モモン達はモンスターに襲われた後は何事もなかったかのように無事にエ・ランテルに到着した。
「モモンさん、賢王の名前は決まりましたか?」
「ええ、一応は」
「よかった。それなら登録に時間はあまり時間はかかりませんね」
「登録?」
「はい。冒険者が使役するモンスターは冒険者組合での登録をしないといけないんです」
「つまり、登録してこなければいけないという訳か」
「そうなります。薬草はこちらで運んでおきますので、モモンさん達は登録を済ましてきてください」
「そういうことなら承知した。すまないが、あとは頼むぺテルさん」
「はい、お任せください」
こうしてモモンとンフィーレア達は二手に分かれることになった。
「……よし、うまい具合に二手に分かれたな。いやー、下手に動くわけにはいかないからな。どうしようか迷ったわ」
「クロム様ー、アタシはこれからンフィーレアの確保に向かえばいいの?」
「そうだ。ンフィーレアを確保する際は周りにいる冒険者は殺すな。目撃者がいた方が話は広まりやすいからな」
「りょうか~い。それで確保したのち、カジッちゃんに渡せばいいわけねん?」
「それでいい。そして私はある悪魔を召喚するのさ。そう、アインズの邪魔をさせないようにな」
そう言ってクロムは指輪を使った。召喚陣が三つ浮かび上がり、そこから三体の悪魔が現れた。
「「「何なりとご命令を。我が主」」」
「さっ、我がギルド長の為に働くとしますか」
その頃、薬草を仕舞い終えたンフィーレア達。
「皆さん、ありがとうございます。それでは、一度モモンさんの元まで戻りましょう。合流した後に今回の依頼の料金を払いますので」
「わかりました。いやー、それにしてもモモンさんは本当にすごかったですね」
「まったくであるな」
「ありゃ敵わないわ。ニニャとか
「無理ですよ。魔法を使うよりも先に接近されてバッサリ斬られちゃいます」
「そっかー……ナーベちゃんならどうかな?ナーベちゃんは剣を持ってたけどよ……剣術もできるのか?」
「例えるなら魔法剣士みたいな存在じゃないかって話ですか?あり得ないと思いますけど……」
と色々話し合っていると、
「いやいや~、お疲れ様だね」
と、女性が入ってきた。女性はフードを被っていたが、店の中に入ってくると被っていたフードをとった。その女性はとても美しく、身体もスラッとしている。いわゆる美人だ。それもナーベに匹敵するレベルの美人さんだ。
「お仕事お疲れ様~ンフィーレア君」
「ど、どちらさまですか?
「違うよ~。アタシが欲しいのは
「ぼ、僕?」
「そっ。アタシの知り合いがさ、キミの特殊な力を必要としているのよねー。だから……攫っちゃうの」
「さ、攫う!?」
「うん。攫う」
女性は平然と答えるが、そうはさせまいとぺテル達がンフィーレアと女性の間に入る。
「ンフィーレアさん!アナタは逃げてください!」
「で、でも!」
「正直、俺達全員で戦っても犬死するだけだ。それならニニャ、お前がンフィーレアを連れてモモンの旦那のところまで逃げろ」
「ルクルット!?何を言ってるんですか!ボクも残って戦います!」
「馬鹿野郎!この間合いじゃ魔法を使えば俺達も巻き添えになるだろ!」
「ルクルットの言う通りである!二人は逃げるべきである!」
「ダインまで!」
「ニニャ、アナタには貴族に連れ去られたお姉さんを救い出すという目的があるじゃないですか。アナタはこんなところで死ぬわけにはいけないのです」
「ぺテル……」
「さあ、ンフィーレアさんを連れて早く逃げてください!」
「んー、いい話よね。お涙ちょうだいしちゃったわ。でも残念、誰も逃げられないのよね。
女性の体から何か甘い匂いがしてきたと思ったら、目の前にいる女性には逆らってはいけないように思えてきた。
「ンフィーレア君、一緒に来てもらえるかしら?」
「……ええ、喜んで」
ンフィーレアは漆黒の剣のメンバーの横を通り抜けて女性の元まで歩いて行った。漆黒の剣のメンバーは誰もンフィーレアを止めようとはしなかった。女性はンフィーレアを連れて何処かへと歩いて行った。そして女性がいなくなってから1分程経ってから正気に戻る漆黒の剣のメンバー。
「ん、ンフィーレアさんがいない!?」
「な、何か頭がボーっとするが……それよりもこのことをモモンの旦那に知らせに行こうぜ!」
「それがいいと思います」
「であるな」
四人は頷き、モモンのいる冒険者組合へと駆け出したのだった。
大変なことになっているということを知らないモモンは恥辱を味わっていた。冒険者組合にて、手続きを終えた後、ンフィーレア達の元へと向かおうとすると森の賢王ことハムスケが、
「殿、どうせならそれがしに乗って欲しいでござるよ」
「え?」
「そうですね。これ以上モモンさ――んを歩かせるわけにはいかないのでお乗りください」
「いや、ちょっと……それは遠慮したいんだが」
「殿……それがしも殿のお役に立ちたいんでござるよ!」
「そ、そうは言われてもな……」
アインズとしてはハムスターに乗るという行為は例えるなら大人がメリーゴーランドに乗っているのと同じだ。それに、今この街にはクロムがいる。彼にだけは見られたくないという理由からも乗りたくはなかったが、
「殿、乗ってくださいでござる」
「モモンさ――ん、お乗りください」
ハムスケとナーベラルが必死に乗せようとするので、根負けしてハムスケの背中に乗ることになった。その為、人々からの視線がハムスケに乗っているモモンに集中しているのだ。
(うわぁぁぁぁ!!何これ、何これ?どんな罰ゲームだよ!絶対にクロムさんだけには見られたくないな……ん?)
そう思っていると、モモン達の進行方向からこちらへ向かって走ってくるぺテル達を確認した。だが、ンフィーレアだけはいなかった。依頼の報酬額について話すために走って来たのかと思ったが、表情を見る限り違うようだ。
「も、モモンさん!大変です!」
「どうしたんですか?ンフィーレアさんの姿が見えないんですが……もしやそれと関係あるんですか?」
「え、ええ、ンフィーレアさんが何者かに攫われました」
「……ンフィーレアさんを攫った相手に見覚えはありましたか?」
「いえ、私もンフィーレアさんも初めて会った相手でした。ただし、相手は女性です。それに腰には刺突武器を携えていましたが、何か不思議な力を使ってきます」
「不思議な力?」
「ああ、こっちは視線を外していない筈なのに気づいたら目の前から女もンフィーレアもいなくなってたんだ。しかもその後ちょっとぼーっとなっちまったからよ。何かのアイテム、もしくは魔法を使ったんじゃないかと思ってる」
「ふむ……それでは手分けしてンフィーレアさんを探しましょう。ニニャさんは
「いえ、使えません……すいませんお役にたてなくて」
「いえ、大丈夫ですよ。では、私達がンフィーレアさんを発見した場合、そのまま救出してきます。ぺテルさん達が発見した場合は誰でもいいので私達を探してください」
「わかりました!」
こうしてンフィーレアを探すことになったアインズだが、どこに行ったか見当もつかない。こういう時に役に立つのがクロムさんだが、どこにいるかわからないし、先程から
「……クロムさんの手助けがあればどこにいるかすぐに分かるのだがな……探そうにも何の手がかりもないしな」
と独り言を呟くと、
「何だいあんちゃん。バレアレのぼっちゃんを探してんのかい?」
「ぼっちゃん?ンフィーレアのことか?」
「ああ、そうだよ。ヒック」
モモンに話しかけてきたのは酒瓶を持った酔っ払いだった。
「失礼だが、ンフィーレアを見かけたのなら何処へ行ったか教えていただきたいご老人。礼ははずむぞ」
「礼ならうまい酒をくれよ、ヒック。まあ、酒はいつでもいい。で、バレアレのぼっちゃんがどこに行ったかだったか?ちょー美人なねーちゃんがぼっちゃんを抱えて墓地の方へ歩いて行ったよ」
「墓地?」
「ああ、そうさ。ヒック、あの墓地には沢山の墓があってな、しかもたまにアンデッドが現れる危険な場所なんだが、見た限り墓地へ行ったはずだぜ」
「助かった。礼を言う」
「礼なんざいいからさっさと助けてきなよ」
「ああ、今度上等の酒を持ってくる」
そう言って立ち去ろうとして、気づいた。モモンは老人にンフィーレアは何処に行ったか尋ねただけの筈なのに、老人はンフィーレアがどういう事態に巻き込まれているのかまで知っている。モモンは後ろを振り向くと、酔っ払っていた老人は既にいなくなっていた。
「……あの老人、何者だ?」
「モモンさ―――ん、いかがいたしましょう?」
「……今はンフィーレアを救出することが優先事項だ」
「かしこまりました」
老人のおかげでンフィーレアがどこにいるのか目星がついたが、あの老人は一体何者なのかが気になるアインズだった。
あけましておめでとうございます!
いやー、2016年になりましたねー。今年も頑張って小説を書きますよ!