいたが、ドゥルガーにとってはどうでもいいことだった。

 

「師匠、ちゃんとできていましたか?」

 

「50点。まだ神閃だけしかできていません。例えるなら……そうですね。あのゴミが使った斬撃を飛ばす武技と組み合わせることをこれからの修行に付け足しましょう」

 

ドゥルガーはその場に座り込んでしまったエルフと死体を担いでナザリックへと戻って行った。




エルヤー嫌いだ!!

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