ンフィーレア達はモモンに言われた通りに先にエ・ランテルへと向かっていた。
「ナーベさんは一体どこで魔法を覚えたんですか?」
「……遠い遠い場所でです」
「それってスレイン法国ではないんですよね。……うーん、思い当たる国はないな……」
「そうでしょうね」
「それじゃあナーベさんには師匠はいるんですか?」
「師匠と言うよりも、魔法については生みの親に教えていただきました」
「生みの親……つまりご両親も
「……答えないといけませんか?」
「あ、別に言いづらいんでしたら結構ですよ。根掘り葉掘り聞くわけじゃありませんから」
「そうですか。では、警護に集中してください」
ナーベはそう言ってニニャとの会話を止めたが、ニニャとしては同じ
「……はぁ、どうしたらナーベさんと仲良くなれるのかな」
とニニャが呟くと、
「少しずつでも進展があればよいのである」
「ダインの言う通りですよ。今はまだ進展が少ないですけど、いずれは二人が仲良くなる未来もありえなくもないですよ」
「えー?それを言ったら俺がナーベちゃんと付き合う未来もあるって……「「それはない」」おいおい、冗談だっての」
と、漆黒の剣のメンバーで話し合っていた。ンフィーレアは仲間っていいものだなーと思いながらその会話を聞き、ナーベラルは人間の話はどうでもいいと言わんばかりに聞き流していた。メンバーと話していたルクルットが何かに気づき、真面目な顔つきになる。
「ストップだンフィーレア。前の方から何か近づいてきてる」
「またゴブリンか?」
「いや、ゴブリンじゃない。ゴブリンはあんなに早く動ける訳がないし、羽は生えてるわ、狼はいるわ、炎が飛んできているわで何なのか分からねぇ!」
ルクルットは先手必勝と言わんばかりに矢を放った。まずは羽が生えている人間を狙って矢を放ったのだが、矢は簡単に弾かれた。
「んにゃろう……なら狼はどうだ!」
次は狼を狙って矢を放つが、狼の動きが素早くうまく狙いが定まらない。
「どうなってんだあの狼は!」
空を飛ぶ火の球には矢が効かないのは分かっているので矢は撃たなかった。ルクルットの攻撃は一切通じなかった。
「くっ!こうなったら後ろに下がりましょう!後ろにはモモンさんがいます!彼と合流できれば状況も変わります!」
ぺテルの指示に従い後退をしようとするが、馬が言うことを聞かない。恐怖によって錯乱しているのだ。これが騎士の馬であれば、まだ冷静だっただろう。しかし、ンフィーレアの馬は普通の馬だ。その為、本能のままに生きている。だからこそ、錯乱してしまったのだろう。
「うわっ!?」
馬が暴れる為、荷車から振り落とされるンフィーレア。そんなンフィーレアの元に狼が颯爽と走ってきた。ンフィーレアはもうダメだと思ったが、
「《
『きゃん!』
ナーベの放った魔法が狼の後ろ脚を射抜いた。
『グルルルゥゥゥゥ!!』
「狼如きが……消し炭にしてやろうかしら」
「た、助かりましたナーベさん!」
「いいからあなたは逃げてください。依頼人に死なれては困るんです」
「は、はい!」
「さて……かかって来なさい」
『ガアッ!!』
狼がナーベに噛みつこうとする。ナーベは魔法を使わず、敢えて腰に携えている剣で狼を斬り伏せた。
「ふん。狼程度、魔法を使わなくとも倒せる。……次はあなたの番です」
ナーベはフードを頭から深く被り、羽の生やしたモンスターへと向ける。
『ふーん?アンタやるねー』
「知性があるモンスターのようだけど、今の光景を見て逃げようとは思わないのかしら?」
『いやいや、今の光景を見て逃げるなんて考えでないでしょ?だってその狼……使役されている中の一匹だし?』
「……ほぅ。それは面白い話ですね。ではその使役している人物を消し炭にするとしましょう」
『でっきるっかなー。ほら、また来たよ』
モンスターが顎で後方を示すと、狼が群れを成してこちらへ向かってきているのが確認できた。
「例え狼だとしてもあの数を相手にするのは面倒ね」
『そうだよねー、本来の実力を隠しながら戦うのって面倒だよね。ざっと見た感じ、アナタってこの世界の
「ッ!?……貴様、どこまで知っている」
『さーて、どこまででしょうか?』
「……殺す」
『やってみろよ。本気でな』
ナーベは冒険者ナーベではなく、プレアデスのナーベラル・ガンマとして目の前のモンスターを消滅させようとしていた。だがそこへグレートソードが飛んできた。
「待たせたな!」
ナーベが後ろを振り返ると、森の賢王に跨ったモモンがいた。
「モモンさ―――――ん!」
『おー、モモンだ。こりゃ不味いね。アタシは退くとしますか』
そう言って空へと逃げていくモンスター。ナーベは逃がすまいと魔法を唱えようとするが、ナーベの周りに沢山の火の球がまるで逃げるモンスターを守るかのようにナーベの邪魔をする。
「このっ!精霊風情が!」
「油断するなナーベ!」
モモンが剣を一振りすると、火の玉は風で吹き飛ばされた。しかし、風で吹き飛ばされた火の玉は密集し始めたかと思うと、人の姿になった。
「イグニス・ファトゥス……!面倒なことになってしまったな…」
「申し訳ありませんモモンさ―――ん。私が油断してしまったばっかりに」
「そんな話は後でいい!とにかく今はイグニス・ファトゥスの対処をするぞ!」
「はい!」
ナーベは魔法を唱えて攻撃するが、イグニスは炎の球を投げつけてくる。それは魔法で言う
「くっ!このままではこちらが先に倒れることになりそうだな!」
「本来の力さえ使えれば……あのような精霊位すぐに倒せるのですが」
ナーベが後ろをチラッと見る。後ろには漆黒の剣とンフィーレアが心配している。どうせならもっと後ろの方まで逃げてもらいたいのだが、そういう訳にもいかないのだろう。
(クロムさんはまだ来ないのか!!)
と思ったその時、イグニスが何かに吸い込まれるように茂みの中へと消えて行った。
「逃げた……のですか?」
「……どうやらそのようだな」
ぺテルが訪ねてきたからそう答えておいたが、多分クロムさんが追いついてイグニスをランタンの中に強制的に収納したのだろう。ウィル・オ・ウィスプの入っているランタンには強制収納機能がついているとクロムから聞いたことがあった。
「流石はモモンさん!助かりました!」
「いえ、もっと早く来ていれば対処はまだ楽だったはずです」
「そんなことありませんよ。我々はモモンさん達のおかげで助かったんですから」
「そ、そうですか?」
「ええ!モモンさんならアダマンタイト級なんてすぐになれますよ!」
「そうであるな!」
「ああ、モモンの旦那がアダマンタイト級冒険者になれないんじゃ、誰も慣れっこないだろうしな」
全員がモモンとナーベをほめたたえる。ぺテル達は今日起こった出来事を町に戻ってから知り合いなどに話すらしい。
(……はぁ。な、何とか大惨事にならなくてよかったな。……ん?そういえば……彼らを窮地から救ったことで僕達の名声は上がっていないか?……まさか、最初から僕達の名声を上げることが目的だったのか!?)
最後の最後でクロムの目的に気づいたアインズだった。
ふぅ……さっ、まだまだ書くぞー!