オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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26.フォーサイト

ナザリックの戦力増強の為にアインズとクロムは早速行動を開始した。アインズは一度、死の騎士(デスナイト)を召喚した際死体を使って召喚した場合は何時間経っても消えないということに気づいた。そこでアインズはデミウルゴスにしたい回収を命じたのだった。今ナザリックにはデミウルゴスとその配下によって墓場から死体を回収し、その死体がアインズの元まで運ばれている。アインズは限界まで死の騎士(デスナイト)の生産をしていた。

 

一方、クロムはというと……

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃっはー!殺せ殺せ!」

 

モンスター狩りをしていた。クロムはバハルス帝国に一度戻り、ワーカーとしてモンスター退治の依頼を受けていた。冒険者の頃と同じチーム名でメンバーには以前と変わらずだ。

そしてバハルス帝国に戻ってからはひたすら依頼をこなし続けている。金は十分に集まるのだが……

 

「なかなかいい奴はいねーな」

 

「そうですね」

 

クロムは依頼をこなしつつ、他のワーカーチームに強い者がいないか探していたのだった。強いと言っても、人間としてだが。クロムは今は人間の姿なので食欲も性欲もある。ナザリックのメイドが作ったサンドイッチを食べながらクレマンティーヌがモンスターを倒しているのを見学していると、

 

「クロム様、2km程離れたところで冒険者らしき人物達を発見しました」

 

「ごくろう。下がっていいぞ」

 

影の悪魔(シャドウ・デーモン)が報告しに現れた。クロムはその報告を聞くと、クレマンティーヌが相手をしていたモンスターを瞬殺し、その冒険者らしき人物がいる場所まで向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロム達から2km先にいたのはワーカーチーム、『フォーサイト』だった。チームのリーダーのヘッケランはいつも通りにモンスターの退治の依頼をこなしていた。

 

「ったくよー……もっとパーッと稼げるような依頼はないもんかねー」

 

「ある訳ないでしょ。そんな減らず口叩く暇あったら戦いなさいよ!」

 

同じチームのイミーナが矢を放ちながら叱ってくる。イミーナはフォーサイトの弓兵で、ハーフエルフだ。

 

「はいはい。アルシェ、そっちは問題ないか?」

 

「―――問題はない。魔力はまだある」

 

アルシェと呼ばれた少女は、魔力系魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ。帝国魔法学院に通っていたが、鮮血帝によって貴族だった実家は取り潰され、帝国魔法学院を止めることになった。両親は現実を直視せず、貴族だった頃と同じ生活をしているのでお金は貯まらないのに借金だけが増えていく。アルシェは唯一の稼ぎ頭として全ての夢を捨ててワーカーとなった。だが、彼女はチームには恵まれていた。フォーサイトの皆は一般的なワーカーとは違い、仲間との絆を大切にしているチームだ。その為ワーカーではありがちの仲間割れが起こることはない。

 

「―――ロバーデイクは?」

 

「こちらも大丈夫ですよ」

 

ロバーデイクはアルシェとは違い、信仰系魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ。ロバーデイクは神官だったが、神殿という組織の枷の下ではより多くの人々が救えないという理由でワーカーとなった男だ。ワーカーになった理由からわかる善人だ。

 

「しかし……最近はこういった依頼も減りましたよね」

 

「そうだな。確か……『オーバーキル』だっけか?」

 

「―――そう、そのチームが依頼を次々とこなしていくからこちらの仕事がすごい勢いで減っていく」

 

「アルシェの言う通りね。難関な依頼でもその日のうちに片付けてくるらしいし、そのチームって元はオリハルコン級にも匹敵する程の強さらしいのよね」

 

「俺達も結構強い方だと思ったんだがな……上には上がいるもんだな」

 

そう言いながら目の前のモンスターを倒している。ヘッケラン達がいるカッツェ平野にはアンデッドが発生するため、定期的に倒しておかなければより驚異のアンデッドになってしまう。そこでバハルス帝国では冒険者とワーカーにアンデッド退治の依頼をだしているのだった。カッツェ平野は見晴らしがいいので、新たな敵が来ればすぐに分かる。

 

「……ん?向こうからこっちに向かってくる人影が見えたような……」

 

「アンデッドか?」

 

「ううん。まだ分からない」

 

イミーナが見ている方向を警戒していると、現れたのは三人組の冒険者……ではなくワーカーチームだった。冒険者じゃないと判断したのは、冒険者が首から下げている冒険者の証が無いからだ。

 

「おっ?アンタ等もアンデッド退治の依頼を受けたのか?」

 

「も?」

 

「そうそう。俺達もアンデッド退治の依頼を受けてここに来たんだよ」

 

「そうなんですか」

 

「おっと紹介が遅れたな。俺は元冒険者チーム『オーバーキル』のリーダー、クロームだ。まあ、ワーカーになってもチーム名は変えてないんだけどな」

 

と笑いながら言った。だが、ヘッケランは驚きで声が出せなかった。ヘッケランが想像していたオーバーキルのチームリーダーはもっと人間離れした体格で、ムキムキな男だと想像していたが……今ヘッケランの目の前にいる男、いやどちらかというと少年に近い外見だ。

それにもう一つ驚いたのは少年の武器の数だ。腰に剣を携えているが、この近くでは見たことのない形状をしていた。背中にはハンマーや槍、様々な武器を背負っていた。一体この少年のどこにそんな力があるのか不思議でならなかった。

 

「で、こっちが同じチームのメンバーの一人アドヴェントだ」

 

「どうも」

 

「そして」

 

「はぁーい、アタシがエクレでぇーす。よろしくねん♪」

 

オーバーキルのメンバー全員が自己紹介をしてきたのでこちらも自己紹介をする。

 

「へ、ヘッケラン・ターマイトだ。このワーカチーム、『フォーサイト』のリーダーをさせてもらっている」

 

「私はローグデイク・ゴルトロンです。元神官です」

 

「私はイミーナ。……あのさ、さっきからジロジロ見てるけどハーフエルフがそんなに珍しい?」

 

「へぇ……?ハーフエルフなんだ。初めて見たわ」

 

イミーナがハーフエルフと知って少しクロームの表情が変わったような気がした。

 

「―――私はアルシェ・イーブ・リイル・フルト。このチームの魔法詠唱者(マジック・キャスター)

 

「……ちなみに何位階まで使える?」

 

「―――第三位階までなら使用できる。そちらには魔法詠唱者(マジック・キャスター)がいないようだが」

 

「ああ、うちのチームには魔法は必要ないからな」

 

「……は?」

 

「俺達の場合はモンスターや敵と遭遇したとしても戦闘終了まで10秒もかからない。だからこそ魔法支援を必要としないし、時間のかかる魔法を必要としないのさ」

 

そのクロームの返答にヘッケラン達が驚愕した。戦闘に10秒もかからない、そんなのはアダマンタイト級でさえ難しいことだ。だが、目の前にいるクロームが嘘をついているようにも見えない。

 

「まっ、依頼内容は同じ何だしさ。ここは協力しないか?」

 

「協力……ですか?」

 

「そっ。別にやることは変わらないんだからさ」

 

「……うちのメンバーに聞いてみます」

 

ヘッケランは後ろを振り返り、仲間たちに尋ねる。協力すべきか、協力せずにチームだけで依頼を続けるか。

 

「俺としてはあの少年の実力を見てみたいね。どれほどの強さなのかを知りたい」

 

「私は反対ね。協力したところで裏切られるのがオチよ」

 

「―――同感。それに協力したところでそれぞれのチームワークがあるから意味がないと思う」

 

「そうですかね?私はいいと思いますが」

 

と、賛成2と反対2と綺麗に判れたが、結局はリーダーが決めたことなので協力することになった。

 

「ではクロームさん。協力しましょうか」

 

「よし、それじゃあアンデッド退治しようぜー!」

 

こうして『オーバーキル』と『フォーサイト』が協力してアンデッド退治を再開したのだった。




フォーサイト出せたー。
基本的にフォーサイトのメンバーって好きなんだよね

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