オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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01.情報

ガルガンチュアとヴィクティム以外の各階層守護者+シュルツとドゥルガーがモモンガとクロムの前にひれ伏している。

 

「面を上げよ」

 

モモンガがそう言うと、守護者たちは顔を上げる。ちなみに、モモンガは面を上げよと言った際、何故か絶望のオーラを発動させていた。オーラを放っていることでモモンガがより一層、死の支配者に見える。

 

「よく集まってくれた。感謝しよう」

 

「感謝などもったいない。我々はモモンガ様とクロム様にこの身ささげた者たち。モモンガ様やクロム様からすれば取るに足らない者たちでしょう。しかしながら我らが造物主たる至高の御方々に、恥じない働きを誓います」

 

「「「「「「「誓います」」」」」」」

 

この場の者すべてがそう言う。

 

「素晴らしいぞ守護者達よ!クロムさんもそう思うだろう?」

 

「あ、ああ」

 

この時クロムは心の中でいきなり話振るなよ!とモモンガに言いたかったのだが、守護者たちの前なので砕けた感じで話せなかった。

 

「お前達なら失態もなく、事を運べると強く感じた」

 

「そうだな。モモンガの言う通りだ。お前達がいるなら俺達も安心して動けそうだな」

 

モモンガとクロムがそう言うと、守護者たちの表情が明るくなった。ユグドラシルだとNPCのこういった表情は見られなかったので、何だか新鮮に感じた。

 

「さて、現在ナザリック地下大墳墓は原因不明の事態に巻き込まれている。そこで先程セバスに地表を捜索させに行かせたのだが……」

 

モモンガが視線を動かした先に、執事服を着た老人が立っていた。アインズ・ウール・ゴウンのメンバーの一人、たっち・みーさんが作ったNPCだ。名前をセバス・チャンという。モモンガはセバスの報告を聞く。

 

「草原だと?」

 

「どういうことだ?ナザリックの周りには沼地だった筈だ。それがなぜ草原に……」

 

「セバスよ、生物や人工物はあったか?」

 

「いえ、周囲1kmには一切確認できませんでした」

 

生物も人工物も存在しない。本当に何もない草原にナザリック地下大墳墓はあるみたいだ。これはモモンガにとってもクロムにとっても衝撃的だった。二人は別世界に飛ばされたという可能性も視野に入れていたが、ここまでユグドラシルと状況が違うと別世界に飛ばされたという可能性が高くなる。

 

「では俺がその先を調べてこよう。何か分かったらメッセージで伝える。では」

 

「あ、クロ」

 

モモンガが何か言いかけたが、指輪によって転移したクロムにはその言葉は届かなかった。

 

「さて、行くとするか」

 

クロムはアイテムを取り出そうとするが、

 

「……しまった。取り出し方がわからない」

 

数分かけてどうにかアイテムを取り出すことに成功した。クロムの手に持つのは神器級(ゴッズ)の武器、《デスサイズ》だ。その名の通り鎌だ。死神と言えば鎌を連想させるものだ。クロムは死神のレベルを上げていると、デスサイズ製作というスキルを入手していた。デスサイズは色々な種類作れるらしく、今クロムの手に持つデスサイズはそんなデスサイズの中でも希少な飛行能力を付与された鎌だ。

この鎌を装備することで飛行(フライ)を使わずに空を飛べる。クロムはデスサイズを装備し、真っ暗な草原を飛ぶ。火や人工的な明かりが無いのに草原は明るい。その理由は、星の輝きが草原を照らしているからだ。

 

「この光景……ブルー・プラネットが見たら何て言うだろうなー」

 

ブルー・プラネット。アインズ・ウール・ゴウンのメンバーの一人であり、自然をこよなく愛する男だ。ユグドラシルには現実で失われた自然を再現しようと始めたらしい。

 

「まず間違いなく発狂しそうだな……その時は俺が制御しないといけないのか?……ん?」

 

空を飛んで、大体500m位の場所でモンスターと戦う人間を発見した。モンスターはモモンガやクロムと同じアンデットだった。どれもが低レベルなのでモモンガとクロムなら瞬殺できる。が、人間の方は苦戦しながら戦っていた。

 

「レベルが低いのか……?いや、ユグドラシルとは別世界だから勝手が違うのか?」

 

ステータスを上空から確認する。クロムだけが使える特殊スキル《死神の眼》。この眼を使うことで相手のステータスを全て確認することができる。HPからMPどころかレベルまで確認できる。

アンデットは3レベルや4レベルだったが、人間の方は最高で2レベルとかなり低かった。

 

「……ああー、骸骨(スケルトン)には打撃系武器が有効なのに」

 

骸骨(スケルトン)と戦う人間は剣で斬りかかっている。普通であれば、骸骨(スケルトン)の相手は打撃系武器を装備する仲間に任せるべきだが、どうやら打撃系武器を装備している者はいないようだ。しかし、剣なら鞘があるから剣をしまって鞘で殴ればいいのにそれをしないということは、そこまで頭が回ってない、もしくは打撃が有効なのかを知らないのどちらかだ。

 

「……助けてもいいが……この姿じゃ絶対俺に襲い掛かってくるよな?」

 

クロムの顔は骸骨(スケルトン)と同じ骨だ。クロムは顔に装備するマスクを探す。マスクを取り出し、顔につける。そしてゆっくりと気づかれないように地面に降りる。クロムは人間に近づく。

 

「お困りのようだな。助太刀しよう」

 

「た、助かる!」

 

クロムが鎌を振るう。すると、今まで苦戦していたのが嘘のようにアンデット達はクロムの手によって倒された。

 

「あ、あんた……凄いな!もしかするとあんたも冒険者なのか?」

 

「冒険者……?」

 

「何だ?あんた冒険者のことを知らないのか?しょうがないな、俺が説明してやるよ」

 

クロムは冒険者についての話を聞いて、驚いた。冒険者と言えば、ダンジョンの探索やモンスター討伐などを連想させるが、この世界の冒険者は簡単に言えば用心棒のようだった。商人達を警護したり、モンスターを倒したりと、まるで夢のない職業だった。

 

「で、俺達も冒険者なんだが……全然知識がないくせにモンスター討伐の依頼を受けてやられそうになったわけだ」

 

「まったく……困ったものだよね。いつも思いつきで行動するんだから」

 

「うんうん。弓矢だって十分にないって言ったのに……」

 

三人は助かったことですっかり気を抜いている。クロムはこの世界について詳しく聞いてみることにした。

 

「それで少々お聞きしたいことがあるんですが……あ、私ク、クロームと言います。以後お見知りおきを。実は私……辺境の地からやって来たもので、俗世には疎くて……それでよろしければ簡単にでいいので教えてもらえますか?」

 

「辺境の地からやって来たのか……うん!俺の知ってることでいいなら教えるよ!俺クラフト・ルドガー。でこっちのメガネかけた奴が」

 

「エルード・クライスです。こちらのぽっちゃりしたのが」

 

「ダダン・オリビアです。よろしくね」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

こうしてクロムはこちらの世界の情報を入手することに成功した。

 

 




クロムさんの持つデスサイズには様々な種類があります。空を飛べたり、不可視になったり、鎌の刃が炎だったりとか沢山あります

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