モモンことアインズは老人からンフィーレアの居場所を墓地だと断定し、ナーベラルに魔法を使わせて様子を見ていた。
「……これは凄い量だな」
墓地には大量のアンデッドがいた。アンデッドと言っても、アインズからすれば雑魚だが、この世界の人間にとっては大きな脅威だ。そんな相手が大量にいるのだ。もし、この量のアンデッドを全て倒せばモモンの名声は一気に高まることだろう。
「それにしてもこれだけの量のアンデッドをどうするつもりなんだ?」
この世界では
「そうか……だからンフィーレアを攫ったのか」
「ど、どういうことですかアインズ様」
「クロムさんから聞いたのだが、ンフィーレアを攫った連中の手には叡者の額冠というアイテムを保持している。そのアイテムは装備した者を《
「では攫った連中は高位の魔法を発動させるために攫ったのですか?それなら身近にいる者を使用する方が良いのでは?」
「その通りだ。だが、その叡者の額冠は適応した者が装備しなければ他の者は死ぬらしい。しかも、装備している者から額冠を外せばその者は発狂し死んでしまうらしい。そこでンフィーレアなのだよ」
「?何故ンフィーレアなのですか?」
「ンフィーレアには
「ではンフィーレアを攫った理由は」
「ああ、間違いなく叡者の額冠を使用するためだな。さて、目的地は分かった。乗り込むとするか」
アインズが墓地へと向かおうとした。だが、
「そこのあんちゃん。墓地に向かう準備はできたのかい?」
振り向くと、先程の老人が立っていた。
「……お前は一体何者だ?」
「俺かい?俺はしがない酔っ払いさ。そんなことよりも……こういうことは依頼を受けて動くべきなんじゃないか?ヒック」
「どういうことだ」
「どういうことも何も……あんちゃんに会いたがっている依頼人を俺は連れて来ただけさ」
そう言って、少し横に老人が動くと、老人の背後には老婆が立っていた。
「あんたがモモンかい?」
「そうだが……貴方は?」
「あたしはリィジー・バレアレ。ンフィーレアの祖母だよ」
「ンフィーレアの祖母……その祖母が私に何か用か?」
「ああ、あんたに頼みたいことがある。この酔いだくれから聞いたが、あんたはンフィーレアの居場所を知っているらしいじゃないか。それに聞いた話じゃあんた精霊を追い払ったんだろ?……だからこそあんたに依頼したい。ワシの孫のンフィーレアを救ってほしい!」
そう言ってリィジーは深く礼をした。
「報酬はあんたが望む分だけの額を用意する。なんなら今ある
「……ダメだな。私は金や
「な、何じゃと!?」
「生憎だが、私は金には困っていないし、
「あ、あんた……」
「考えている時間は必要か?孫が助かるのだぞ?私の強さは噂で聞いているだろ?ンフィーレアを攫った俗ぐらいは余裕で倒せる」
「……わかった。報酬はワシじゃ!」
「よし、それではンフィーレアの救出に行ってくる」
モモンはマントを翻し、墓地へと向かう。老人はいつの間にか消えていたので、また問い詰めることが出来なかった。
墓地へ着くと、衛兵が頑張ってアンデッドの進行を食い止めていたが、門が破壊されるのは時間の問題だった。モモンはゆっくりと剣を抜き、
「お前達、門を開けろ」
と衛兵に命令する。衛兵はいきなり後ろから声をかけられたことに驚いたがすぐに、
「何を言ってるんだ!この門の向こうには大量のアンデッドがいるんだぞ!門を開けられるわけがないだろう!」
と言ってきたが、衛兵の言うことなど気にしなかった。門の向こうでアンデッド達が
剣は
一向に門を開けようとしない衛兵にしびれを切らしたのか、モモンは門を飛び越えて墓地にへと入って行った。その後を追うように、ナーベは《
「お、置いて行かないで欲しいでござるよー!」
ハムスケも外壁を昇って墓地へと入って行った。そして数分もしないうちに……
「お、おい。アンデッドの上げる音が……」
「あ、ああ。確かに聞こえなくなった」
衛兵達が壁の上まで昇って墓地の様子を見ると、そこにはアンデッド達の残骸だけが残っていた。墓地の更に奥では戦いの音が聞こえる。
「う、嘘だろ……あの量を相手にまだ戦ってるのか!?」
「……お、俺達は夢でも見ているのか」
こうして今日、漆黒の英雄が誕生したのだった。
「まったく……キリが無いな」
アンデッドをなぎ倒しながら進むアインズ。その上空にはハムスケを抱えたナーベラルがいる。アンデッドは生者に反応するモンスターなので上空にいてもらっているのだ。ハムスケの巨体を支えるナーベラルには申し訳がないが、仕方のないことだ。
アンデッドを倒していると、クロムさんから
「クロムさんか?」
『やあやあギルド長。大量のアンデッドの相手をするのは大変じゃないかね?』
「……何故私がアンデッドと戦っているというのを知っているんだ?」
『まあまあ、そんな細かいことは気にしないでくれよ。そこのアンデッドの相手は俺に任せて先に行きなよ』
クロムがそう言った瞬間、目の前に三体の悪魔がいた。
「ソロモン72柱が一人、ガミジン」
「同じく、グラシャラボラス」
「同じく、ブネ」
三体の悪魔が登場したと同時に周囲のアンデッド達が残骸になっていた。
「どうぞお先にお進みくださいアインズ様。我が主の命によりアンデッドの相手は私達がしますので」
「他にも邪魔が入らないようにガミジンとブネがアンデッドや
気づけばアインズの周りにアンデッドや
「アインズ様、敵は
アインズはソロモンの悪魔達にアンデッドの相手を任せて先に進むのだった。
しばらく歩くと、フードを被った明らかに怪しい連中が何かを唱えていた。何かしらの魔法かもしれないので一応は警戒をしておく。
「カジット様」
フードを被った一人が老人に話しかける。
(……本名なのかな。相手の前で本名で呼ぶとか馬鹿なのかな?)
と思いながらカジットと呼ばれた老人に話しかけた。
「今日はいい夜だとは思わないかカジット?」
「……けっ」
カジットは自分のことを呼んだフードを被った男を睨む。男はあっという顔をしたが、時すでに遅し。
「さて、ここにンフィーレアがいることは分かっている。彼を返してもらおうか」
「返せと言われて素直に返すわけが無かろう。冒険者といってもお主たちはまだまだ駆け出しではないか。そんな連中にこの儂が負けるなど「ありえないとでも言いたいのか?」ふっ、わかっておるではないか。その通りだ」
「その言葉、そっくりそのままお返しさせてもらおう。ナーベ」
「はっ」
ナーベラルは第三位階魔法、《
「どうしたんだ?先程までの余裕が無いように見えるが?」
「笑わせるな!この死の宝珠の力を見せてやる!」
《
「十分負のオーラは溜まった!これで儂の勝ちだ!」
勝ち誇った顔でカジットは二体の
「……ナーベ、いやナーベラル・ガンマ。ナザリックが威を示せ」
「……承知いたしました」
そう言ってナーベは、いやナーベラル・ガンマは着ていた服を脱いだ。だが服を脱いだはずのナーベラルはメイド服をいつの間にか身に纏っていた。手には槍のような武器が握られている。
「ナザリック地下大墳墓絶対支配者、至高の御方、アインズ・ウール・ゴウン様に仕える忠義を尽くす
「メイド……?何を言っておるのだ。この
「……確かに
「そうだ!ゆえにこの世界では
「だが、このナーベラル・ガンマはそれ以上の魔法を使うことが出来る。つまり、天敵でも何でもないという訳になるわね」
「ば、馬鹿な!人間が第三位階以上の魔法を使えるものか!」
「それは私達が人間ならの話だろ?」
アインズが話に割り込む。アインズは今までナーベとカジットの戦いをずっと見ていただけだった。
「私達はな……人間じゃないんだよ」
そう言ってアインズは魔法を解いた。ヘルムが消え去り骸骨の顔が明らかになった。
「ま、まさか
「正解に近いとだけは言っておこう。それにそこのナーベラルも人間ではない。言っておくが、この戦いは最初から勝者が決まっていたのだよ」
アインズが淡々と告げる。絶望するカジットにナーベラルが《
という訳で、カジット死亡しましたねw
さーて、そろそろ階層守護者たちを出してあげないとなー