ナザリック地下大墳墓の会議室にアインズとクロム、各階層守護者とシュルツとドゥルガーが集まっていた。
「さて、忙しいところ皆に集まってもらったのはクロムさんからお前達に伝えておきたいことがあるからだ」
「クロム様がですか?」
「ああ、ちょっとしたイレギュラーが発生してな」
クロムは大きなため息をついた。
「俺とシャルティアは武技を使える人材を確保しに行ったんだが……まあ、武技を使える男は既にシャルティアの支配下にあるからいいんだが、その途中である冒険者チームに襲われた。俺達はそのチームを一人だけ残して他は全員殺したんだがな、そのチームの中の一人がユグドラシルの
そう言ってクロムは隣に座るアインズをチラッと見た。アインズはさっと顔を逸らしたが、クロムはそれでもアインズを無言で攻める。
「で、情報を聞き出すと伏兵がいたらしくてな……そいつの後を追っていたら奇妙な奴等と遭遇したんだ」
「奇妙な奴ら?」
「ああ。そいつらは冒険者ではないことは装備を見て一目瞭然だった。それに冒険者のプレートも身につけてなかったし。更にステータスを見てみると普通の冒険者のレベルよりもかなり高かったんだよな。珍しいと思って戦闘してみると……まさかのまさか、
「……何故
「それは簡単なことだ。なあ、アインズ。俺達アンデッドは精神支配をうけない種族だよな?」
「?何を今更……」
「そのアンデッドが精神支配を受けているって言ったら?」
「ッ!?どういうことだ!?」
「俺はそいつらから逃げる時に身代わりとして
「あ、ありえない……そんなことがあり得る訳がない!」
珍しく動揺するアインズを見て階層守護者達も不安そうだ。だが、アインズが動揺するのも仕方がないことだ。本来アンデッドは精神支配をうけないというアンデッドだけの特性があるのだ。それはユグドラシル時代でも変わらなかった。アンデッドの精神支配をする場合は完全なる狂騒と呼ばれるアイテムを使用しなければならない。それ以外の方法でアンデッドを支配することは不可能なのだ。
だが、クロムの戦った相手はその不可能をやってのけた。つまり、未知のアイテムではなく
「それにな……俺の配下にスレイン法国にいた奴がいるだろ?」
「確かクレマンティーヌだったか……」
「ああ、アイツもそのアイテムはスレイン法国の至宝だと言っていた。しかも六大神と呼ばれている奴等の者だったらしいんだよな。……そして六大神の子孫が神人と呼ばれていることから俺はこう思った。……六大神って言うのはプレイヤーじゃないのかってな」
「はぁ!?」
「く、クロム様。つまり我々がこの世界にやってくるよりも前に他のプレイヤーがこの世界にやって来ていたと考えておられるのですか?」
デミウルゴスが訪ねてくる。
「ああ、少なくとも俺はそう思うな」
「だ、だがクロムさん。俺達がこの世界に来たのは精々二週間ほど前だぞ!?話に聞くと六大神は600年前に現れたとか……」
「まあ、それについては俺も分からん。どうして俺達と六大神と呼ばれたプレイヤー達とこれほどまでの時間の差があるかはサッパリだが……結論から言えば、まだスレイン法国には
「……ツマリコノ世界ニハ我々ダケデハナク、ソノスレイン法国モ
「そうなるな。いや~、まさかこの世界にも
「あ、ああ。だが、クロムさんがその連中と会ったのは全くの偶然なんだろ?」
「ああ。本当に偶然だったな。なあ、シャルティア」
「ええ、わたしも最初は逃げ出した冒険者が他の冒険者チームと合流したものだと思っておりましたので」
「……これは予想外の出来事だが、この情報が今入手できたことは助かるな」
「どういうことですか?」
アウラがアインズに尋ねる。アインズは椅子から立ち上がり、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを見つめる。
「仮にこの情報をもっと後で入手したとなると、今まで順調に進んでいた私の計画に支障をきたすことになるだろう。だが、今入手したとなると修正は可能だ。計画がかなり進んでからの修正よりも、あまり進んでいないときの方が修正は楽だろ?」
そう言ってアインズは笑う。
「流石はアインズ様。もう既に次の計画を考えていらっしゃるのですね」
「当然だ。その為にもアウラ、お前には今よりも頑張ってもらうことになるが……大丈夫か?」
「問題ありません!寧ろどんどんご命令ください!」
「うむ。助かるぞ。これから我々は戦力の増強を行う。その為にも……デミウルゴス、エ・ランテルでもバハルス帝国でもどこででもいい。死体を回収してくるのだ」
「承知しました」
「コキュートスには悪いが、しばらくは一人でナザリックの警護をしてくれ」
「オ任セクダサイ」
「そして私はモモンとして情報収集をしながら冒険者を続ける。マーレとシャルティアにはまた後で仕事を与える。クロムさんはどうする?」
「そうだな……まあ、俺はとりあえず戦力増強の為にもっと強い人間を確保してくるとするぜ。なんせバハルス帝国にいるワーカーは結構手練れが多いらしいからな」
「わかった。それではアルベド、ナザリックのことを頼むぞ」
「はい、お任せください」
こうして今後の方針が決まったのだった。
ちょっと短めで。
さーて次はどんな話にしようかねー