エ・ランテルで冒険者をしているアインズは困っていた。冒険者組合で何か依頼を受けようと思ったのだが……文字が読めない。ユグドラシルや元の世界の言語でないので何が書いてあるのかすら分からない。
「……ナーベよ。私にはどの依頼をこなせると思う?」
と、問いかけても帰ってくる答えは、
「モモンさ―――――んならどんな依頼でも確実にこなせます」
という返答だけだった。ユグドラシルのアイテムの中であらゆる文字を読めるようになるアイテムはあるのだが、そのアイテムはセバスに貸し出している。しかもそのアイテムは一つしかなく、アインズはどうすることもできなかった。そしてやけくそで依頼書を取って、受付嬢に出そうとしたのだが、誰かに肩を叩かれた。
誰だ?と思って振り返ってみると、背後には一人の男性、それに見たことのある女性と見たことのない女性が立っていた。
「久しぶりだなモモン」
「………く、クロームさん?」
「YES!どうどう?驚いた?」
「……すいま、すまない。ちょっと別の場所で話をしよう。ここでは話がしにくいのでな」
「ああ、いいともさ」
こうしてモモン達は冒険者組合を後にした。
そして、現在いる場所はモモンガエ・ランテルでの宿泊につかっている宿だ。狭い部屋に5人もいるので更に狭く感じる。
「……ナーベラル、周りに人はいるか?」
「あー、大丈夫大丈夫。周りに人はいないからさ。で?驚いた?」
「……十分驚いたよ。確か帝国にいる筈だったのでは?何故エ・ランテルにいるんだ?そちらには魔法が使える僕はいない筈だよな?それにシュルツは魔法職が無い筈……あと、何で人の姿なんだ?」
「うんうん、驚いているようで何よりだ。まあ、アインズを驚かそうと思ってな。《ソロモン王の指輪》を使って転移してきたのさ」
「…クロムさん……
「そんなの簡単だ。全ての天使、悪魔を召喚して数で叩き潰すのみ。それにこっちにはシュルツというスピードファイターがいるし、新しい仲間、クレマンティーヌがいるからな」
「クレマンティーヌ?……ああ、新しく僕にしたと言っていたな。その女性がクレマンティーヌなのか?」
「ああ、ほれ挨拶しろ」
クロムにそう言われ、アインズの前にやって来たクレマンティーヌ。
「どうも初めまして~。アタシ、クロム様の僕権、妻のクレマンティーヌです。種族はサキュバスです♪」
「コラコラ、さりげなく嘘を混ぜるな。お前は妻じゃない」
「んもう、照れなくてもいいのに」
「照れてない」
クロムとのやり取りを見て、アインズはどう反応すればいいのか分からなかった。戸惑っているアインズに対し、冷静にアインズの質問に答えるクロム。
「あとこの姿な、この前カルネ村を襲ったニグンの部隊の奴の身体を頂いたのさ」
「頂いただと?」
「ああ、中身だけ入れ替えたのさ」
「……つまり、肉体は生きているのか?」
「そうだよ。言ってなかったっけ?魂が消滅しない限り、肉体にも死は訪れないって」
「聞いてないぞ。……しかし、生きた人間の肉体を使っているのか……正直、気持ち悪いとは思わないのか?」
「最初の頃は気持ち悪いと思ったけどな、慣れればそこまで不快じゃなくなるぞ。それにな、この姿だと感覚器官があるんだよな。だから、五感はあるし、食欲もある。睡眠欲もあるから、まず疑われることが無いのさ」
「なるほど……疑われないというのはいいことだな。有名になってから食事に誘われたとき、毎回断らないといけないのかとも考えていたのだがな……」
「おっと、もう有名になるのが前提か……流石はナザリック地下大墳墓の主かつ、アインズ・ウール・ゴウンの長だ」
「……あなただって一緒に支えて来ただろ?」
「そうだっけ?まあ、いいや。……ところでな、有益な情報があるんだが……聞くか?」
「聞かせてもらおう」
クロムがウィル経由で得た情報を全てアインズに伝えると、アインズは考え事を始めた。
(ズーラーノーン……話を聞いた限りではナザリックには影響はなさそうだ。だが、この組織を壊滅させることが出来れば、知名度は一気に上がる筈だ。一気に壊滅させるのはたやすい。が、壊滅させたことを誰かに知っていて貰わないといけない。なら、今は相手の動きを待つとしよう。八本指についてはセバス達が確かリ・エスティーゼ王国近くまで行っている筈だから調査させるとしよう。帝国の方は……うん、クロムさんに任せておけば何とかなるか。あの人はいつも気分で動いている感じだけど、やる時はやる人だからな)
「クロムさん、ズーラーノーンについては向こうが動き出すのを待つとする」
「へぇー?まあ、そうだろうな。相手がどう動くかによってこっちもどう動くか決まる訳だし。……それに、壊滅したとしても誰も見てないと意味がないし、向こうの方から動きがあれば、冒険者として活躍すれば知名度は一気に上がる」
「八本指の方はセバスが王国近くにいるという報告を受けているからセバスに調査を頼もうと思っている」
「いいんじゃね?どうせだから王国内部のことも調べてきてほしいけどな」
「そして帝国……これはクロムさんに任せる」
「……えー、俺かよ。何か俺帝国の皇帝に目つけられてるみたいなんだけど?」
「ボロを出さなければいいだけの話だろ?」
アインズがあくどい笑みで言う。
「言ってくれるね。まあいいよ。帝国の方は任せろ。さーて、一週間程はエ・ランテルで過ごすとするか」
「ちょっ!?帝国に戻るんじゃないのか!?」
「んなわけないだろ?それにズーラーノーンにはクレマンティーヌの知り合いがいるらしいしな。ソイツにも会ってみたいんだわ」
「だ、だからって……」
「ん?ちょっと待て。こっちに誰か近づいてきてるぞ」
アインズは慌てててヘルムの部分を創る。そしてアインズのいる部屋の扉がノックされた。
『お客さん』
ノックしたのはここの宿主だった。
「何だ?」
『お客さんに依頼をしたいっていう坊ちゃんが訪ねてきてるぞ。ったく……何でこんな新参者に依頼するのかね……』
「依頼だと?」
『ああ、下にいるから降りてきてくれ』
そう言うと、宿主は下へと降りて行った。
「名指しの依頼か……凄いな俺でさえ名指しの依頼なんてされなかったぞ」
「そうなのか?」
「ああ、お前何かしたわけ?」
「……心当たりはある」
「ふーん?まあ、とりあえず行って来いよ。俺は観光してくるとするさ」
「そうか。あまり目立つ動きは避けてくれよ」
「大丈夫だって」
そう言うクロムだが、頼りにもなるが、問題児でもあったクロムがどう動くのかが不安なアインズだった。
下に降りてみると、作業着のような服を着た男の子が待っていた。
「あ、あなたがモモンさんですか?」
「そうだが……そういうあなたは?」
「あ、僕はンフィーレア・バレアレと申します。それでモモンさんに依頼したいのは僕の護衛です。あ、あと、モモンさんとは別の冒険者チームも雇っているんですが……」
「私は構いません」
「私もです」
「よかった……今、外で待っているんで呼びますね」
ンフィーレアが外に待たせている冒険者チームを呼んで戻って来た。そのチームは四人のチームで、
「初めまして、私がチーム『漆黒の剣』のリーダーのぺテル・モークです。そしてこっちが」
「お美しいですね!よかったら僕と恋のランデブーでもいかがですか?」
「……え、ええと、彼がうちのチームの目や耳である
「よろしくである」
「そして、我がチーム唯一の
「ぺテル……その恥ずかしい二つ名はやめません?」
「え?いいじゃないですか二つ名持ち」
「
「ほう……?」
「それではよろしくお願いしますね」
「こちらこそだ。紹介が遅れたが、私はモモン。そして隣が……」
「ナーベです」
「二人と少ないが、私達はどちらも強い。が、まだ駆け出しなのでな。よろしく頼む」
こうしてアインズは初の依頼を受けるのだった。
さてさて、意外な形で漆黒の剣の連中を出したのはいいが……どうしよう、転生させるかさせないか悩む!って、思ったけど、クレマンティーヌいないから別にしななくてもおkじゃね?って思った