オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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21.漆黒の英雄誕生

カジット達を見事倒したアインズはンフィーレアの確保へと向かった。神殿の地下へ行くとそこにほぼ全裸のンフィーレアが立っていた。

 

(男の裸なんて誰得なんだろうな……)

 

と考えながらンフィーレアに近づく。近づいて分かったことだが、クロムから聞いた通り、今のンフィーレアはただのアイテムに成り果てているようだった。それに両目が失明している。

 

「……目は治せるからどうでもいいが、これはどうするか」

 

アインズは叡者の額冠を見つめる。無理やり外せば、ンフィーレアは発狂し死に至ることになる。生き返らせることは可能だが、発狂前に戻っているという確証がないのでやりたくはない。となると……

 

「やはりアイテムの破壊しかないか」

 

アインズは叡者の額冠を破壊しようとする。しかし、

 

「おっと、それは待ってもらおうか」

 

「ッ!?いつの間に……いや、それよりも墓場には誰も入れない筈だ。それに入れたところでナーベラルがすんなり通すわけがない。……貴様は一体何者だ、老人」

 

アインズの背後にエ・ランテルで酔っ払っていた老人が立っていたのだ。しかもアインズに気づかれることなく。老人はニヤッと笑い、背を伸ばした。

 

「俺が何者かだって?ふふふ……いいぜ、教えてやるよ。ギルド、アインズ・ウール・ゴウンのギルド長モモン。いや、この世界ではアインズだっけか?」

 

「!?」

 

「俺の正体はな……」

 

老人が喋ろうとした次の瞬間、老人の肉体を何かかが貫く。それは指の骨だった。

 

「あ……ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

老人の肉体が真っ二つに引き裂かれ、その中から骸骨が現れた。その骸骨の正体は……

 

「じゃじゃーん!クロムっだよ~ん!」

 

同じ仲間のクロムだった。

 

「ねえねえ、驚いた?一瞬他のプレイヤーだって期待した?でも残念、未だに他のプレイヤーの手掛かりはないんだよねー」

 

と芝居がかった動きを見せるクロム。正直、この時のアインズはマジギレしそうになっていた。

 

「まあ、俺のおかげでンフィーレアがどこにいるか分かったんだから怒るのは勘弁してくれよな。後、他のプレイヤーのことだけど、この世界では神人って呼ばれているらしいから探すのならプレイヤーじゃなくて神人について何か知らないかって尋ねてくれよ」

 

「……わかった。が、クロムさん。貴方にはナザリックに戻り次第ペナルティを与えますから」

 

「え」

 

「言っておきますけど、僕一言も許すなんて言っていませんからね?」

 

骨の顔なのでアインズが笑顔なのは本人にしか分からない。

 

「そ、それよりもンフィーレアの装備している叡者の額冠の事なんだが」

 

「ああ、破壊しますよ。そうしないとンフィーレアを救えませんからね」

 

「それなんだがな……俺のスキル使えば、アイテムの破壊せずにンフィーレアを助けられるかもしれないんだよな」

 

「……どういうことですか?」

 

アインズがクロムに尋ねる。

 

「簡単な話さ。肉体が生きていれば発狂が起きる。逆に言えば肉体が死んだ状態なら……」

 

「発狂は起こらない?」

 

「可能性はある。だから……確かめるのさ!!」

 

クロムは鎌を取り出し、《魂狩り》を使ってンフィーレアを切った。クロムの手にはンフィーレアの魂が乗っている。

 

「さて、俺のスキル《魂狩り》の特徴は切った相手の魂を抜く。それともう一つ、魂は存在している為肉体は仮死状態になるということだ。これなら大丈夫だろ」

 

「では外すぞ」

 

アインズが慎重に叡者の額冠をンフィーレアから取った。ンフィーレアの肉体は発狂せず、仮死状態のままだった。

 

「よしよし、これで叡者の額冠を失わずにすんだな。それと……あ、あったあった」

 

クロムはカジットの遺体から宝珠を取り出した。アインズがンフィーレアを抱えて近づいてきた。

 

「そのアイテムは……」

 

「死の宝珠って言うアイテムらしい。……ん?頭に誰かの声が響く……死の宝珠の声なのか?」

 

《その通りです。ご理解が早くて助かります》

 

何と死の宝珠には人格があった。クロムは混乱することなく死の宝珠の話を聞いた。死の宝珠としてはアインズ、もしくはクロムのどちらかに仕えたいとのことだった。

 

「どうするアインズ。お前が持つか、俺が持つか」

 

「クロムさんでいいんじゃないですか?僕は基本モモンとして行動することが多くなりそうなんで……」

 

「そういうことなら死の宝珠は俺が貰うぜ」

 

そう言ってクロムは死の宝珠を飲み込んだ。死の宝珠は人の体で言う胃袋の辺りで浮かんでいた。

 

「これでアインズとおそろになったわけか。色は違うけどな」

 

アインズは敢えてクロムを無視してナーベラルの元へと向かった。ナーベラルは死体を一か所に集めていた。死体を集めるのにはハムスケも手伝っていた。ナーベラル達のはるか後方では三体の悪魔が待機している。

 

「アインズ様、人間は……クロム様!?いつの間にいらっしゃたのですか!?」

 

「さっきの間にな。まあ、気にしないでくれ」

 

「ナーベラル、この男の死体だけは街に持ちかえるぞ。首謀者として引き渡す」

 

「承知しました」

 

ナーベラルはカジットの遺体を持ち上げ、ハムスケの背中に乗せた。ちなみにハムスケはアインズの本当の姿を見たことでより一層アインズにつくそうと心に決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この誘拐事件は瞬く間にエ・ランテルだけではなく近隣の街や国に伝わった。大量のアンデッドをたった二人と一匹で倒しきるだけではなく、誘拐された者は傷一つ負っていなかったという。その冒険者の名はモモンとナーベ。彼らは漆黒の英雄と呼ばれるようになった。




はい、次はお留守番中のナザリックの階層守護者達について書きますよー

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